662『本当の終わり』

1.本当の終わり(1)

「マダラ…貴様という奴は!」

サスケを貫く刃――
同じうちは一族とは言え、
容赦のないその様に辟易とするように
扉間は吐き捨てます。

一方、その頃、黒ゼツと一体となり
"ぐるぐる"と化したオビト。
木遁によって千手観音を作り上げ、
忍たちを攻撃し始めます。

「くっ…術が発動しない…!」

とメイ。

「こんな輩に足止めされるとは……」

オオノキも万全でない現状を
歯がゆいように言います。
意外にぐるぐるはやるようです。

「ここから先へは簡単には
 行かせやしないって言っただろ。
 …それに…ボクの質問にマジメに
 答える奴は一人もいないって事?
 便意ってどんな感じか聞いてんだろ。
 まぁ…人を殺した時の…
 スッキリ感に似てるって思うんだけどね…。」

便意を感じない――
それは何かをおいしく食べ、排出するという
生きていると実感する"大切さ"を知らない証。
彼らのような疑似的に与えられた生命は、
たとえ人のように振る舞おうとも、
本質的には異なります。

「五つの属性全てを一度に…!」

角都の比ではありません。
ぐるぐるが立つのは木遁の千手観音の頭部。
その額部分には小型の顔像が5体あり、
それぞれが繰り出す1つ1つの術が
非常に強力であることが予想できます。

「分かっておる!」

プロフェッサー(教授)と呼ばれたヒルゼンが
対抗するように影分身しチャクラを練り始めます。

「一度に同じ術出して相殺させちゃうとはね…」

ヒルゼンも同じように五遁の力を使い、
ぐるぐるの術を相殺してしまいます。

「へへ…
 三代目様をなめんなってんだ!」

と得意げにキバが言います。

「(とは言っても皆さすがにチャクラが枯渇してやがる
  穢土転生の三代目しか対応できなくなってるって事だ。
  三代目が倒れたら…ここもヤバイ…
  マダラに向かうどころじゃない…
  こいつも何とかしないと…)」

冷静に現状を分析するシカマル。

「(正直…綱手様も私も……
  シズネ先輩も…
  …もう医療忍術は使えないと考えて戦った方がいい。)」

一方、サクラをはじめとすると医療忍者たちも
回復などのサポートをしながら
応戦しなくてはならないため疲弊の色が隠せません。

「(あまりにも大技での戦闘が長すぎる!
  …だが、ここへ来て立て直す時間はない。
  マダラはナルトの小僧に託すしか…)」

苦戦を強いられる状況――
思いの外、梃子摺りマダラどころではなくなっています。

「今がチャンスですよ。大蛇丸様!」

と催促する水月
大蛇丸たちは奇襲を狙っているようです。

「まだよ…」

逸る水月を制しながら、
大蛇丸は何かに気付いたようです。

「そ…そんなっ…
 うそっ…! これって…!」

そんな折、頭を抱え震えだす香燐。

「サスケに…
 何かあったのか?」

訊ねる重吾に香燐はただただ震えるのみです。

「やっぱり早めにやった方が
 よさそうね……」

事態を早めに打開した方が良いと
決断した大蛇丸
どのように動くのでしょうか――

2.本当の終わり(2)

一方、ナルトの同期達は
何か異変があったことを察知します。
我愛羅とともに連れてこられたナルト。

「ゆっくり話をしている暇は無い!
 火影。お前も一緒に来い!
 道中、ナルトを少しでも回復するんだ。」

と一刻も儘ならない状況を
その切迫した様相が表しています。

「私にもう医療ぬんじゅつを使うチャクラはない。
 サクラを連れて行け…
 サクラならまだ少しは」

綱手。満身創痍です。

「何でナルトが…こんな!?
 向こうで何があったの!?」

サクラもさっきまで生命力に溢れ
みんなを引っ張っていたナルトが
こんなに息も絶え絶えとなって、
驚きを隠すことができません。

「いいから来い!
 ぐずぐずするな!
 説明は後だ!」

ナルトがやられ、
意気消沈といった一同に喝を入れつつ、
我愛羅は九尾から託された何かを果たす為、
催促します。

「ナルトくんがいるの?」

ただならぬ様子――
そこから何かを感じとったヒナタ。
白眼で遠くを見渡します。
そこには、ぐったりとしながら、
サクラに抱え込まれるナルトの姿。

「(ナルトくんの心臓の鼓動が…
  どんどん弱く…!
  ナルトくん!!
  兄さん…ナルトくんを守って下さい!!)」

祈るような思いで、
一目散にナルトのもとへ向かうヒナタ。

「うずまき…ナルト…
 うずまき一族だから
 粘りはするだろうけど…
 もうその子に何をしても無理だよ。
 人柱力が尾獣を抜かれたら死ぬ…」

ぐるぐるのところに現れた白ゼツ。

「それは絶対のルールだからね。」

剽軽なまでに、軽い感じで頷くぐるぐる。

「死ね…るか…
 オレは…死ね…ない…」

イタチに託された想い――
その想いを理解し、
一族の再興を誰よりも願うサスケ。

「イタチの…生きた…意味を…
 こんな…ところで。」

遠退いていく意識の中で、
はじめて生へとしがみつこうとする
自らを感じるサスケ。
自分こそイタチの生きた証。
その想いの結晶――
それを理解したからこそです。

「(本当の里を…創る…。
  本当の影を示すまで…)
 オレは…死んでたまるか!!」

しかし想いとは裏腹に、
身体から力が抜けていきます。

「しっかりして!!
 負けないで!!
 アンタは強い!
 必ず…必ず助かる!!」

ナルトを助けるために、
チャクラが枯れ切るまで注ぎます。

「このままじゃ……
 このままじゃ、ナルトが…死――」

「…サ…サスケが…
 サスケが本当に…本当に…死――」

大切な存在に差し迫る最悪の事態。
必死に頭の中を振り払いながらも、
祈るような思いが虚しく木霊します。