403 『涙』

所用が来週にずれこみましたので、
いつも通り記事をアップロードできました。


さて6月9日といえば、イタチの誕生日ですが――。

1.涙(1)

夜、ベッドに横になりながら、
イタチに接触したことを思い返すナルト。

「少なくともお前なんかより…
 アイツのことを兄弟だと思ってるからだ。」

弟にこだわる理由を訊かれたナルトは、強い口調でこう言い放ちます。
イタチの笑み。そして次の瞬間、ナルトはイタチの幻術の中に引き込まれます。
イタチは次のように言います。

「お前はサスケを連れ戻したがっていたな。
 だが、上手く行かなかったらどうする?」

それに対して、ナルトはどうやってでも連れ戻すと答えますが、
イタチはナルトには思いもよらない返答をします。

「無理やりにでもか…。運良くサスケが大人しく里に帰れば
 確かにそれでいいが、それと全く逆の場合はどうする?」
「どういうことだ?」
「さっきお前はサスケを兄弟のようだと言ったな。
 ならばもし、そのサスケが木ノ葉を襲ってきたとしたらどうすると聞いているんだ?」

サスケが木ノ葉を襲う――ありえないというような表情で、イタチに楯突くナルト。
このやりとりから、
イタチはサスケが木ノ葉を襲撃するかもしれないことを読んでいたことになります。
それはつまり、天照をサスケに仕込んだ理由――
そう、サスケがマダラと接触することに対して、
あまり良く思っていなかったことがここで明らかになります。

「サスケはまだ純粋だ。簡単に何色にも染まる。」

斑<まだら>とは色に関係する言葉で、
違う複数の色が入り混じっていることを差します。
簡単に何色にでも染まるとは――
つまりはサスケが斑色になりうることを危惧している風にもとれます。

「そうなった場合、お前はヤツを止められるのか?
 サスケを殺してでも…。サスケと木ノ葉を天秤にかけられるのか?」

かつて自分が、かけたくはなかった命の秤に木ノ葉の命運と一族の命運をかけたように、
木ノ葉とサスケを天秤にかけなければいけない――
ナルトに重い選択を迫ります。

「木ノ葉は守る! そんでもってサスケも殺さず止める!」

両方とも守る、救う。ナルトのそんな甘い戯言に、イタチは厳しく臨みます。

「…子供だな。
 お前の話は絵空事ばかりだ…。
 忍は時に厳しい選択を迫られることだってある。」

両方を取る事は不可能。必ず片方を選択しなければならない。
そのような時、どちらを選ぶのか?
ナルトは自来也にサスケのことを諦めろと言われたときのことを思い出します。

「術や力だけじゃない…。忍なら正しい判断や選択をする目を養え。
 忍として生きるならもっと賢くなれ。
 バカのままじゃ…この世界生き辛いのが現実だ…」

運命を受け入れて、正しい選択をする。
そうでなければ苦しむのは自分自身。

「賢いってのがそういうことなら…オレは一生バカでいい…。
 一人でももっとスゲー術あみ出して、サスケはぜってー助ける!」

しかしナルトは賢く堅実に生きなくても、バカのままでもいいと言います。

「まっすぐ自分の言葉は曲げねぇ。それがオレの忍道だ。」

確たる根拠は自分の想いの中にしかない――
でも、サスケが歩むべき道は絶対間違っている
だからこそ友として止めなければいけない。
――それが自分の言葉を曲げないという、ナルトの忍道
【ナルトがサスケを追う理由】*1なのでしょう。


不意にイタチのカラスの一羽が、ナルトの口の中へ入り込んでいきます。

「お前にオレの力を分けてやった。
 その力…使う日が来なければいいがな。」

そう言って二、三言の後、イタチは去っていきます。
ナルトとサスケの対決を暗示するようなこの台詞。
それぞれの思いをぶつけあう日は、そう遠くないのかもしれません。

「あん時イタチは何が言いたかったんだ? 何でオレに…」

イタチとのやりとりを振り返りながら、
トビとゼツがイタチとサスケが戦って、イタチが死亡したことを口にしたことも、
不意に脳裏をよぎります。

「お前いま…どうしてんだサスケ…。
 ………無事だよな…?」

譫言<うわごと>の様にそう呟きます。

2.涙(2)

暁のアジトの一つでしょうか?
準備は既に整っている――そう不穏めいたことを口にするマダラ。
一方でサスケは夜月を見ながら、あの事件の夜のことを思い出し、
少々の間感傷に浸る様子を見せます。

「今ならイタチのことを思い出せる…。
 自分の心の奥にしまい込んでいた、かすかな記憶が蘇って来るんだ。」

あの晩、自分の目の前を去っていくイタチを必死に追いかけていったサスケ。
地面に刺さったクナイを拾い上げて、イタチに向かって投げつけます。
背中の刀を抜いてクナイを弾くイタチ。
刀を抜く際に、額宛の留めを斬ってしまったのでしょうか、
はらりと額宛を地面に落とすイタチ。そしてそれを拾い上げます。
余力なく、地面に膝を落とすサスケに、
木ノ葉のマークを見せ付けるよう、横向きに額宛をするイタチ。
そしてその頬には、涙が伝っていました。

「あの時…泣いてた。見間違い…だと思った。
 オレは気付けなかった。」

兄の本当の想いを改めて実感するサスケ。

「どうやらアンタの言ったことは本当だったようだ。」

そう言って、再び月を見上げるサスケ。

「どうするイタチの眼は…移植するのか……?」

マダラはサスケにイタチの眼を移植させることで、
自分と同じように万華鏡写輪眼を更に進化させることを望んでいたのでしょうか?
「いいや…」と否定的に答えるサスケに対して無言になります。

「イタチの見たかったものと、
 これからオレが見ていくものはまるで違うものになる。
 イタチが望んだ通りには出来ない……。
 オレはオレのやり方でうちはを再興する。」

兄イタチの想いは確かに受けとった。
しかし――、サスケの望みはただ一つ。うちは再興。
自分の忍道を行くのか、マダラの色に染まりかけているのか。
サスケには本当に大切なモノ、守りたいものがあるのか。
これから明らかになってくるでしょう。