※式について誤りが訂正されいくつか補足が追加されました。

617『忍び舞う者たち 其ノ弐』

1.忍び舞う者たち 其ノ弐

「無駄だよ、リー…。
 努力したところでお前にオレは倒せない…。
 これは決まっていることだ。」

最初は相手にすらされなかった――

「リー。いつかお前の剛拳とオレの柔拳…、
 どちらの拳が上か…、本気で闘ってやる…」

そして努力を重ね、
ようやくライバルとして認められた憧れの存在。
しかし彼は皆に意志を託して、散っていきました。
悲しみにとらわれまいと、
前を向き闘志を漲らせようとするリーの肩に、
そっと手を添えるナルト。
九尾のチャクラがリーを包み込みます。

「(前回よりもはるかに強く…多い…。)」

九尾のチャクラをナルトから受け取ったカカシは、
先ほどとは違って、もっと馴染むような、
それでいて力が漲るようなものを感じます。

「…さっき聞いた一連の戦闘の情報で確かめたいことがある…。
 カカシ…。お前は神威で時空間を行き来した上、
 八尾までほぼまるごと出し入れできたのは…
 九尾のチャクラをナルトからもらったおかげだと言ったな。」

シカクとのやりとりを思い返すカカシ。
《神威》を使って出し入れできる空間や量は、
どうやら術者のチャクラ量に比例するようです。
すなわち一回の《神威》が対象とする空間全体をV
術者が時間あたりに消費するチャクラ量をq(x,y,z,t)
トータルで飛ばすことができるチャクラ量をQ、術の効果時間\tau
術の効率として表される係数をkとすれば、すなわち、


Q = \int_{0}^{\qquad \qquad \qquad \tau} k\( \int \int \int_{V} q(x,y,z,t) dxdydz\)dt

と表され、このQこそ術の威力を推し量るパラメータとなるわけです。

「ハイ…正確に言えば九尾に直接チャクラをもらいました。」

とカカシ。

「お前の"できたのは"という言い回しからみて…、
 九尾のチャクラ無しでの神威は有りの時とどれほど違うと感じた?
 カンタンでいい説明してくれ。」

とのシカクに対して、カカシは説明します。

「…おそらく…3倍以上の力です…。
 それまで神威でとばせる回数も大きさも、
 大したことはなかったですから…。」

さて、九尾のチャクラを得て、
その術の威力を3倍高めた3Qになったということが分かりましたが、
上述の式から何が言えるかというと、
九尾チャクラをもらう前に比べて、

    • 3倍のチャクラ量をもつ空間を対象とできる


3Q = \int_{0}^{\qquad \qquad \qquad \tau} k \( 3\int \int \int_{V} q(x,y,z,t) dxdydz\)dt

    • 術の効率が3倍になった


3Q = \int_{0}^{\qquad \qquad \qquad \tau} 3k\( \int \int \int_{V} q(x,y,z,t) dxdydz\)dt

    • 術が完了する時間を延長できるようになった{\tau}_l > \tau


3Q = \int_{0}^{\qquad \qquad \qquad {\tau}_l} k\( \int \int \int_{V} q(x,y,z,t) dxdydz\)dt

    • 術が及ぼせる空間領域を拡大できる V_l>V


3Q = \int_{0}^{\qquad \qquad \qquad {\tau}} k\( \int \int \int_{V_l} q(x,y,z,t) dxdydz\)dt

のいずれかの形を取るか、
これらを少し弱めた効果を組み合わせたものであることが分かります。
それでもこの3Qが八尾の巨大なチャクラ量に匹敵することを考えると、
パワーアップ前のカカシでも、
八尾の全チャクラの3分の1程度は1回に飛ばすことができるのです。
言い換えればチャクラ量さえ、そこまで密でなければ、
大きな大きな空間を対象とすることもできていたといえます。
八尾の大きさ(サイズやチャクラ量を含めて)を考えると、
《神威》の強力さというか、
万華鏡写輪眼の破格の強さを実感できます。

「(…フン。貴様の思い通りになったな、四代目火影…。
  今、ワシのチャクラとリンクできるのはクシナの血を引き、
  人柱力として長年付き添うことになったナルトだけだ…。
  そしてナルトはワシのチャクラを他の忍共一人一人に会うよう
  感知し変化させ渡すことができるほど器用に成長した…。
  まあ…ワシ自身もナルトを介せば誰にでもチャクラを渡せる。
  ミナト…てめーがナルトに、
  自分のチャクラを組み込んで渡してたやり方と同じだ。)」

すっかりナルトの保護者として考え方も定着した九尾・九喇嘛。
ミナト、クシナ夫妻が残したかった力の形。
最初は九尾も自分が利用されることが癪でしたが、
いまはナルトを認め、
素直に力を貸しても良いと思えるようになりました。

「(こいつはもう…とっくにてめーらを超えてるぜ。
  リンクするチャクラ量も渡すチャクラ量も規模が違う!
  クシナ、ミナト…ざまぁねーな!
  てめーらナルトのガキに負けてんぜ。クク…。
  まぁ…これが、貴様らがナルトに繋げたかった力なんだろーがな。)」

ナルトは九尾のチャクラの特性を理解し、
抗原抗体反応のように特異的に結びつく
各自のチャクラレセプターに合わせて、
抗原側である九尾のチャクラを変化させることで、
より強固なチャクラ結合を可能としたようです。
これは九尾曰く、自分を封じたミナト、クシナに
思わず報告したくなるくらい、器用なわざである模様。
ナルトから力を受け取りパワーアップを果たした忍連合の忍たち。
八尾の《尾獣玉》、ミフネら侍の強烈な斬撃《一閃》を皮切りに、
八卦空壁掌》、《風遁・大掛け網》と攻めたてます。

「フン…。一度掛けてしまうと死なねば消えぬ呪印…。
 日向の宗家と分家が生んできた忍の呪い……。
 カゴの中で死を待つだけの存在。
 ……いい暗示だ。お前らはさっきの犬死にしたガキと同じだ。」

必死の猛攻も十尾を留めるまで。
まだ余裕の表情を崩さないオビトとマダラの牙城に、
ナルトたちは攻め入ります。

「ネジの……、
 ネジの意志は、まだ死んじゃいねーんだよ!!!」

忍連合軍の忍たちがナルトを筆頭に群をなして、
まるで空を滑空する大きな鷹や鷲を思わせる進撃。
十尾の尾を何本も裂き、ついにオビトやマダラの目前へ。
彼らは《影真似の術》により死に体となっています。
ここが最大の機会。
ナルトは渾身の《風遁・螺旋手裏剣》を投げようとしますが、
大きな負荷がかかって肩を脱臼してしまいます。
しかしそれを絶妙なタイミングで、
柔拳を使って応用治療したヒナタの助けもあり、
なんとかオビトへ螺旋手裏剣を飛ばすことができました。
一方マダラにはリーの渾身の蹴りが入ります。
まさかここまで攻め込まれるとは思っていなかったと、
想定外のことに今までにない唖然とした表情を浮かべるマダラ。
一方でオビトは《神威》でなんとか難を逃れたものの、
十尾とのコネクションは《風遁・螺旋手裏剣》で切断されます。

「お前と違ってオレは、
 繋がってたもんを…切りたかねェーし、
 切られたくもねェんだよ。」

とナルト。
いよいよ大詰めです。