664『父親だから』

1.父親だから(1)

「(…大蛇丸はサスケの状態によっては
  体を奪いにかかるかもしれない…
  それが君麻呂の願いでもあるが…
  香燐はそれを許しはしないだろう…)」

サスケのもとへと向かう道中。
大蛇丸の心中を理解しきれていない重吾は
懐疑的にこの状況を憂います。

「サスケのいた場所に誰かいる!」

と香燐が何やらサスケの近くに
何者かが近寄っていくことを察知しています。

「チャクラに覚えは?」

と言う大蛇丸に、

「ない! けど……
 このチャクラ……
 すごくイヤな感じがする!」

香燐は答えます。
誰と特定できないものの、
一つ言えることは
非常に邪悪な何かを感じるということです。

「ならもっと急がないとねェ。
 どこの馬の骨かも知れない輩に
 サスケくんが何されるか分からないものね。」

大蛇丸

「(…彼の風はここまでかしらね)」

と残念そうな大蛇丸
"うちは"が起こす風――
その風を見届けたいと思っていた矢先です。

「香燐!
 だからってそんなにとばすとすぐバテるわよ。」

もちろんそのまま見過ごすわけにはいきません。
香燐は大蛇丸の制止を振り切って
スピードアップします。

戦場の何処か。

「青春パワーマックスで行くぞ!! 
 リー!! テンテン!!」

ガイはリーとテンテンに支えられながら、
まだまだ何かできると発奮していますが――
案外ダメージや疲労は大きく、
ガイと言えど支えなしでは儘なりません。
そんな折、空を何かが駆け抜けていくのが映ります。

「アレは我愛羅くんの砂…
 サクラさんもいたような気が……」

とリー。
それは引き返すような邦楽。
テンテンが疑問に思います。

「カカシはまだオレ達を追い抜いてはいないな。」

と確認するようにガイ。

「うん…」

とは答えるものの考えるようにテンテンがしていると、
ガイが続けます。

「ナルトにもらった九尾のチャクラが消え…
 医療班であるサクラが移動しているとなると…、
 どうもカカシの方で何かが起こりかけている気がする…」

長年連れ添ったライバルの身辺に何かを感じるガイ。

「引き返すぞ、リー! テンテン!!
 オレの熱い血が騒ぐのだ!!」

スーパー胸騒ぎというやつを感ぜずにはいられないよう。
そんなガイとリーのテンションに
ついていけないと言わんばかりの表情を浮かべるテンテン。
ですが、状況にまかせるしかないようです。

「少しばかり体が重いな。
 何か胸でつかえてやがる…」

その頃、上空をマダラも滑走していきます。
琥珀浄瓶と紅葫蘆――
六道の忍具と呼ばれるそれらを
何の躊躇いもなく捨てていきます。
ちょうどその捨てられた忍具が
上空から降ってきて頭を打つリーとガイ。
二人を気遣いながらも、
テンテンはそれらの忍具に気付きます。

2.父親だから(2)

「オ前ラモシツコイナ…」

オビトの身体を乗っ取り、
暴れ回る黒ゼツ。

「もう…オビトの意識がはっきりしてない…」

ミナトは螺旋丸、カカシは雷切を構え、
目の前の許しがたい敵を討つために覚悟します。

「カカシ行くよ。」

その時、ミナトの内なる九尾が留めます。

「待てミナト!
 チャクラを感知仕様に変えてみろ!!」

そう言われて落ち着いて感知に切り替えたミナト。

「ま…まさか…」

チャクラが抜けきったナルトを、
ミナトはしっかりと感じとります。

「こっちに気を取られ過ぎたな。
 …間違いなくワシの半身を抜かれちまってる!」

と内なる九尾。
ちょうどそのとき上空に
我愛羅とサクラが現れます。
悪い予感の通り、
九尾を抜かれて意識がないナルトを見たミナト。

「ナルトの九尾から伝言だ。
 四代目火影
 アンタの中の九尾の半身を
 ナルトの仲へ入れてやれと。
 それでナルトは助かると…!」

我愛羅は九喇嘛から預かった言伝を、
ミナトに伝えます。
それを聞いていた黒ゼツ。
なにやらニタリとほくそ笑みます。

「カカシ奴を頼む。」

カカシに黒ゼツの相手を任せ、
ナルトの蘇生に尽力したいミナト。

「オレもだ。」

カカシに協力するように
我愛羅も肩を並べます。


――ナルトが生まれる前の光景。
それがなぜだか急にミナトによみがえります。

「気を付けて。」

そう気遣う妻・クシナ。

「ああ。子供の顔を見るまでは
 絶対に死ねないよ。」

ですが憂いを秘めたようにクシナは遠い目をします。

「この子が産まれたら、
 心配事は2つになるわね。」

火影の任務に赴く夫を気遣う妻を
逆に労わるように言葉をかけるミナト。

「大丈夫!
 この子はオレが守るよ!
 どんな事があっても。どんな手を使っても。」

少し安堵した表情を見せるクシナ。

「…でもアナタは火影で忙しいし、
 この子はやんちゃで火影になりたいって
 無茶ばかりして聞かないと思うし…
 女心もどんかんで、先生に歯向かって!
 それに――」

とまだ先の未来を、
然る事のように語るクシナ。

「もう産まれる前から心配してるし…
 心配し過ぎだよ。
 何でこの子が男の子で…
 しかも火影になりたいって
 産まれてもないのに分かるの?」

と困惑するようにミナト。

「だって、母親だから。」

とクシナはきっぱり言います。
母親だからこそ、
生まれる子がどんな子に育つか――
感じていると言うのです。
妙に納得してしまったミナト。

「とにかくボクは火影だよ。
 簡単には死なないし、
 その子は火影のオレが何があっても守るから!
 大丈夫!」

といつも歯切れの良くない様子を知っているクシナは
夫のそんな頼りがいのある言葉に

「この子の事になると、言い切るわね!」

と目を丸くします。

「父親だから。」

とかっこよく言い切って見せるミナト。

簡単には、そんな言葉を守らせてくれないような未来を
この夫婦は乗り切らなければならなかったのですが、
巡り巡って、ようやく親らしい事ができると、
意気込むミナト。

「…今のオレなら、今度こそ――」

陰の九尾をナルトへ戻す――
そのことでナルトを救うことができる
――はずだった。

「九尾…コレデオ前ヲヤット奪ッテヤッタゾ。

手に集められナルトへ注がれるチャクラを割って入るように
地中から突如現れた黒ゼツが横取りします。
応戦しようにも、完全に隙をつかれ、
簡単に逃がしてしまいます。
唖然とする一同。

「ナルトはどうなんだ!?」

心配する我愛羅
ですが事態はさらに困窮します。

「マダラ様…」

突如大地を裂くように現れたマダラ。

「遅いぞ黒ゼツ。
 こちらから出向いてやったわ。」

と最悪の事態です。