今回はコマ絵だけで物語をつづる
ちょっと変わった形式となっています。
ついにトビの仮面が割れて、
名を捨てた人物の想い出が淡々とつづられます。

トビの面が割れたことで、
この『戦争編』も終局に突入したと思われます。
終局の副題は"光闇<こうあん>"としました。
すべての始まりの刻<とき>に光と闇が分かれました。
決して交わることなく、
それぞれがそれぞれの思い(光陰=月日)を重ね、
交わるはずのなかったものが交わったとき、
また一つ、運命の歯車が回っていくといった感じです。

599『うちはオビト』

1.うちはオビト(1)

  • episode 1

アカデミー入学の日。
遅刻を気にして走る幼きうちはオビト。
この頃からゴーグルはつけています。
入学式の会場に到着したときは、
すべてが終わった後。
これから忍になろうとする同期の仲間たちが、
忍という夢に向かって、目を輝かせ、
口々に未来を語り合っているようなそんな雰囲気。
アスマ、紅だけでなく、ゲンマ、イズモにコテツ、
そしてエビス、ガイ、カカシといった面々が、
遅れてやってきたうちはの忍を見ます。
そこにすっと駆け寄ってくる女の子リン。
にっこり微笑みながらオビトに手渡したのは
忍者アカデミー入学書類。
オビトは無事入学を果たすのです。

  • episode 2a

彼らは成長して、やがて中忍試験を迎えます。
各々が下忍となって切磋琢磨としてきた力をぶつけ合います。
第二次試験。班対抗戦の課題。
カカシ、オビト、リンが一つの班となります。
他班にはガイ、エビス、ゲンマ班。イビキ、ハヤテ、トカラ班。
次代を担う木ノ葉の忍たちの名前がトーナメント表に見受けられます。
道中重い荷物をもったおばあちゃんの荷物を
木ノ葉病院まで運んであげたオビト。(逃げ口上ではありません。)
お礼に飴玉をもらい、縁起を担ぐようにそれを口に含んで、
悠々と試験会場に到着しました。
当然、いつものように遅刻。
カカシから糾弾されますが、
オビトは意に介していない様子です。
教え子たちを見守る彼らの先生ミナトと三代目火影
オビトの班は、ガイ、エビス、ゲンマの班との対抗戦です。
覚えたての火遁の術を繰り出そうとしたのですが、
飴玉がつかえてうまくできない様子のオビト。
その隙をつかれガイに蹴りを喰らいます。
戦いの後――
恥ずかしそうにリンに手当をしてもらうオビト。
エリートである"うちは"の紋章を背負っている自分。
絶対強くなるとリンの前で豪語するように、
背中を見せつけます。
火影たちの顔岩を背景に夢を語るように、
リンと談笑するオビトなのです。

少し脱線しますが、
このときすでにミナトの顔岩があります。
さてこの中忍試験を見守るミナトですが、
ふつうの上忍ベストを着ており、
猿飛ヒルゼンが火影の帽子を被っている姿が描かれています。
近い将来ミナトが四代目火影となることが確約されており、
顔岩だけ先に造られた(あるいは施工途中)という状況が窺えます。

  • episode 2B

修練を積んで来る中忍第三次試験に備えるオビト。
《火遁・豪火球の術》も操れるようになり、
また手裏剣術も見違えるように上達しました。
さて、その時がやってきます。
個人戦。オビトの相手は蹴りをもらった因縁の相手ガイ。
オビトはあの時の借りを返さんと意気込みますが、
ガイはその因縁自体を覚えていない様子です。
いざ戦いの時。結果はあっさり負けてしまいます。
左眼あたりに打撲を負ったオビトは、
ふてくされるように自分の次に行われる試合を観戦します。
ふと隣にいるリンを見やると、
何やらただならぬ表情を浮かべながら、
試合を観戦しています。
その視線の先にいるのはカカシ。
もう試合行程は幾程か進んでいたと思われます。
上位決定戦。
カカシとガイの戦いだったのです。
うっとりと見入るようなその視線に、
オビトは自分の事を見てもらえていない悲壮感と残念さ、
そしてその視線の先にある一人の男に嫉妬感と羨望を
いつものことですが、改めて抱くのです。
この試験でカカシは同期の中でいち早く中忍となるのです。

  • episode 3

オビトは修練に修練を重ねます。
カカシに負けないために。
リンを振り向かせるために。
必死に努力を重ねます。
月日は流れ、季節は桜の花が舞い散る頃。
めでたく中忍となることができました。
そんな折、リンからあとである場所に来るよう耳打ちされます。
それがオビトの中の何かを勘違いさせてしまいます。
今日こそはリンに想いを伝えよう。
花束を用意して、来るだろう彼女に想いを馳せながら、
桜の木の下で待ち惚けます。
待っていたオビトに謝りつつも、遅れてきたリン。
そんな彼女にいよいよ気持ちを固めて
想いを告げようとしたところ、
他の同期の忍たちも現れます。
リンが彼らを呼び寄せたのは、カカシのため。
『同期メンバーでカカシ上忍就任を祝うプレゼント企画(極秘任務)』
と書かれた紙を渡され、オビトはがっかりしたように、
しかし現実はこんなものか、といった感じでその紙を見やるのです。
二人の気持ちがすれ違うのを笑うように、
春風に舞う花びらが二人の間を無数に舞っては落ちます。

2.うちはオビト(2)

そしてオビトの思い出はやがて、
カカシの思い出につながる形で収束していきます。
カカシが上忍祝いとしてもらったプレゼント。
ミナトの飛雷神の印が書かれたクナイ。
リンの想いが込められた医療用パック。
神無毘橋での戦い――
写輪眼の獲得。戦友オビトとの絶望的な別れ。
片目となってカカシを見守っていたオビト。
それが約束だったから――。
同時にオビトの眼で、この世界を見渡し生き抜いて、
そして大切なものを守り抜いてきたカカシ。
その眼がこの世にあるべくもない一人の男の姿を見るのです。

「お前は…オビト…?」

絞り出すようにカカシから出てきた言葉。
醜くひしゃげた顔の右側。
かろうじてオビトの雰囲気を保ちつつも、
カカシの右眼と同じ写輪眼があります。