392 『須佐能乎』

1.須佐能乎(1)

息を切らせた二人。

「“月読”と“天照”……二つの能力を開眼したときに
 この眼に宿ったもう一つの術だ。」

イタチによれば、須佐能乎とは瞳術の一つであるようです。

「サスケ…お前の術はこれで…終わりか…?
 隠している力があるなら…出し惜しみはしなくていいぞ…」

骸骨…そして文字通りそれを骨組みに、大気あるいはチャクラでしょうか、
イタチを覆うようにして、何かを形作っていきます。
やがて筋肉のような筋が骨を覆い、
頭蓋骨からはまるで天狗のような顔立ちが浮かび上がります。

「ここからが本番だ…」

暗雲から幾筋かの光が射し込み、空が晴れていくようです。
サスケの“麒麟”は一撃しか放てないようです。
そして突如、サスケは大蛇丸の鼓動を感じます。

「……あげるわ…。私が力を貸してあげるわ…。
 私が必要なんでしょ…サスケくん…
 イタチに復讐するんじゃなかったの?
 さぁ…私の力を解き放ちなさい。そうすればアナタの願いは…」

苦悶の表情、そして絶叫するサスケ。
次の瞬間、八岐大蛇が姿を現します。

「この感じ、大蛇丸の八岐の術か…」

これは八岐の術…八尾の登場であるとはいいきれませんが、
しかしここで大蛇丸が八岐大蛇と関連があるということ――
ひいては暁の尾獣狩りによって大蛇丸がその対象であった可能性も再燃するでしょう。

「サスケ自身ノチャクラガ無クナッタノニモ関ワラズ無理ニ力ヲ出ソウトシタカラダ!
 取リ込ンデ抑エテイタ大蛇丸ノチャクラガ表ヘ…!!」

イタチ、前へ出ます。須佐能乎はヤマタノオロチ退治になぞらえて*1
瓢箪から霊酒のようなものを取り出したと思いきや、剣を形作っていきます。
十拳剣<とつかのつるぎ>です。
霊剣によって薙ぎ払われ、八岐大蛇の八つの頭は切り落とされてしまいます。
(八つの尾は無事なようですが…)
再生した(と思われる)一つの口から、大蛇丸がついに姿を現します。

「…出るものが出たな…」

イタチは俄かに笑みを浮かべます。この機を窺っていたようです。

2.須佐能乎(2)

「相変わらず口からゲロゲロとキモいヤツだなぁ。」
「文字通リ蛇ノ様ニシツコイ奴ダ」

とゼツに酷評されながらも、嬉々として大蛇丸はイタチに語りかけます。

「これよ! これを待ってたのよ!
 アナタのお陰でサスケくんの抑えのチャクラが消えてくれたわ!
 これを機にあの子の体は私が頂く。そして…え?」

次の瞬間、大蛇丸を十拳剣が射抜きます。

「さてサスケ…次はどうする気だ?」

まるで当初から大蛇丸をサスケから取り払うことを予定していたように、
口から血を流しながらも、イタチの口元は意味ありげに微笑しているかの様子を見せます。

「クク……この程度の攻撃でこの私がやられると思って… !!
 こ…この剣は! まさか…十拳剣?
 イタチ…アナタが隠し持って…くっ!」

十拳剣はまるで意志があって大蛇丸を呑みこむように振舞います。
実体の無い霊剣・十拳剣――別名・酒刈太刀は突き刺したものを酔夢の幻術世界に
永久に飛ばし封じ込めてしまう、剣そのものが封印術を帯びている草薙の剣の一振り――。
大蛇丸が探し求めていた剣でもあった――
それは大蛇丸にとって大いなる脅威だったからでしょうか?

「仕上げだ…サスケ。」

大蛇丸を切り取られ、元に戻ったサスケ。
イタチは鋭く見つめます。