1.草薙の剣と呼ぶもの

闘の書・創の章で岸本先生がインタビュー形式で、
質問に答えている場面があります。
その中で特に、サスケに関する質問なのですが、

Q.呪印の紋様はなぜ人によって違う?
A.同じだとおもしろくないから(笑)

とありますが、万華鏡写輪眼の模様が個人によって違うのも、
はじめから予定されていたともいえます。
では、草薙の剣に関してはどうでしょうか?
【須佐能乎と草薙の剣(i)】*1では、
草薙の剣が“日本”刀と呼べない為に、その代名詞的な役割として、
または名刀の扱いを受けるような形のものとして解釈しました。
ゼツによれば、実体の無い霊剣・十拳剣も草薙の剣の一振りだといいます。
しかしこの十拳剣は、大蛇丸のように蛇から生じたわけではなく、
イタチの瞳術の一つと考えられる須佐能乎より生じたものです。
そのうえ実体もなく、日本刀のような形をも離れています。
つまり何をもって草薙の剣と呼ぶのかが曖昧となります。
そこで、草薙の剣が“人によって違う”という考え方を用います。

2.個人による形状

草薙の剣と明らかになっているのは以下の3つです。

  • 大蛇丸の口の中から出てくる蛇から取り出す草薙の剣
  • サスケが携帯している鍔のない一文字様の草薙の剣
  • イタチの術・須佐能乎より生じる実体のない草薙の剣・十拳剣

さてお気づきのように、各々によってその仕様は違います。
ここで、ヤマト率いる木ノ葉の小隊が
大蛇丸のアジトでサスケと対峙した場面を振り返ってみましょう。

「俺の草薙の剣は少し特別でな。ガード不可ってヤツだ。」

これは千鳥という電気を帯びているからという意味にもとれますが、
特別性の草薙の剣だから千鳥を流すのに適するともとれます。
サスケが扱う草薙の剣とは、大蛇丸の草薙の剣とは違うオリジナル――
言い換えればオリジナルにたる理由があるわけで、
このオリジナルとは千鳥を帯びるのに適した草薙の剣というわけです。
サスケは様々な忍具や地面に千鳥を流したりできます。

「これは…刃に千鳥を流しているのか…? 
 そうか…それで斬れ味を極端に上げた上に、斬りつけたあともしびれで動きを…」

――が、よくよく考えると、電気を流して痺れさせるのは分かりますが、
切れ味があがるということはどういうことでしょう。

「風の性質変化は近、中距離戦において一番の攻撃力を持つ。」

以前アスマがナルトに風の性質変化を用いれば、
切れ味をあげることができることを飛燕を用いて教えてくれました。
斬るとはすなわち物質を構成する分子同士の結合を断ち切ることをいいます。
刃こぼれすると、この分子同士の結合を断ち切る力が弱まるため、
切れ味が鈍るというわけです。
風の性質変化においては、いわば大気の刃が鋸状に高速回転し、
ナルトの風遁・螺旋手裏剣に見られるように
チェーンソウのような要領で切断するため切れ味が増していると考えられます。
一方でサスケの場合はどうでしょうか?
電流やそれに伴う熱によって、分子同士の結合が弱くなる場合もあり、
したがって切断しやすくなり一概に切れ味があがらないとは言えませんが、
通常はクナイが簡単に切断されてしまうほど、極端に切れ味はあがりません。
サスケの特別な草薙の剣だからこそ電気を帯びると切れ味があがるのです。
大蛇丸、サスケの例を見ても、術者にとって扱いやすいように草薙の剣は常にあります。
これは“草薙の剣”という素があって、術者に対して呼応し千変万化するか、
あるいは、各々が自分に合う草薙の剣を手にしている結果からくるものかは
わかりませんが、少なくとも草薙の剣も個人個人によって違うという設定はありえそうです。

3.十拳剣に見る草薙の剣

十拳剣はゼツによれば、突き刺したものを酔夢の幻術世界に永久に飛ばし封じ込めてしまう
という効果を持っています。草薙の剣が“人によって違う”ことを意識すれば、
これは月読などの幻術使いであるイタチに、いかにも似つかわしい草薙の剣です。
そもそも神話では大蛇退治の際にこの十拳剣を使用し、
そして戦利品として天叢雲剣(草薙の剣)を手にするわけですが、
ナルトの中のエピソードでは、この十拳剣も草薙の剣とし、
これで大蛇丸という蛇を退治したというエピソードになっています。
作中では草薙の剣がどんな剣か明らかにされていないことから、
全ては推測になってしまいますが、これらのことからナルトの世界において
草薙の剣の比重は意外に大きいものと考えられます。