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1.トビ=うちはマダラ?
374話におけるトビが暁の黒幕っぽい描写に関して
「このうちはマダラの力が…」
という発言について、考えてみましょう。
(1)トビがうちはマダラの力を借りているが完全でない。
(2)トビそのものがうちはマダラ。あるいはマダラの憑依体。
と曖昧なところです。前回は(1)のサイドを推す考えを示しました。
一方、英語版でも、
“The Sharingan's true power...my power...Uchiha Madara's power...”
「この私の力が」と日本語で示されていないように、
「My Uchiha Madara's power」とはっきり示されていません。すなわち、
- 「My power:自分の『力』」≒「Uchiha Madara's power:うちはマダラの『力』」
であって、
「My:私の」と「Uchiha Madara's:うちはマダラの」
つまり「私」=「うちはマダラ」が必ずしも成り立たないことを日本語でも英語でもうまくぼかして表現しているのです。
ですから(1)とも(2)とも断言はできないのです。
ただ、(2)と考えた場合は1つだけ難点があります。
なぜトビ=マダラは「おどけたフリ」をする必要があったのでしょうか?
というか禍々しい力をもった〈マダラ〉というイメージから、
あのひょうきんさは演じるにしても、かけ離れています。
その答えにつながる一つの考えを以下に記しておこうと思います。
2.トビ=うちはオビト?
以前からよく噂されているトビ=うちはオビト説ですが、なぜこんな噂が飛び交うかというと、
- 髪型が良く似ている。
- 仮面の目の穴がオビトに残されていると思われる右片目だけ。しかも写輪眼。
- おどけているところ(多少トビの方が調子はずれ)がオビトとそっくりである。
- トビとオビトの語呂が似ている。(トビTOBI→T+OBI→OBI+T→OBITオビト)
- 素顔(オビト)を隠すために仮面をつけているのではないか?
という主に5点でしょう。
ところがこの説には、難点があります。
- トビ=うちはオビトなら、なぜうちはマダラの力を唱えるのか?
まず、この疑問があげられるでしょう。しかし、トビ=オビトがマダラの憑依体であれば、
この疑問は立ちどころに解決しそうです。
この観点に立って話を進めます。
- 仮にトビはマダラの憑依体だとして、その媒体がオビトの場合、なぜオビトを媒体に選ぶのか?
- オビトは岩宿崩しで右半身を潰され、土遁・裂土転掌により岩に埋もれたはず。
- 当時は他のうちは一族も生き残っていたはず。他のうちは一族を選ばないのは?
- オビトは岩宿崩しで右半身を潰され、土遁・裂土転掌により岩に埋もれたはず。
掻い摘んで言えば、「腐ってもオビトを選ばなければならない理由は何か?」です。
これは(2)説の後者、すなわち、【マダラの憑依体】であることから生じる疑問です。
マダラが“直接”オビトの器に乗り移ろうとしたわけではないかもしれません。
つまり端的に言えば、オビトそのものがマダラであるとしたらどうでしょう。
すなわち、【トビ=マダラ=オビト】です。ここでは、この一見考えにくい話を詳述します。
『輪廻』という言葉が出てきましたね? この言葉がキーワードです。
少しオカルトチックですが、14巻で〈死神に食われる魂〉や〈穢土転生〉など、
どうやら『魂』という概念があり、有り得そうなのでこの考えを記しておきます。
人を含む生きとし生けるものは皆死んでも別の何かに生まれ変わることを繰り返す。
その苦痛の呪縛から解き放たれることはほぼない。
というのが輪廻の平たい概念です。
この世で命の総数は増えたり減ったりしてますが、最初からある魂の数は一定であるわけです。
この概念に則って考えて見ましょう。
さて、ある世でうちはマダラの生を受けた人物が、
終末の谷での戦いに破れ死んだとします。
次の世かまた次の次の世あたり、
後世でうちはオビトとして生まれ変わったとします。
輪廻にまつわる前世後世の考えでは、
通常、前世での記憶は抹消された真っ白な状態でこの世に新しい生を受けます。
ところがどういうわけか解しがたい現象、
すなわち前世の記憶がある人々もいるというのも事実。
それもある日突然、前世の記憶が甦ったというパターンが多いようです。
オビトはどうでしょうか?
つまり、死ぬ直前まで〈うちはオビト〉であり、
最後の瞬間、前世の〈うちはマダラ〉の記憶を呼び覚ましたとしたら?
この瞬間に一気に〈マダラ〉であったころの記憶を用いて、
時空間移動を成し遂げることは容易だと思われます。
あるいはオビト自身が気づかぬ無意識のうちに成し遂げたかもしれません。
そう、この瞬間にマダラ=オビトという図式が成り立ったのです。
うちはマダラの記憶は脅威的にオビトの潜在能力を覚醒させます。
カカシに渡した左目以外はその身体の機能を回復させたのです。
ところで、オビトを潰した岩の描写、オビトは完全に右半身を潰されているように見受けられますが、
顔の部分に注目してください。オビトは顔を動かしてリンやカカシと話をしているように見えます。
仮にオビトの右顔が完全に潰されているなら、脳も潰されていますから、
あんなに長く話すことなどありえなく、即死だと思われます。
岸本先生ももしかしたらこの辺を意識して描いている可能性があります。
顔が潰れていないつまりは右眼は無事だった、ということになります。
さて回復したオビトですが、その後はオビトであるのかマダラであるのか、
人格(パーソナリティ)は揺らいでいたと思われます。ここで、長くなりましたが、
- トビがおどけたフリをする理由は何か?
という疑問について、一つの明瞭な答えが出るのはもうお分かりですね。
すなわち、あれは「オビト」の人格だと思われます。
一方でペインに命令を下していたのは「マダラ」の人格。
オビトとマダラが混合して「トビ」という新しい存在が出来上がったのではないか――
という疑念が沸々と沸いてくるのです。