518 『奇襲部隊の攻防』

.奇襲部隊の攻防

「こりゃ戦争だ!!
 きれい事言ってんじゃねーぞ。うん!!!」

オモイの宣言に対して、皮肉るように言うデイダラ
錐揉み状に動きながらデイダラへと間合いを詰めるオモイ。
自分が不死身であることを利用して、
あえてかわそうと考えてはいないデイダラ
オモイの狙いに気づくのが一瞬遅れます。
雲流裏斬りは目の前の相手を斬りつけるふりをして、
背後の敵を狙い斬る技。

「(己の前を斬りつけるフリをして後ろを斬る、
  だまし斬りの技か。くだらねェ!)」

オモイの狙いは操られた木ノ葉の忍たちにくっつくチャクラの糸でした。
チャクラ糸が斬れたその隙を縫って、
カンクロウが己のチャクラ糸をサソリのチャクラ糸にくっつける神業で、
サソリを表舞台に引きずり込みます。
イッタンが放つ土遁・地動核によって地面が急激に隆起し、
デイダラを撃墜。次いで、サソリにダメージを与えます。

「オレの糸に己の糸を結び付けて引っぱり込むとはな…。
 少しは糸の使い方が上達したな…カンクロウ。」

というサソリに、

「赤秘技演奏者のアンタに褒められんのは正直うれしいが、
 今じゃ黒秘技のオレの方が上だぜ。」

といってカンクロウはサソリ本体の傀儡を召喚します。

「オレの傀儡か…今となればその体もくだらねェ…。
 今のオレはまさに朽ちる事のない本物の人形そのもの!
 かつて望んだ体だ!」

塵芥が覆い形作る不死身の身体。
傀儡人形であった頃よりも、なおさら素晴らしい、
そう言わんばかりのサソリにカンクロウは冷静な眼差しを向けます。
サソリのチャクラ糸はサイの兄に。
ホヘトの白眼が彼の腹の中に起爆粘土があることを見抜きます。
サイも息を呑みます。

デイダラの起爆粘土は雷遁に弱いと聞いたことがある…。
 少しならオレが…。」

――とオモイ。
それぞれが最適の陣形となるようにばらけ、
各々の攻防が始まります。
デイダラがサイの兄の中の起爆粘土を爆破させようと狙ったところを、
カンクロウが黒秘技・山椒魚の中に閉じ込め爆発を半減させます。
わずかに爆発に呑まれ、地に倒れたサイの前にはあの絵本。

「うん…? 何か文句でもあんのか!?
 サスケの後釜にもなれねェお前みてーなカスが、
 弱ぇーくせに出しゃばんじゃねェ!
 魂がこの世に縛られてる限り、何度でも復活できる…。
 また爆弾にしてやんよ。クハハハ!!」

なぜか第七班の事情に詳しいことはさておき(笑)、
サイの気持ちを愚弄する悪役全開ぶりのデイダラ

「オレは…お前を傷付けたくはない。
 …死んで…もう“根”から解き放たれたのに…」

そうサイの兄は言います。
死して“根”から解放されたと言う事は、
彼は“根”の感情を殺すシステムに迎合できなかったことが窺えます。
今もなお弟サイを想う“兄”。

「いっぱしに絵ねんか描いて芸術気どってんな!
 芸術は爆発だ! さてもう一発ハデにいくか!」

兄の気持ちまでをも愚弄するデイダラ
ついに感情を奥深くに殺しているはずのサイも堪忍袋の緒がキレます。

「やってみろ。」

すさまじい速さでデイダラ、サソリの背後にまわり、
描き上げた仁王のようなものが彼らを襲撃します。
その隙をカンクロウは逃しません。
黒秘儀・機々三発なる術によって彼らを傀儡の中に閉じ込めます。

「くそ! こんな事ならさっさと自爆すんだったぜ!
 究極芸術をそう何度も世に出すのはダセーと思ってたが仕方ねェ!!
 うん!」

と慌ててデイダラが究極爆発の術に取り掛かろうとしてももう手遅れです。
雷遁の刃が彼らを貫きます。
『黒ひげ危機一髪』というゲームがあるようですが、
それをもじったかのような攻撃ですね。

「よくやってオモイ!
 ここからはオレがずっちこいつら二人を傀儡の術で縛り続ける!
 サイの兄を何とかしてくれ!!」

――とオモイに促すカンクロウ

「分かってた…。
 “根”に居る時兄さんと戦わなきゃならなくなるって事…。
 あの時…つけられなかった決着をつけ…」

一方サイは戦いたくない戦いの覚悟を決めて、サイの兄に臨みます。

「イヤ……そうはならない。」

しかしサイの兄は穏やかな心持ちで笑顔さえ浮かべます。

「やっと見たかった絵が見られた…。
 お前の絵が魂の縛りを解いてくれたみたいだ…。
 ありがとう…。」

それはサイが将来夢見た仲の良い“兄弟”の忍の姿。
心残りが亡くなったように、サイの兄は塵へと戻ります。

「サソリ…。アンタの強さはそこに魂があったからだ。
 アンタはかつて人形になり魂を消そうとしたから消しきれなかった。
 アンタの造った傀儡にこそ朽ちる事のない魂が、
 宿ってんのがオレには分かる。
 だが今のアンタは生身だが本物の傀儡に成り下がった。ただの人形だ。
 アンタは傀儡を操る一流の忍だった。
 誰かに操られるようなゲスじゃなかったハズだぜ。」

塵芥が覆う不死身の身体。
傀儡人形だった頃に比べて、それはサソリの求める、
永久に朽ち果てることのない身体ではあります。
でも、それは表面的なものに過ぎません。
そこには、サソリが求めたはずの“芸術”の欠片もありません。
そして穢土転生という術によって、それは操られた傀儡でしかないこと。
サソリの敗因をそう伝えたカンクロウは、
ついにとどめにかかりますが――
霧の中吉に感付かれず彼らを無に帰すことができるでしょうか。