11月に入り少し忙しい期間が続いています。
遅れ遅れになってますが、記事は更新しますので、
よろしくお願い致します。m(_ _)m

609『終わり』

1.終わり(1)

「…今のナルトを守る?」

力なく項垂れるように、地面に膝をつくカカシ。
それをオビトは上から見下ろすように見ます。

「オレも…同じくな…」

ぐったりとしながらも、ガイも負けじと言い張ります。

「(限界のくせしやがって…
  木ノ葉はどいつも強がりばっかだな。)」

そんな彼らの様子を見て、八尾も呆れ顔です。
そんな折、不意に八尾を縛り付けていた
木遁の縛りが弱まったのを敏感に察知し、
打ち破った八尾。
初代火影と同じような力を持つ木遁の封印術。
八尾はナルトに注意を促します。

「写輪眼頼みの雷切……。
 ずいぶん左目を使いこなすようになったな。
 万華鏡まで…。
 だが…もう一度時空間から戻ってこれるか…?
 その状態で……。」

とオビト。

「クズカゴに入ってろカカシ。」

ナルトを木遁で牽制し、
カカシを射程圏内に入れます。
そして《神威》によって、
別空間へ送ろうとしますが――

「カカシ先生も……
 オレと一緒だァ!!!」

クズ扱いするオビトの顔面に、
頭突きをぶちかますナルト。
想定外の勢いに、
思わずオビトも仰け反り、
いったん距離を取らされます。

「ヘッ!
 今度はハッキリ分かんぜ…。
 てめーの苦しがる面がよォ…!」

初め"誰でもない"仮面の男として、
ナルトたちの前へ姿を見せたオビト。
しかし今はオビトもまた人間として、
苦悶の表情を浮かべる様子が筒抜けです。
いかに現実から目を逸らそうが、
現実は決して放っておかない。
都合の良い夢の中に逃れようとしていた男の素顔にも、
いまある"現実"を如実に感じさせる"痛み"。

「そんなセリフは隣の奴を見てから言ったらどうだ…」

強がるかのようなオビト。
肩で息をし、カカシはまさに苦悶の表情を浮かべています。

「オビトってのはあっちにまかせんだ!
 そのスキにこっちもやるぜ…!」

八尾ともう一方のナルトは火炎陣に包まれた
外道魔像――十尾に狙いを澄ましています。

2.終わり(2)

「(…確かにカカシ先生をなんとかしねーと…
  写輪眼の使い過ぎでバッテバテになってるし…
  もう吸い込まれたら…)」

オビトの言うように、
確かにカカシを気遣わないといけません。
もしカカシが吸い込まれれば、
《神威》によって出てくる体力は残っておらず、
亜空間に幽閉されてしまうでしょう。

「ナルト…少し代われ。
 ここはワシにやらせろ…」

と、行き詰まりを感じたナルトと
九尾が強引に入れ代わります。

「おいカカシのガキ…手ェ出せ…。
 いいから早く。手ェ出せ!!」

そういうとカカシを持ち上げ、
オビトへ投げつけるのです。
当然、オビトはこれを《神威》で飛ばします。

「うわぁぁぁ!!
 九喇嘛、何て事してんだよォ〜〜!!」

と焦りまくるナルトに対して、

「これで気兼ねなくやれる。
 後はまかせたぞ。ナルト。」

とまるで悪戯を終えたあとの狐のような九尾。
向かってくるオビトに半ばやけくそとなって、
拳状にした九尾のチャクラをぶつけます。
当然、それを《神威》によって次元をずらして
回避しようとしたオビト。
その刹那、何かの異変を感じます。

「能力のネタが分かってる分、
 注意してれば反撃できる…。
 さらにもう一発。」

なんと空間転移してきたオビトを、
その先の空間で待ち構えていたカカシが迎撃。
空間をはさんだ挟み撃ちです。

「ああ…確かに苦しそうな面だな…。
 オビト。」

必殺の瞬間をあえて拳に任せたのは、
オビトという友を想うカカシの気持ちがそうさせたのでしょう。
空間転移もままならず、ダメージを負ったオビトを見て、

「向こうのカカシあやったんだ。
 お前とワシの違いはな…
 チャクラの受け渡しが自由にできるってことだ。
 また後でお前にもコツを教えてやる。」

九尾がいまの状況を説明します。
カカシを放り投げたときに、
カカシに腕伝いにチャクラを供給したようです。
それはもちろん《神威》を放つのに十分なチャクラ。

「九尾に礼を言っといてくれ。」

《神威》によって再びナルトの前に現れたカカシは言います。

「復活する前にチリヂリに吹き飛ばす!
 ありったけ溜めろ!!」

ありったけのチャクラで巨大な尾獣玉をつくる八尾ともう一つのナルト(九尾化)。

「オウ! もう行けっぜ。
 ビーのおっちゃんに八っつぁん!!」

合図を返すナルト。

「よし!! 撃て!!
 これで終わりだあぁ!!」

辺りを一瞬にして消し飛ばすのに十分すぎるチャクラの塊を、
十尾に向かって撃ち放ちます。

「よっしゃあ――!!」

八尾と九尾の力を合わせた超威力の尾獣玉。
さすがに十尾の素体と言えど、
無事ではないでしょう。
歓声をあげるナルトとビーですが――

「終わった…のか…?」

カカシが危惧する通り、
それは束の間の勝利でした。

「ああ…。この世界がな。」

勝利を確信したようにオビトは言います。

「さてと…始めるか。」

とマダラ。
猛々しい雄たけびとともに、
そこには十本の尾をもった怪物が!
とうとう十尾が覚醒してしまったのです。