661『失敗した世界』

初更新遅くなりましたm(_ _)m
2話更新です。
前話については非常に良い話だったので、
少しばかり熱く書いております。
お時間がありましたら是非読み返してみてください。
http://d.hatena.ne.jp/naruto_AG23/20140122/

1.失敗した世界(1)

九喇嘛を引き抜かれたナルト。
生命力がいかに強いナルトと言えど、
次第に意識が遠退き、
立っているのもままならないようです。
我愛羅はなんとか宙に放り出されたナルトを
砂の雲で包み込み、大きな衝撃を回避させます。

「守鶴!」

チャクラの鎖に囚われた尾獣たちは
順に外道魔像へ取り込まれてゆくのです。

「すまねェ…ビー!!」

もちろん八尾・牛鬼も。

「…頼んだぞ…風影のガキ!」

九喇嘛も。
いとも容易く、
マダラはやってのけます。

「まぁ…今の力ではこんなところか。」

とマダラ。

「数秒じゃあ無かったですねェ…?
 あ。でもオビトよりは早かったんで…」

と白ゼツ。
その絶対的すぎる力をもった主を
皮肉ってやりたくなったのでしょうか。

「フン…。
 本当にベラベラとよく喋る…
 お前らはオレの作った失敗作だな…。
 主の揚げ足ばかり取りおって…」

とマダラも軽くため息をつきます。

「黒ゼツは別名"毒舌"
 ボクら白ゼツは"饒舌"で通ってますから
 ハハァ〜♪」

と憎たらしいばかりに調子がよい者です。
そんな軽々しさも、
凄絶な力をもった今のマダラにとっては
もはや寛容に受け止めることができます。

「向こうの戦闘は大丈夫だろうな?」

向こうとはオビトを取り込んだ黒ゼツのこと。
白ゼツは絶対の自信をのぞかせるように頷きます。
そんな隙をついて二代目ホカゲ・扉間が
《飛雷神の術》から瞬間移動攻撃を仕掛けます。
しかししなやかにかわすと、
逆に扉間のクナイを奪い取り、
形勢を逆転させてしまいます。

2.失敗した世界(2)

「お前を…絶対死なせはしない!!
 死なせるか!!」

瀕死のナルトを担いで、
戦場から遠ざかる我愛羅
ナルトを死なせまいと懸命です。

「相手が勝利を確信したタイミングで…
 そこを狙うのがお前の常だった。
 ガキ共にやらせ、やはりお前は姑息な奴だ…。
 扉間。」

決定的な必殺のタイミング。
それを逆手に取っていたマダラ。

「お互いにな。」

と奇襲は失敗したものの
笑みをこぼす扉間。

「フフ…。だが天が味方したのはオレの方だ。
 忍一の速さを誇っていたお前がこのザマだ。」

とマダラは扉間にとって屈辱的なこの状況を
いま一度確認するかのように語りかけます。

「お前ら兄弟がかつての力を出し切れないのには
 理由がある…。
 偶然にしろ必然にしろ、
 オレに分があるのさ。」

穢土転生による影響か、
はたまた十尾による影響か――。
柱間や扉間は力を出し切れていないと
マダラは見抜いています。

「そして新しい"眼"も育っている…。
 こちら側に付くかは分からぬがな。」

とマダラ。
その新しい眼とはサスケのことです。
大鷹にを駆り、上空から様子を窺っています。

「待て! …うちはの少年…。
 お前に…術を渡す…。」

マダラを追いかけ、柱間のもとを去ろうとした折、
柱間に呼び止められます。

「術だと?」

怪訝そうにするサスケに、

「…そうだ…。
 マダラは…奴はオレの仙術チャクラを奪った。
 …その仙術チャクラに呼応して奴をしばる術だ。」

柱間は説明します。

「お前にオレの残りチャクラ全て渡す…。
 マダラを止めてくれ…。」

と柱間。

「なぜ、うちはのオレに。」

とサスケ。

「…お前は似ている…。
 マダラの…弟…、うちはイズナに。」

柱間はそう答えます。

「…それがどうした?
 奴を止めるのに何の関係がある?」

いくら似ているとはいえ、
そうそう情に絆される男ではないことは
柱間も分かっているはず。

「…マダラは…元来…優しい男だ。
 …弟想いで…願掛けをする信心深い奴だ。
 だからこそお前に助かるチャンスを与えた。
 お前なら力でなくマダラを止める事が
 出来るかもしれない。
 さあ…オレの前へ…。」

サスケはかくして柱間より力――
術を授かったのです。
事態は刻一刻とマダラに傾いています。

「正直な…。
 ずっとお前にこうしてやりたいと思っていた。
 お前は…イズナを殺めた男だ。」

とマダラ。
弟の仇とばかりに、黒き棒を扉間に突き刺します。

「動く死体にいくらやっても、
 虚しいだけだが…。」

と扉間。

「…お前は…生き返ってまで何を望む?
 ワシらの時代はとうに…終わっている…!」

その問いかけにマダラは
滾る想いを返します。

「柱間の成し得なかった国作りを
 代わってやるだけだ。
 だがこの世界は失敗した前任者柱間のものだ。
 死にかけの患者には荒療治が必要だ。」

とマダラ。
柱間が目指していたという理想――
しかしそれは残酷で冷淡にある現実にすぎない。
それを叩き壊して、再構築することで、
マダラの理想は為し得るのです。

「…無限月読とやらは…
 お前の考えか…?
 それが治療だってのか?」

扉間は"無限月読"という言葉を出します。

「そうだ。柱間の国作りは矛盾を抱えていた。
 人は平和を望む…
 しかしその一方で争いを望んでもいる。
 その2つを持ちえているのが人間だ。
 平和だけを望み、争いだけを摘み取ることは
 人でなくなるという事に他ならない。
 そしてその2つは隣り合わせにある。
 何かを守る為には何かを犠牲にしてしまう。
 本当の夢の世界以外はな。」

とマダラ。

「…確かに一理ある。
 だが、お前の出しゃばるべき夢じゃない。」

と扉間はマダラの理屈に異は唱えませんが、
しかし、絶対的な力を揮ってまで
傲慢に叶えるまでの夢でもないと言うが如く、
マダラに含み針を浴びせます。
須佐能乎で難なく防ぐマダラ。
その死角をついて、サスケが奇襲にかかります。
しかしお見通しです。

「…この世界は…言わば柱間の矛盾した世界だ。」

突如金縛りにあったように身体の自由が奪われたサスケ。

「何かを守る為には何かを犠牲にしてしまう。」

蜘蛛の巣にかかったようなサスケ。

「止めろマダラ!
 これ以上次の――」

扉間の声も届きません。

「たとえそれが友であろうと兄弟であろうと…
 我が子であろうと……。」

その凶刃がサスケの胸を貫きます。

「時間は充分やっただろう。
 残念だ。」

何もできなかったサスケ。
このまま死に絶えるだけでしょうか――