1.別々の封印

ナルトは二重四象封印による八卦の封印式によって、
九尾のチャクラを体内に封印しているといいます。

渦巻を襞<ひだ>のように見える凡字らしき文字列が覆うように包んでいます。
円状のものと8つの文字列が存在し、八卦の封印とはその名から、
この文字列こそが本体であると思われます。
三代目が魂を封印した際にも、このような紋様が浮かんでいました。
したがって、屍鬼封尽において、自動的にこの八卦の封印がなされるようです。
つまり九尾をナルトに封印した術も屍鬼封尽であると一見考えられます。

「ミナトは九尾の陰のチャクラしか屍鬼封尽しておらん。
 ミナトが九尾の力を陰と陽に二分し、陽の側をナルトに封印したのは
 九尾のチャクラをナルトに遺すためだ。」

しかし、自来也のこの話によれば、ナルトには九尾の陽のチャクラを封印し、
九尾の陰のチャクラのみ屍鬼封尽したことになるので、
ナルトに九尾の陽のチャクラを封印した術は屍鬼封尽でないことになります。
つまりミナトは九尾を陽と陰にチャクラを二分した後、
陰の方は屍鬼封尽、陽の方はナルトに封印する術を行ったことになります。
屍鬼封尽は死神と契約し、命を賭して自分と相手を死神の腹に封印する術。
前回、【屍鬼封尽1・術成功条件】*1において
三代目が影分身によって三人に分離し屍鬼封尽を行うことができたので、
魂の分割を許せるとしました。
ですからミナトも影分身と組み合わせ、これらの封印を行ったと考えられます。
ミナトは現在存命していませんから、屍鬼封尽でない方の封印術も命がけか、
あるいは時が来ると契約した魂の一部を喰らった死神が、
全ての魂を取り込もうとしたのかもしれません。
ですがいずれにせよ、どちらの封印術も八卦の封印式を含むもの、
と考えられます。

2.鍵と八卦封印

「ワシの腹にはナルトの八卦封印に結合する鍵が書き写されとるんじゃぞ!
 年々、四代目の封印も弱まってきとる!
 いざという時、それを閉めなおすために鍵が残されたんじゃ!」

八卦封印に作用できる鍵があるようです。

この鍵の中心に描かれている術式と八卦の封印式は微妙に違います。
鍵はさらに多くの文字列によってうずまきが囲まれている形となっています。

「それどころか鍵を少し開けたせいでナルトのチャクラを押し退け、
 九尾のチャクラ自体が多量に漏れ出しナルトを支配する始末。」

さて、鍵を少し開けたせいで漏れ出す――ということは、
単純に開閉の二択ではなく、段階性であるといえます。
これは窓を横にスライドしていき、外と接する領域を広げていくことに似ています。
窓のガラス部分を八卦封印、外の空気を九尾のチャクラに例えられるでしょう。
窓が閉まっている場合は外の空気があまり入ってこれないように、
鍵が閉まっていると九尾のチャクラもあまり外には出てこれません。
窓を閉め切っていても、隙間を縫って僅かに外の空気が入り込んでくることがあります。
風が中に吹き込んでくる日は窓を閉めると、
風がヒューヒューと音をたてたり、ガタガタと窓が音をたてたりします。
これは中の空気が外に出る力よりも、外の空気が中に入ろうとする力が強いため、
すなわち圧力差によって起こります。
九尾のチャクラが、それを抑える八卦封印とナルトのチャクラをあわせたものよりも強いために
この圧力差にも似た――言い換えるならばチャクラの濃度差が、
必然的にナルトの内から九尾のチャクラが漏れ出してくることを作り出しています。
今後のナルトの課題はこの九尾のチャクラとの濃度差を埋めることで、
九尾の力に持て余されないようにしていくことにあると考えられます。
ところで、高層ビルの高層階の窓のように、
窓の厚みを大きくしたり、二重窓にしたり、嵌め殺しにすると、
外の空気が強くてもほとんど入ってきません。
しかし建てつけが悪かったりすると、やはりスースーします。
八卦封印という強固な窓に鍵をかけても、ナルトという建物と窓の接合性が悪いため
九尾のチャクラがより漏れやすい状況を作り出しています。
ひとえにミナトの遺した鍵は、九尾のチャクラによって劣化していく、
この窓と建物の間を改修することで劣化を食い止めていくことに似ていると言えるでしょう。
鍵の紋様、八卦封印の中に渦巻が描かれていることは、端的にこの力関係も表しています。
ナルトという器の中に九尾のチャクラが封じ込められている――、
すなわちナルトという家があって、その中に九尾があるように見えますが、
ナルトという家は常に九尾のチャクラという台風にさらされています。
つまり九尾という外部からナルトという家内部を守っているものが八卦封印と言えるでしょう。
外と内の関係が逆転していて、
外にある文字列が内にある“うずまき”に接触できない絵柄は、
とても似つかわしいと言えます。