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1.頭
「(作戦通りィ!!
十尾の頭になってるこいつらを倒ーす!!)」
《風遁・螺旋手裏剣》をオビトやマダラめがけて投げ放つナルト。
「十尾ではなく今度こそオレ達が狙いか…。
まあ…敵の頭を叩くのは、基本だが…」
マダラもその見え見えの狙いは理解しています。
どちらの技術が、力が勝るか劣るか――
サクラの医療忍術で持続性、威力を高めたダルイの《嵐遁・励挫鎖荷素》、
ガイ、リーの《八門遁甲・第五杜門》を開放した攻撃。
息を吐かせぬ猛攻――
十尾を押さえ込んだと考えた連合軍は、
一気呵成で攻め続けます。
ですが、十尾はそれしきでは止まりません。
異様な変貌を遂げ、
目、耳、口が独立するように大きくなります。
「見ろ。感知水球が……
これじゃ、まるで一つの小さな星だ…
こんなのは…ありえない……」
巨大すぎるチャクラ。
その規模は星に匹敵するほど。
本部も焦燥感を拭えません。
「十尾を我々が止めたんじゃなく、
アレが変化する為に、
力を溜めて動かなくなっただけだったのか?」
シカクも十尾のメタモルフォーゼは予想していなかったでしょう。
しかし、戦場では事前に予測した事態で回らないことは常。
この状況で最善の策を練りださないといけません。
「ビビってるヒマがあるならチャクラを練っておけ!
本部からの作戦を受けてすぐ動ける様に準備しろ!!」
と現場から黄ツチ。
刻一刻悪化していく事態。
甚大な被害。医療班の救助も間に合いません。
「十尾の動きを止めるのは絶対だ…!
でなければソレを操る頭を狙うことなどできない…
だがどうやって止める…?
止めるのが得意なオレ達一族の術も…、
アレが相手ではチャクラを消費する割に効果はほぼ…。
…!」
司令部の急務。それは十尾を止める効果的な策を練り伝令すること。
十尾を止めない事には、事態を好転させるなどできません。
シカクは何やら思いつきます。
「カカシ。オレだ。
さっき聞いた一連の戦場の情報で確かめたいことがある…。」
いのいちを使ってカカシに直接指令を送ります。
「そろそろ十尾のコントロールが難しくなってくる…。
柱間細胞を使って繋がりを強くしておけ。」
とマダラ。
オビトとともに十尾の制御を行っているのでしょう。
「…この状態の十尾の力か…
確かめてみたくはないか…?
まずは…」
第二形態へ変化した十尾。
その未曾有の力を試したいかのようなマダラ。
「ああ…奴らに教えてやるのさ…。
絶望をな。」
尾獣玉。
しかし、それは八尾や九尾のもので、
人間の小ささを感じるようなレベルに比して、
それよりもまた遥かに規模が違うもの――です。
「だめだ。神威じゃ間に合わない!
土遁で足場を上へ!!」
そして十尾が尾獣玉を形成するそれは、
八尾や九尾なんか比にならないほど速いもの。
《神威》で空間転移させるほどの暇もありません。
黄ツチの土遁で十尾の足場を隆起させ、
とりあえずの狙いを外しますが、
大きな轟音とともに、遥か遠くの大地が爆ぜます。
「あんな距離まで…!!
…前の尾獣達と比べ物にならない…
なんて威力だ…!!」
閃光が辺り一帯を包み続けますが、
その光の柱は山々よりも遥かに高く聳え立ちます。
「この程度でフラつくとは…
コントロールが完全ではないな…
次だ。」
マダラやオビトも、
その衝撃の反動に思わず姿勢を崩してしまうほどです。
二発目――
また遠くの地域にそれが被弾します。
しかし、そこは人里でした。
「何てことだ…
あんな遠くの街が一瞬で…!」
天から降り注ぐものが世界を滅ぼす――
とある作品から借りてきた言葉ですが、
その言葉がぴたりと当てはまる状況です。
星の生命体をすべて根絶しかねない、
その威力は凄絶です。
「さっきからおかしいぞ!
遠くばかりを狙っているようだ!」
戦場を感知しながら、
青がもらします。
「全ての街…、人が射程内ってことだ…。」
シカクはマダラやオビトの狙いに気づいています。
「なら避難した大名達や里を守ってる皆…
それに国の人々も安全じゃないってことか!?」
といのいち。
「戦場では忍達がその皆を守る為に戦っている…
それを無くそうという訳だ。」
絶望を与えてやるといったオビト。
守ろうとする本当に大切なものを、
圧倒的な力で奪う事で、
絶望を、無力感を、知らしめるつもりなのです。
「こ…これは…」
いつになく、ただ事じゃない様子の青。
「……冷静に聞いてくれ…」
と青が言葉を詰まらせます。
「ここか…」
全てを察したように頷くシカク。
狙いは忍連合軍本部。
とっくにマダラやオビトに本部の場所は割れていたのです。
「やるべきことを最後までやるだけだ。
十尾を止める策がある…。
最後の仕事だ。戦場の皆と繋げてくれ。」
避難している時間など無い。
この一瞬に、シカクは、自分の責務を果たすべく、
いのいちを通じて忍の皆へ、
本当に最後の起死回生の一石を投じるのです。
父親の死が確実である事に、
歯を噛み締め涙を流すシカマル、いの。
しかし親の想いはしっかりと受け継ぎ、
前を見据えます。
「これで連合の頭はつぶした。
まら…基本だな…」
と憎たらしいほど綽々としたマダラたちの様子。
ここから連合軍の巻き返しが始まることを期待します。