スサノオといえばヤマタノオロチ退治でスサノオが手にした草薙の剣。
イタチの術、須佐能乎。そしてサスケの武器、草薙の剣。
何かの関連があるのでしょうか?

1、スサノオ

【尾獣の強さを考える4】でも触れましたが、
日本神話においてスサノオは自身の横暴が原因で、姉である天照を困らせ、
高天原から追放されてしまいます。
その後イザナギイザナミの間に生まれたオオヤマツミの子である
夫婦神アシナヅチテナヅチとその娘に出雲の国で出会います。
アシナヅチテナヅチは8人の娘がいましたが、
毎年一人ずつヤマタノオロチの生贄となり、
とうとう末娘のクシナダヒメを残すのみとなってしまいました。
クシナダヒメを見初めたスサノオは、彼女を妻として貰い受ける代わりに、
ヤマタノオロチ退治を引き受けます。
8つの強い酒を用意し、ヤマタノオロチを泥酔させると、
スサノオは十拳剣(とつかのつるぎ)を抜き、ヤマタノオロチを斬り刻みます。
そのときヤマタノオロチの尾から一振りの大刀が出てきます。
それが草薙の剣です。(天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)と同じだとする説がある)
この草薙の剣は後に御神剣として天照に献上されることになります。
しばらくして、ヤマトタケルノミコトが父である景行天皇から、東征を命じられた際、
不安に駆られることがあってか、伊勢神宮に赴いた折に、
天照大神八咫鏡)を祀る叔母の倭姫命(やまとひめのみこと)から、
草薙の剣を授けられ、決意を新たに東征に向かいます。
この東征に際して、ヤマトタケルがこの剣を用いて草を薙ぎ払って災難を防いだことから、
草薙の剣という名をもつという逸話もあります。

2.草薙の剣(1)

上述の日本神話から考えれば、須佐能乎と草薙の剣は関係がありそうです。
しかし、草薙の剣はこの世に二つとない御神剣のはずですが、
大蛇丸が口から何本も引き出している様子やサスケも持っていることから、
草薙の剣は何本も存在するようです。
では、ナルトの世界における草薙の剣とは何でしょうか?

「草薙の剣の一振りか…。」
「いくら金剛の体でも草薙の剣は痛てーぜェ…」

草薙の剣が初登場したのは、120話火影VS火影(14巻55ページ)。
このとき対抗して三代目猿飛の口寄せによって登場した猿猴王・猿魔が如意棒に変化します。
さて、猿魔は金剛(如意棒)に変化しても草薙の剣は痛いといいます。
つまり前にも如意棒の体で草薙の剣を受けたことがあるということになります。
確かに大蛇丸との戦いはこれがはじめてではないでしょう。
以前、大蛇丸の人体実験室に潜り込んだときに、
猿魔も口寄せされ猿飛と共に大蛇丸と戦っています。
このとき大蛇丸は去り際草薙の剣を手にしていませんが、
大蛇丸はこの剣を用い、猿飛は如意棒に変化した猿魔を用いて戦ったのかもしれません。
この後、大蛇丸の里抜けがあり、猿魔が大蛇丸草薙の剣を受ける機会は、
木の葉崩し時まではないといえます。

「白いウロコの大蛇…それがアンタの正体だったとはな…
 体から体へ乗り換える為に…実験を繰り返したなれの果ての姿か」

白い大蛇の姿を得るのは大蛇丸が不死の術を完成させてからです。
ですから猿魔との関係を見ると、
草薙の剣は、この不死の大蛇とは関係ないことになります。

3.草薙の剣(2)

ところで作中には“日本”刀とか“英”語のように、
実在する国の名前は出てきていません。
ですから作中で日本刀という呼称を用いない代わりに、
草薙の剣と呼称している可能性があります。
――だとすると、草薙の剣は広く普遍的なものとなるでしょう。
何本も存在することは、この点から見れば納得できます。
一方で暗部部隊員もこの日本刀のようなものをもっています。
この刀も草薙の剣であるとするなら“草薙の剣”という特殊性の強いイメージが
普遍的過ぎて全くの名折れとなってしまいます。
作中では“蛇から出てくる剣”という神話に則った部分があるので、
草薙の剣は“ある程度”特殊なものであると考えられるでしょう。
ですから、刀の中でも別格のもの…
例えば稀代の名刀、相州五郎入道正宗、長曽根虎徹といったようなものの様に、
ナルトの世界では“草薙の剣”が扱われていると考えられます。
こう考えた場合術・須佐能乎との関連はあまりないかもしれません。