1.サソリの怨恨

デイダラに関して、不可解なのは、

大蛇丸はオイラがぶっ殺すと決めてたのによ…うん。」

大蛇丸をターゲットにしていたことです。なぜでしょう?

「同じ物造りとして旦那…アンタは尊敬するが、
 芸術ってのは美しく儚く散っていく一瞬の美をいうんだよ…うん。」

デイダラはサソリを一目置いていました。
それはサソリが傀儡人形という永遠の美を求めるのに対し、
デイダラは一瞬の儚く散る美を求める点は違いますが、
ともに物造りとしての“こだわり”のようなものを持っていたからです。

「サソリは大蛇丸様を恨み、自ら直接手を下したいと常々話していた。」

一方でどういった経緯かは不明ですがサソリは大蛇丸を恨んでいて、
常々直接手を下そうとしていたらしいことがわかります。

「こんなガキをオレの連れにしなきゃなんねーのか…
 威勢はいいがこいつぁ早死にするタイプだぜ。」

デイダラ獲得は一つにサソリのパートナーとするためといえます。
大蛇丸とサソリは以前組んでいましたが、大蛇丸の脱走に伴って、
サソリのパートナーは空席となっています。
そこにデイダラがやってきたことになるのです。
つまり、デイダラは直接大蛇丸を知らないのです。
サソリがデイダラとパートナーを組み、
大蛇丸に関する恨み辛みを聞かせているうち、
デイダラは前のメンバーだった大蛇丸への好奇心、興味と
“こだわり”への共感から、感情移入しやすくなっていて、
いわば信じやすい状態となっていて、サソリの話を鵜呑みにしてしまった――
というのが一つあるでしょう。

2.大蛇丸によって失われたアート鑑賞

「死んでオイラは芸術になる! 
 今までに無い爆発はこの地に今までに無い傷跡を残し…
 そしてオイラの芸術派今までに無い称賛を受けるだろう!」

そういって暁の一員として自爆したデイダラですが、
彼は暁の一員としていることに、
心から満足していたかどうかは疑問です。
心の奥底では、何にも縛られず、アートを追究したいという想いがあったでしょうが、
暁という厳しい組織の中ではそれもままならぬときが往々にしてあったはずです。
暁から抜け出したい、しかし暁脱退はほぼ死。
アートを追究したい一方で、どこか中途半端な自分が嫌だった部分もあった――
それをうちは一族の写輪眼にぶつけていたところがあります。
芸術への“こだわり”もっと強く言えば“偏執性”は、
この写輪眼がきっかけでさらに強固となり、
C4といった最高芸術を生み出す起因にもなっていきます。
こういった面ではある種の満足はあったはずです。
しかし、自由に、暁に入る前のようにアートを鑑賞し、追究する日々を
思い出すことがなかったはずがありません。
もし、あのとき暁に入っていなければ――
大蛇丸という奴が脱走していなければ――

デイダラ自身にも大蛇丸への恨みがあったかもしれないのです。
結局は“芸術への偏執”から、写輪眼に取り憑かれ、
大蛇丸、そして自分の本音は押し殺す形で
二の次となっていったのではないかと思います。