血継限界。読んで字のごとく、血を継ぐ者とそうでない者とでの境界がある能力。
カカシやヤマトがナルトに説明した場面を中心に
この能力について少し考えてみたいと思います。
(1)では要素間の連結について、
(2)では血継限界の本質について
主に述べます。

1.性質変化と血継限界(1)

「ボクは“土”と“水”の二つしか使えない。
 そもそも“木”なんていう基本性質はないんだよ。」
「右手に“土”。左手に“水”。
 二つの“性質変化”を持っている場合、
 それぞれを独立して使うのは対して難しくない。
 だけど二つの“性質変化”を同時に発生させるとなると話は別…」

まず火、風、雷、土、水という忍術の基礎でもある5つの基本性質というものがあり、
性質変化とはチャクラをこれらの要素に変換することと考えてよいでしょう。
実際には6種類の基本的な性質変化があるようですが、
その1種類は特別なもの(陰陽だと思われる)としてカカシの説明から省かれています。
上忍以上になるとたいていは二つ以上の性質変化を持ち、
それを別々に扱うことはたやすいようですが、
同時に扱うことは極めて難しいようです。
しかしこの困難を翻すと、新しい性質が生まれるようです。
木遁は土と水の両方の性質が合わさって生じるようです。
【性質変化5・相剋と相生】*1では、
二つの要素間についての関係性を考えてみました。

  • 相生(あいおい)
    • 要素同士が良い影響を与えるもの
  • 相侮(そうぶ)
    • 要素同士の優劣が逆転する。
  • 相剋(そうこく)
    • 要素同士が悪い影響を与えるもの
  • 相乗(そうじょう)
    • 要素同士間の影響が相手を剋しすぎて、自身が小さくなること。




この図では右回りの順に優勢、左回りの順に劣勢となっていますが、
土と水は互いに優劣関係(相克)にあります。
しかしながら互いが作用しあって“木”という性質変化を生んでいるので、
相剋でありつつも相生であるといえるでしょう。
つまり基本的に優劣がありながらも、
優劣の作用しえない状況をつくりだしていることになります。
また白は水と風の二つの性質変化を混ぜて“氷”という新しい性質を生んでいます。
水と風は優劣関係はありませんし、単純に相生の関係にあるといえます。
このように、相克相生関係なく、二つの要素を混ぜこぜにして生み出される性質は、
先述の木、氷含め5C_2=10通りあります。(三種類以上混ぜられる可能性もある。)

2.性質変化と血継限界(2)

「二つの“性質変化”を同時に扱い、新たな“性質変化”を生み出す力を…
 “血継限界”って言うんだよ。その言い方ぐらいは聞いたことあるだろ?」

さて本題の血継限界とはいかなる能力かに移ります。一見すると、
【二つの性質変化を混ぜ、新しい性質変化を扱う能力】=【血継限界】
のように思えますが、カカシの話をよく考えてみると実はもう一つの可能性が残されています。
新たな性質を生み出す力を“血継限界”という――
土と水という性質を用いて木という性質を生み出すには、血継限界が必要だという考え方です。
【二つの性質変化を混ぜて扱えるようにする(結果新しい性質が生まれる)能力】=【血継限界】
以下の図式をご覧ください。

  • <前者>(土)+(水)=(木)=(血継限界)
  • <後者>(土)+(水)+(血継限界)=(木)

前者では、例えば血継限界の例としてうちは一族の写輪眼やかぐや一族の屍骨脈は
要素(火、風、雷、土、水)間同士の足し算で生じた能力として説明する必要があり、少し無理があります。
一方で後者のように考えるとこれらはスムーズに説明ができます。
例えばアンモニアNH_3は広く知られる化学の知識として、窒素N_2、水素H_2からできます。
しかし純粋にこれらを混ぜただけでは、アンモニアはほとんど生じません。

  • N_2+3H_2 \rightarrow 2NH_3


という化学反応にはこの反応を効率よく進める触媒*2が必要なのです。
窒素を土、水素を水、アンモニアを木の性質に例えれば、
まさに血継限界とはこの触媒に他ならないわけです。
写輪眼で血継限界によって生まれた新しい能力、簡単な話木遁をコピーできないのは、
血継限界という触媒がコピーを試みた者に存在しないからだと考えることもできるでしょう。
血継限界とはいわば早い話が遺伝子と似たものだとよく言われます。
それはおそらく幾千の試行錯誤を繰り返して(土)+(水)=(木)という新しい性質を生み出した最初の開祖が
自分の遺伝子上にそういう情報を書き込んで後代に脈々と受け継がせてきた様を表しています。
苦労や苦難のの末得られたコツを遺伝子を通して伝えているというわけです。
これは生物の進化のプロセスにも通ずるものがあります。
人間はサルから進化してきたと言われていますが、二足歩行を確立するまでに随分と長い時間をかけました。
今の現代のヒトから生まれるヒトは、二足歩行をすることにそんなに長い時間を要しません。
まさに血継限界です。同じように写輪眼や屍骨脈も、
血継限界を持たないものがやろうとすれば、人生全ての時間を費やす必要があるかもしれませんが、
血継限界を持っているものがやれば、その期間を何十、何百分の一倍に縮めることができるのです。

*1:【性質変化5・相剋と相生】

*2:【触媒】:特定の化学反応の反応速度を速める物質で、自身は反応の前後で変化しない。