416 『ド根性忍伝』

今回は長くなるので二部構成にさせていただきます。
続きは【憎しみの連鎖を断て、諦めない想い(ii)】へ。

1.ド根性忍伝

舞台はド根性忍伝の中の世界。
二人の忍が鎬<しのぎ>を削るようにして戦っています。
一人は木ノ葉隠れの、もう一人は不明ということなのでしょう、
「?」という額宛てをしています。
これらの場面は文字によって綴られた世界をナルトが想像した世界の話。
「?」なる額宛ては、このことを掻き立たせているようにも思われます。
さて、この場面に登場する二人の人物を
『木の葉隠れの忍』と『?隠れの忍』と便宜上割り振っておきましょう。

「そろそろ観念したらどうだ?
 鬼ごっこもそろそろ飽きてきたぜ。」

息を切らしながら『?隠れの忍』が、
姿は見えないけれど確実にいる敵に向けて言葉を発します。
木ノ葉隠れの忍』も息を切らし、余裕があるとはいえない状態ですが、
その目には敗北などありえない、そんな信念のこもった強い眼差しが宿っています。
手には二つの煙玉。それを敵のいる方に向かって投げつけます。
煙幕の中、『木ノ葉隠れの忍』は『?隠れの忍』との間合いを詰めることに成功します。
しかし不意をつく奇襲も失敗してしまったのか、逆に刃を向けられています。

「諦めろ。」
「一言いいか…」
「聞く気はねェ…もうくたばれ!!」

長期戦だったのでしょうか、相手のしぶとさに疲労困憊気味だった『?隠れの忍』は、
余裕などなく、膝をつく死に体の『木ノ葉隠れの忍』にとどめを刺しにいきます。
しかし実はこの死に体と思われたものは影分身。

「オレが諦めるのを――諦めろ」

形成は一気に逆転。勝負が決まります。

「くっ…オ…オレを倒してもまた次の刺客がこの里を襲う…
 ケケケ…オレ達が呪われた忍の世界に…生きてるかぎり平穏は…ない。」

忍の世界は呪われている――それは戦いや争いが絶えないという意味でしょう。
戦争がある以上平和はない。しかし――、

「オレがその呪いを解いてやる。
 平和ってのがもしあるならオレがそれを掴み取ってやる!
 オレは諦めない!」

甘い考えだと言うこともできるでしょう。
彼一人が頑張って諦めないからといって、平和が掴めるほど易くはありません。
でも本当に変えることができない運命なのか。
諦めない――その気持ちは奇跡を呼び起こします。
諦めない想いが一つ、また一つと増えていき、
やがて平和という奇跡がかなえられることを彼は確信しているのです。
その不可能を可能にせんとする強き想いは言葉にせずとも相手に伝わっていきます。

「き…きさまは…?」

『?隠れの忍』はその強き想いを感じ取ったのか、相手に名を尋ねます。

「オレの名は――」

2.ナルトと自来也

物語を読み終え、涙を流すナルト。作者欄にある若かりし頃の自来也の写真。
とある日の自来也との会話が自然と思い出されます。

「サスケはオレとの繋がりを断ち切って強くなるって言った…
 お前なんかにオレの気持ちは分からないって…
 エロ仙人と大蛇丸も昔友達だったんだろ?
 どうして大蛇丸は里を抜けて木ノ葉崩しなんかしたんだってばよ?」

つながりを断ち切って強くなるというサスケの言葉。
納得がいかないのか、似た境遇にあった自来也に訊ねるナルト。

大蛇丸がおかしくなってきたのは両親を殺されてからだ。
 それからは禁術に取りつかれていった。」

両親に再会したかったのか、あるいは木ノ葉の里への復讐か。
いろいろな憶測を立てて大蛇丸の心中を理解しようとしたけれど、
何も分かっていないと一喝された自来也

「だがのォ…こんなワシでもこの忍の世に
 憎しみがはびこっているのは分かる。」

憎しみ…それが忍の世界を呪い、人と人との理解を妨げている根本。

「だがいつかは……
 人が本当の意味で理解し合える時代が来るとワシは信じとる!!」

人と人が本当の意味で理解し合える時代、それこそ平和であること――
しかし憎しみをどうにかする答えが未だ見つかっていないといいます。

「答が見つからんかった時はその答をお前に託すとしようかのォ!」

小難しくて分からないけど、自来也の頼みならと快く引き受けるナルトを見て、
自来也は声高に笑います。何で笑うのかと訊ねるナルト。

「お前の笑顔には救われるようじゃ。
 お前を弟子にしてよかったわい!」

その言葉に、照れ笑いしながら頭を掻くナルト。
本を書いて世界を変えると言い張る自来也
そのうちの一つの本の主人公の名前は愛弟子と同じ名前。
諦めない『ナルト』という両親の想いを自来也の想いとともに受け継いだナルトは、
自来也から大切なものをもらったと自覚します。