663『絶対に』

1.絶対に(1)

血を吐き倒れ込むサスケ。
一方で、尾獣を抜かれ意識の回復が見られないナルト。
そんなナルトを必死で蘇生治療を施そうとするサクラ。

「心音も…脈もない…」

しかしナルトの心臓からはもはや拍動すら感じられません。

「しっかりしろナルト!」

我愛羅も必死です。

「何で!?
 医療忍術が効かない!!」

想い通りにいかないことに、
焦るサクラ。

「九尾を抜かれてしまっているからだろう。」

我愛羅の言葉を聞いてはっとします。
人柱力が尾獣を抜かれるとどうなるか――

「マダラにやられた…
 だが助かる手はある。
 だからこうして急いでいるのだ。」

我愛羅はナルト救出のため、
ナルトの父である四代目火影・ミナトのもとへ急いでいます。

我愛羅のガキ!!
 頼みがある!!
 そいつの父、四代目火影ミナトの体の中に
 ワシの半身が封印されている。
 そいつをワシの代わりとして入れろ!!
 それでナルトは助かる!!
 四代目の所へ急げ!!」

マダラに封印される直前に、
九尾から与った秘策。
屍鬼封尽された陰の九尾を、
ナルトに新たに入れるのです。

「奴には瞬身の術がある。
 どうにか連絡して向こうから。」

「それは無理だ!!
 奴の瞬身の術はワシの封印式に書き込まれたモノ…
 ワシが抜かれた時点でそれは消え…くっ!」

もはや一刻の猶予もならない状況。
しかしミナトの瞬身の術には頼る事はできません。

「とにかく四代目火影の所へ連れて行け!
 分かったな。我愛羅…。」

我愛羅が急ぐ理由はここにあるのです。
サクラも事情が飲み込めた様子。

「そこまで後どのくらい?」

サクラたちがいたところから、
ミナトたちがいるところまでは
だいぶ距離が離れている様子です。

「まだ数キロある!」

戦場エリアはわりと規模の大きかったもののようです。

「(残り少ないチャクラでできる事…)」

数キロを持たせるためにサクラは考えあぐねます。
我愛羅の砂雲の速度も全力疾走とはいえ、
ナルトがもつかは分かりません。
サクラは手にチャクラを集め、皮膚を切り裂くと、
ナルトの下肋部から胸膜と横隔膜、肺を押しのけ、
縦隔を通り心臓を直接手揉みして刺激します。
肋骨と胸骨で覆われるところから行う心臓マッサージよりより強力です。
細菌感染などの影響があるので、
おそらくサクラのチャクラコントロールにより
無菌が保たれているものと思われます。

「この私が看るかぎり簡単には死なせやしないわ!!」

刹那をあらそうとはいえ、
流石に我愛羅も息を呑みます。

「とばすぞ!」

我愛羅も砂雲の上という不安定な状況ですが、
サクラに全幅の信頼を置き到着までの医療を任せます。

2.絶対に(2)

「せめて……ワシの禁術で魂だけでも…」

横たわるサスケを前に扉間。

「(もう…チャクラが感知できぬ。)
 …瞬身どころか…身体が動かぬ。
 マダラめ!」

何もできない自分が歯がゆい――
ただただこの状況を見つめているだけしかできないようです。
一方でサスケのもとへと急ぐ大蛇丸一行。

「ウチをなめんなぁ!!
 サスケン所へ行くんだ!!
 どけェ!! !コノヤロー!!」

力を暴走させた香燐は、
チャクラの鎖を縦横無尽に引き延ばし、
ぐるぐるが作り出した木遁の仏像を破壊します。

うずまきクシナと同じ力……
 (今になってやっと…)」

大蛇丸
香燐に秘められた力とは
ナルトの母であるうずまきクシナの力を
移植したものだったようです。

「うそ…
 すっげーな香燐…!」

敵の術なんか無視するように
暴れ回る香燐を見て目を丸くする水月
木遁の剣に刺されてもお構いなしです。
虚を突かれたぐるぐる。
その隙を見計らって、
水月が高圧水鉄砲をかまします。

「やるね。」

仮面が割れ、耳を覗かせるぐるぐる。
しかし連携はこれだけでは終わりません。
さらに背後から首を伸ばした大蛇丸
肩口に噛み付き、呪印を施し、行動不能にします。

「ハハ――残念でしたァ――!!」

予定通りで爽快だと言わんばかりに水月
圧倒的な力を誇って忍たちの前に立ちはだかっていたぐるぐるを
ものともせず通り抜けて行く大蛇丸一行に一同は賞賛の目です。

「大丈夫か、香燐?」

人一倍タフとはいえ、
臓器を貫かれたはずの香燐を心配する重吾。

「ああ…ンなことより、
 サスケが!! サスケが感知できねーんだよ!!」

香燐は自分のことよりサスケが心配で必死です。

絶対に(3)

簡単に尾獣をすべて引き戻し、
十尾として再構築したあと、
これもまた容易に十尾を人柱力として自らに封じ込めたマダラ。

「これが六道の力か……
 後は左目だな。」

六道仙人の装いや、錫杖を具現化し、
もはや輪廻眼片方を残すのみとなったマダラ。
一方で事態の救世主となるはずのナルトは、
いつもと似つかわしくない生命の危機です。
サクラの人工呼吸もまったく功を奏しません。

「かつてのアンタのバカげた夢は……
 今はもう…。
 逝かせない…。逝かせてたまるか!
 絶対に死なせる訳にはいかないのよ!!
 今はもう目の前なんだから!!!」

火影になって、皆に認められたい――
その夢はもう叶いかけています。
ナルトを夢半ばで逝かせはしない。
サクラも蘇生治療を必死で行います。
何者かが一方でサスケのもとに迫ります。
はたして――