500 『ナルトの出生』

第500話『ナルトの出生』では、
クシナによってナルトの出生と、
九尾の人柱力にまつわる話題に触れられます。
【九尾事件1・九尾の人柱力】*1で扱った解釈しがたい内容は、
ここではどのように明かされているのか、
二部構成で順を追って説明していきます。


後半は【九尾事件3・10月10日の真実(i)】*2

1.ナルトの出生(1)

「…九尾の人柱力だった…? 母ちゃんが…!?」

クシナが九尾の人柱力であることに驚くナルト。

「そう…。16年前の話をするには…、
 まず私の事について少し知っておいてほしいの。」

そう言ってクシナはナルトに、
自分の出身国のことなどについて語り始めるのです。

私は2番目の人柱力として選ばれた。本当言うと、
 九尾の人柱力になるために木ノ葉へ連れてこられたの…。
 渦の国からね。

(A)

クシナは渦の国から木ノ葉の里へ渡ったときにはすでに、
九尾の人柱力であることが決まっていたようです。
後述しますが2番目というのは、
2番目の“候補”という意味ではなく、“2代目”ということ。
この発言は重要なので(A)としておきます。
これも後述しますが、
はじめクシナは自分が人柱力であることを知らされていなかったようです。
これは【九尾事件1・九尾の人柱力】(*1)の(1.A.2)のクシナの台詞、

「…私には少し特別なチャクラがあってね…。
 それを狙って雲隠れの里が私をさらった事があったの。」

という台詞にあるように、
幼い頃は人柱力ではなかった旨をにおわせる発言と合致します。

「……。何で…、
 何で他の国の母ちゃんが、人柱力なんかに
 ならなきゃいけなかったんだよ!?」

人柱力であることで苦痛を味わってきたナルト。
その重荷をわざわざ他国の人間に押しつけるのは不当。
まして、自分の母親もそういう苦痛を味わったのだろうと思うゆえに、
ナルトの言葉も憤り気味になります。

「…確かに他の国…他の里だけど、
 火の国と渦の国、木ノ葉隠れの里と渦潮隠れの里は、
 深い関係にあったの。

火の国と渦の国が友好関係にあったならば、
当然その里同士、すなわち木ノ葉隠れと渦潮隠れも
良好だったというわけです。というのも以下の各国図を見てみましょう。




【各国の位置関係】*3でも推察しましたが、
位置はこの位置(上の記事では1としました)で間違いないようです。
火の国と渦の国はかなり近い位置関係にあります。
友好的であった理由はそれだけではありません。

木ノ葉の千手一族と渦潮のうずまき一族は、
 遠い血族関係にあたる忍達…。

 生命力に長けた者ばかりで、
 渦潮の里は別名長寿の里と呼ばれ、
 封印術を解く意図する一族達が住んでたの…。
 ちょっと荒っぽいけどね。」

ナルトに千手の気配を感じたりするのは、
こういった背景が存在するためでしょう。
そして九尾の禍々しさに耐えうるチャクラや生命力も、
うずまき一族たる所以でしょうか。

「アナタのお腹の四象封印もベースになってるのは、
 元々私たちの里の術だし…、
 ミナト…お父さんにもいろいろ封印術を教えたのは、
 お母さんなのよ。」

四象封印以外にもミナトの封印術として屍鬼封尽がありますが、
これもクシナに教わった封印術がベースとなっているのでしょう。

「ナルト…アナタの背中にあるマーク…、
 それが渦潮隠れの里のマーク…。
 今でも木ノ葉の中では友好の証としてそのマークが用いられてるでしょ。」

忍たちの肩当やベストの後ろにあった渦巻きマーク、
それは、渦潮隠れの里を表すマークであり、
木ノ葉隠れが採用するほど渦潮と木ノ葉の仲は密だったことが窺えます。

2.ナルトの出生(2)

「…今ではもうなくなってしまった国なの…。
 戦乱の次代、その封印術の能力を恐れられ…、狙われて、
 いつしか滅びてしまった。
 生き残った者も身分を隠して各地へ散らばってしまったらしいわ。」

(B)

さてここで記事の最初の方の(A)のクシナの発言で、
渦の国から連れてこられた、と言っています。
「渦潮隠れの里から来た――」とは言っていませんが、
上の地図にあるように火の国と木ノ葉隠れの里の大きさの関係とは違って、
渦の国は小さいゆえほぼ渦の国=渦潮隠れの里と考えてよいでしょう。
ということは(B)でクシナが表現している国はなくなった時点は、
渦潮隠れの里がなくなってしまった時点とほぼ一致して考えることができます。
さらに(B)でクシナの渦の国の最後に関する発言が
伝聞体であることに着目します。
ミナトやクシナが幼かったときはまだ戦時中だった可能性が高いでしょう。
このときがいったい第何次の忍界大戦であったかは不明ですが、
事実、つい最近の戦争が終結したのはナルトが生まれるほんの1年程度前。*4
クシナが木ノ葉の里に来てしばらく経ってから
人伝に渦の国の最後を聞いたものと思われます。

「渦潮の里の中でも、
 私は特に九尾を押さえこめる強いチャクラを持って生まれたらしくてね。
 私の前任の人柱力だった人も渦潮のくの一だったから。
 …慣習になってたってのもあるし。
 その人の名はうずまきミト。初代火影の妻になった人。
 私も四代目の妻になると決めてた。

先代の九尾の人柱力はうずまきミトという初代火影の妻となった人物。
遠縁関係での結婚ということになります。
クシナとミトとの関係性は不明ですが、
同じうずまき一族であることから、血縁関係にあることと、
クシナが九尾を押さえ込めるチャクラを持つことから
血縁関係も近いと思われます。
一方で、クシナが四代目の妻になると決めてたという発言は、
幼い頃は九尾の人柱力になることを知らなかったということなので、
里に来てしばらくし、自分の運命を知った後ということになるでしょう。
その時期についても、初代火影、千手柱間とうちはマダラの戦いを知ってるか、
とナルトにたずねた後、話を進める中で明かします。

「…その戦いで九尾を手にした初代、柱間様の力になるため、
 ミト様は封印術で己の中に九尾を封印し、九尾の人柱力となった。
 それからはずっと木ノ葉が九尾を所有してきた…。
 でも、そのミト様が余命僅かになった時…、
 私が連れてこられたの。九尾の器としてね。」

ミトの余命が僅かになったときに連れてこられ、
後述しますが、連れてこられて間もなくして知らされた考えられます。
つまり、幼い時に自分が人柱力となることを知った可能性が高いのです。

「この事は全て極秘とされてたし、
 知ってたのは三代目を含め上層部数人だけ…
 三忍ですら知らされてなかった。

こんなに情報を制限したのは、
おそらく、ただでさえ高等な封印術を使い、狙われている渦の国の忍が、
木ノ葉の九尾の人柱力となるという事実を秘匿することで、
火の国、渦の国、両国に無用な戦火を避けるためと考えられます。
またこの発言により【九尾事件1・九尾の人柱力】(*1)(1.E)で、
人柱力であるクシナに触れることなく、
九尾は自然発生かはたまた口寄せによるものとしたことも説明されます。
しかし三忍ですら知らされていない極秘事項ゆえ、
暗部トップのダンゾウは九尾事件がうちは一族によるものだと決め付け、
悲しきかな、うちは一族事件が起こってしまった…。
このとき三代目が反対したというのもうなずけます。
彼はクシナの真相を知る一人ですから。

「私は人柱力のプレッシャーや孤独感で押しつぶされそうになった…。
 でも前任のミト様がこう言ってくれたの。
 …私達は九尾の器としてここへ来た…。
 でもまず先にその器に愛を見つけて入れなさいって…。
 そうすればたとえ九尾の人柱力として生きていく事になっても、
 幸せでいられるって…。」

人柱力として生きること、
はじめはクシナも受け入れられなかったでしょう。
でも、ミトは人柱力も“人”であることを教えてくれたのです。
また、このときミトは存命していたわけです。
つまりミトが余命僅かとなってからその余命を使い果たすうちに、
クシナは人柱力となることを知らされたことになります。
このとき四代目の妻になることがすでにほぼ決められてたでしょう。
クシナもその運命を悟っていたはずです。
でもクシナは運が強かった。
自分の愛する人が、そのまま四代目火影となり、
自分の夫となって一緒に居続けることができたわけですから。

「……なら母ちゃんは…、
 人柱力だったけど…幸せだった…!」

ナルトの問いかけにクシナは微笑みながら、

「うん…」

と力強く答えます。
それを聞いて思わずナルトは涙ぐみます。

「…もう……ナルト…。
 アナタが泣く事ないじゃない…。」

人柱力としてナルトは様々な苦難を乗り越えてきた。
いつも前向きで、何も考えてないようなお調子者でいて、
でも本当はいつも辛くて…。
自分は不幸なのではないかと考えることもあったでしょう。
その不安だった気持ちが母親を前にして、
思わず一気に噴き出してしまった――。
母親が人柱力であっても幸せだったことが、
不安を全て払拭してくれました。
ナルトは人一倍嬉しかったと思います。

3.クシナが人柱力になった時期について

クシナはミトが亡くなる前後に人柱力になったと思われます。
それはミトの余命が僅かであることを考えると、
アカデミーに入学して間もないか
もしくはしばらくした頃であったと考えられます。
【九尾事件1・九尾の人柱力】(*1)では、

「人柱力というのは裏切りがないよう、
 昔から五影の兄弟や妻など、
 近い血縁関係にある人物が選ばれるのが常だ。
 人柱力は里長である影を守る力であり、
 影の力を誇示する存在でもある。」

(1.B)

とのモトイの言葉から、クシナが人柱力であった時期を、

  • ナルトを産んだ直後
  • 夫婦になって間もない頃からナルトを産む少し前まで

の2つとしました。
しかし、ミトがクシナの血縁(同じうずまき一族)であるなら、
少し苦しいですが、ミトが亡くなる前後の時期に
クシナが人柱力となったことから考えて、

  • ミトが亡くなる前後からナルトを産んで少し後まで

の期間彼女が人柱力であったことになります。
この長い間、三忍やダンゾウなどにも知られず、
ごく限られた少数の人間にしか、
クシナが人柱力であることを知られていなかったわけです。