466 『密室の大攻防戦』

1.密室の大攻防戦(1)

「せめてとろけるようなキスをしてあげる。」

という水影の言葉に敏感に反応する香燐。

「てめー何者だこのやろー!!
 色目使ってんなよババアのくせに!!」

水影もその言葉に少し困惑。
さて、水影が綱手のように歳を重ねているかは別にして――

「水影様やる気だ…。ボクが水影様をお守りしなきゃ…
 でもこの人…再不斬をやった人…。こんなボクに本当に…。
 ……イヤ…できる…。ボクならガンバれる…事にしておこう!!」

と相変わらず自信なさげな長十郎もヒラメ・カレイを構えます。

「土影様、参戦しないのなら逃げておいて下さいね。」

と土影に促して口を膨らませる水影。
溶遁・溶怪の術の液が勢い良く放たれ、
雲上に広がったあとサスケたちを包み込む形で上空への逃げ場を断ち、
さらには直接的に高水圧で吹きつける液での全方位攻撃です。
しかしサスケはスサノオを発動。無傷で切り抜けます。
ここで長十郎がヒラメカレイを解放。
サスケもスサノオで守れているものの不意の衝撃波(?)で
狭い部屋へ追いやられます。

「体中の細胞が痛む…。これが“須佐能乎”のリスクか…。
 長時間使い続けるとこうなるとはな…。
 まだ完全体にすらできていないのにこの痛み……。
 イタチはどれほどの……。」

血の涙を流し、吐く息も絶え絶えで満身創痍のサスケ。
そんなサスケをよそに、水影の術で壁はどろどろと溶け出し密室へ変化します。

「アナタの後ろ…その壁は最初の攻撃の時にフタをしておいたの…。」

初撃での溶遁はこの密室を作り出し、そしてここに追い込むため。
詰め将棋のようにサスケを追い込みます。

私は火・水・土の三つの性質を使う。
 だから血継限界も2つ持ってる。

と水影は血継限界の2つ溶遁・沸遁を持っていると告白します。
水影の沸遁・巧霧の術はあたりが酸の霧へと変化しサスケを襲います。

1.0.血継限界は一通りではない可能性

さて少し話が脇道に逸れますが、実は前回の【五影会談9・サスケVS水影(i)】*1では
の違いから考えて、

    • 熔遁=火の性質+土の性質

であることから

    • 溶遁=水の性質+土の性質

としました。溶遁の溶解液(術では溶怪となっていますが)は、
強力な(すなわち腐食性のある)酸や塩基、あるいは有機溶媒としましたが、
それは土中の金属あるいは非金属のイオンまたはそのイオンによる化合物と水の混合物
であると考えるとイメージがわきやすかったからです。
しかし実はあえて前回触れなかったのですが、

    • 木遁 水の性質+土の性質

はすでに作中で登場していて、
水の性質+土の性質で2通りの全く異なる血継限界の忍術となる可能性があることは看過できません。
これを説明できる要素として、

    • 血継限界といわれるほどなので、DNAに左右される
    • チャクラの陰陽がかかわる


の2つほどが考えられるわけです。

1.1.血縁・個性が血継限界に作用する場合

特に前者の作用を認めると考えるとバリエーションも豊富になり、
忍一族の個性を説明する礎の一つとしておもしろいと私は思うのですが、
特に初代しか扱えない“木遁”というのは、
忍の世界が五大国や小国を含めて広く渡っているのにあまりにも特定的、個性的なもので、
逆に言えば水+土という術が木遁しかありえない、というのは不可解であり、
この事を認めるなら初代しか扱えないという部分がより鮮明に浮き上がると言えます。

1.2.陰陽が作用する場合

後者の陰陽を要素として認めた場合は、前者ほどバリエーションが増えませんが、
それぞれの血継限界に2通りずつの表現が存在することになります。
これを認めるなら陰陽の言葉通り熔遁と溶遁は表裏の関係にあると
考えた方がよいかもしれません。つまり

    • 溶遁=火の性質+土の性質

です。熔岩を思い浮かべる熔遁ですが、
これは高熱溶融状態にある岩石を扱う術のイメージはつきやすいです。
しかし、火+土で腐食性の酸などを作り出すイメージはつきにくいかもしれません。
鉱物が熱により溶け出し液状に変化、濃度の高い状態で酸や塩基の化合物が存在する――
というまではイメージの範疇です。あるいは熱により、
空気中あるいは土中に存在する非金属である炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)、水素(H)など
(あるいはその化合物)から熱エネルギーを利用して最強の有機溶媒へと変化させる――
というのが考えられるでしょう。


さて“沸遁”という新しい血継限界が出てきますが、
水影は火、水、土の3通りから血継限界の術を生み出していると言っています。
火、水、土の3つの性質のうち2つを組み合わせる術は
3C2=3の高々3通り。ここで公式に分かっている条件として

    • 火+土の性質変化は 熔遁
    • 水+土の性質変化は 木遁

ですから、ここに溶遁、沸遁を加えるとするなら4通りとなって矛盾し、
1.1、1.2の可能性を認めざるをえないわけです。
しかし溶遁、沸遁が液体か気体かでどちらも“溶解”という
水影の術のスタンスが変わらないところから、
やはり血継限界、そこには個性が介在すると考える1.1の方が今のところ有力でしょうか。

2.密室の大攻防戦(2)

「どうやら下で随分雷影殿に絞られたようね……。
 ……悪いけどアナタを助ける気はないの…。
 このままイイ男が溶けて崩れていくのはいつ見ても心が痛むけど……
 死んでもらう。」

水影の沸遁・巧霧の術の中、満身創痍で思うように体が動かない中、
須佐能乎によりその無いチャクラを振り絞るように酷使するサスケは、
攻め手を取ることができません。サスケ絶体絶命のピンチですが、
ゼツの胞子の術が時限爆弾のように発動。

「胞子ノ術ニ気ガツカナカッタトハ、
 五影モ意外ト間抜ケナ連中ダ。」

ともう片方のゼツが言います。白い方と黒い方、
両者は一時的に分離していても互いの情報を得ていることが推測される台詞です。
水影のチャクラを吸って膨れたゼツの胞子体は、
なんと絶対防御の須佐能乎の壁をすり抜けてサスケのチャクラを回復させます。
サスケは須佐能乎の力を使って密室を脱出。

「霧が皆の所へ漏れる…。酸度を変えないと…!」

会談場のみんなを心配する水影の台詞ですが、
裏を返せば濃度が高いほど腐食性がある――ということ。
同じように霧に曝されている水影が無事であるのは、
意図的に自分の周りの霧の濃度を薄めていることが推測されます。
薄めるとは水を混ぜること、つまり水遁の術が一躍買っていそうです。

「手こずってるようじゃぜ…。赤ツチ…ワシらもそろそろ参戦するか?」

一方の土影たちにもゼツの胞子体がまとわりついています。
赤ツチは口から岩の魔人のようなものを吐き出し、
それがゼツの胞子体を握りつぶします。
土影は土遁・加重岩の術によって、胞子体を石化させ振り落とします。
そして土影はマントをはためかせサスケの前にふわふわと浮いて漂います。

「こんなガキがデイダラをのう……
 お前に恨みはないが忍の皆が死を望んどる…じゃあのう。」

土影がデイダラの名前をまるで惜しむように挙げています。
デイダラは暁でありながら岩隠れの有能な忍として認知されていたのかもしれません。
――というよりも、暁と土影のコネクション部分はデイダラだった可能性もあります。
土影の掌に作り出された櫃<ひつ>のようなものが巨大化。
塵遁・原界剥離の術によってサスケは押しつぶされます。

「サスケのチャクラが……ない…!!
 そ……そんな…じゃあ…」

悲嘆する香燐。

「そりゃそうじゃ…。体ごと分子に近いレベルでバラバラにしたんじゃぜ。
 次はお前じゃ。」

どうやら塵遁とは原子・分子レベルにまで破壊する術のようです。
――これはどんな物体にも応用できるなら最強の術のような気が。
戻ってきた雷影たち。カンクロウが胞子体をチャクラの操り糸で取り除きます。
サスケを塵にしたという土影にいきり立つ雷影。
そこへ突如空間が歪曲し、トビが現れます。

「そのチャンス…まだ残っている…。そう喚くな雷影。」

どうやらサスケのチャクラが香燐に感知されなかったのは、
トビによる時空間忍術の影響でしょう。
サスケを担いだトビは、五影を前に自らこう名乗ります。

「オレの名はうちはマダラ。お前たちにある説明をする…。
 それを理解してもらった上で聞きたい事がある。」

うちはマダラ…と聞いても平然としているのは、
ダンゾウからのリークによるものでしょう。

「オレの目的“月の眼計画”についてだ。」

――と秘密裏に進めていたのではないか、と考えられる月の眼計画を
五影の前で話そうというトビ…否、うちはマダラ(?)。
いったい彼の狙いは何なのでしょうか。
それにしてもトビとダンゾウの対峙はまた見られなかったですね。
青が監視しているダンゾウ。その動向も気になります。