443 『対面』

1.対面(1)

「…最後のペインが潰された。」

人間弾頭式の螺旋丸が直撃し、天道ペインもついに粉砕したナルト。

「ペインはこいつでチャクラを受け取って動いてた…。
 抜き取っちまえばこれでもう動けねえはずだ。」

天道ペインに刺さっている黒いチャクラ受信機を、
一つずつ引き抜いて何か考え耽るような面持ちです。
自来也の言う平和を為すこと。その目的は同じ。しかし、

「お前もオレも何も変わらない。互いの正義のために動く。」
「大切なものを失う痛みは誰も同じ。
 お前もオレもその痛みを知る者同士だ。」
「…少しは痛みを理解できたか?
 同じ痛みを知らなければ他人を本当には理解できない。
 そして理解をしたところで分かり合えるわけでもない。
 …それが道理だ。」
「それが歴史だと知る。人は決して理解し合う事のできない生き物だと
 悟らざるを得ない。」

ペインの言った言葉が断片的に脳裏を過ぎります。

「忍の世界は憎しみに支配されている。」

忍の世界は憎しみに支配されている…
それならば人々は何を思い、何を為すべきか。
それぞれの正義を主張してみても、結局は憎しみの連鎖をつくりだすだけ。
でも長門が思い描くような平和は間違っている…
連綿と受け継いだきた想い――、
最後にミナトに背中を押されて、天道ペインを倒した――。
でも平和とはいったい何なのか、平和を達成するにはどうすればいいのか。
忍の世界を支配するという憎しみの連鎖をどのように断てばいいのか。
ナルトの中に明確な答えはあるでしょうか。

「いやダメだ! 一人で行く…!」

しかしナルトは決意します。増援に頼らず、ペインの本体、長門のもとへいくことを。
それは伝えなければいけない、とても大切な何かを伝えにいくため。
一人でいくという覚悟は、その伝えることにどれだけの想いがこもっているか、
それを表そうとしているのかもしれません。

2.対面(2)

ヒナタの治療も一段落した頃、カツユから6体全てのペインを
ナルトが倒したという一報が入ります。
その一報に歓喜の声をあげる一同。
ヒナタもナルトが無事だと聞き安堵の涙を浮かべます。
サクラはナルトの怪我の状態を心配しますが、大丈夫だときいて一安心の様。
しかしペイン本体のところへ一人で向かったという情報を聞き、
居ても立ってもいられるわけもありません。

「ダメだ! 一人でやりすぎだ。
 もうナルトはかなり弱ってる。
 ナルトの居場所まで案内して下さい!」

増援を望まないというナルトの意思をカツユは伝えますが、
結局はナルトへ増援を送る形となりそうです。

森を探索中のコウ、いのいち、シカク。
ナルトを見つけ、追いつきます。
ナルトがいるということは6人目のペインを倒したということ。

「勝ったとか負けたとか…そんなのカンケーねーよ…。」

でもそれは勝ち負けでは割り切れないもの。
神妙な面持ちのナルトにシカクは何があったのか訊きます。

「…とにかくオレってばこれからペインの本体のところへ行く。
 皆は来ないでくれ。…オレ一人で行きたい。」

口では上手く説明できないけど、確かな何かはあるようです。

「確かめたい事があるんだ…」

一人で行かなければいけない理由はナルトはこのように述べます。

「ペイン本体と話がしたい。」

そういうナルトにいのいちは物凄い剣幕で諭したてようとします。

「何を勝手な事を言ってるんだ!!
 お前がペインを倒したことには感謝してるが、
 今さら話し合いでどうこう済む問題ではないぞ!!」

しかし根底にあるものを、憎しみを、
そのままのさばらしにしたままでいいはずがない。

だったら! ペイン本体もその部下も敵の里も全て潰しちまえば、
 それで丸く治まんのか!!?

憎しみが連鎖するのは目に見えているのです。

「オレだって! オレだってそうだってばよ!!
 師を里を皆をむちゃくちゃにした奴なんか許せねーよ!!」

だからといって憎しみの煽動に素直に乗っかってはいけない。
復讐が復讐を生む、そんな血腥い憎しみの連鎖に――
許すとか許さないではない“何か”を為さなければ、
その決意がナルトを突き動かします。

「ペインを止めたのはこの子だ。
 …ナルトなりの考えがあっての事だろう。」

いのいちを止めるシカク。

「…あいつは皆にはない何かを持ってる…。
 あいつはこの里にとって大切な忍になる…。ナルトといると…
 俺はあいつと一緒に歩いて行きてえ…そう思わされたんだ。」

いつの日か息子が言った言葉。

「ナルトに託してみよう。」

そしてナルトの強い想いを感じたシカクは、
ナルトに託してみようという気持ちになったのかもしれません。


群を抜いて高く聳え立つ紙で覆われた大樹。
その内部へ、ナルトは足を踏み入れます。
応戦しようとする小南を止める長門

「平和がノコノコやってきたか。」

おぞましげな、しかし生気はない長門の輪廻眼がナルトを見ます。