554 『螺旋手裏剣の限界』

.螺旋手裏剣の限界

三代目雷影にむかって螺旋手裏剣を飛ばさずに、
九尾チャクラの手をのばして当てにいくナルト。

「…この感じ、風遁だな!
 螺旋丸の進化版か?
 この術なら当たればいける!!」

テマリはナルトの風遁・螺旋手裏剣を初めて見るようですが、
同じ風遁使いであるからか、
当たればその威力は一溜まりもないであろうことを予測します。

「ダメだ。その程度では!
 あの雷の衣で…」

と忠告を促すドダイ。
雷の衣――自ら雷遁を纏うことで、
攻撃から回避まで、反応速度を極限までに高めています。

「分かってる!!
 雷影を名乗るオッサン達が速いってのは!」

ナルトもそのことは四代目雷影・エーとの戦いで、
どうやら熟知している様子。
あえて一撃目を飛ばさないで、避けさせ、
裏側から螺旋手裏剣を投げつけるのです。

「(ハナからこれを狙って………!)」

これならヒットする――
一同の期待とあざ笑うかのように、
華麗な超反応で螺旋手裏剣をかわす三代目雷影。
しかしナルトもこれで終わったわけではありません。

「陽動かけなきゃやっぱり当たりもしない!」

と先ほどまで、戦っていたテマリ。
広範囲かつ強力な術、仲間との連携なしでは、
三代目雷影に当てることはままならなかった――
そんなことが推察されます。

「(OK! 返ってきたところを…)」

かわされた螺旋手裏剣を九尾チャクラの手で上手く受け取り、
ちょうどかわした三代目雷影の死角となるところに
素早く潜り込むようにして背後をとります。

「この距離なら――当たる!!」

螺旋手裏剣はクリーンヒット。
辺りを巨大な球状の竜巻が呑み込みます。

「(なって威力の風遁だ!! これなら…!!)
 今のうちだ!! 封印班急げ!!」

この絶好の好機を逃すわけにはいきません。
テマリはすぐさま封印を準備、実行するように、
強風が吹き荒れる中、忍たちを連携させます。
しかし螺旋手裏剣など何事もなかったかのように
三代目雷影は起き上がり、封印の布を切り裂きます。

「さっきから雷影様の目つきが変わった…。
 …すでに完全に操られてる…。
 !! アレは!?」

何者かに都合よく操られている――
雷影が掌を水平に伸ばし抜き手の構えを見せると、
ドダイは土遁を使って防壁を築くように促し、
自身は血継限界、熔遁・護謨壁<ゴムへき>でそれを補強。
ゴム(の中でも天然ゴム)はゴムノキなどの樹液を
凝固させてできる弾力に富む樹脂(高分子化合物)。
したがってどちらかといえば木遁に分類されるような気がしますが、
熔遁が土遁と火遁の組み合わせであれば、
この護謨壁は、土壌や岩石中の有機物、鉱物を組み合わせて
まさに人工的なゴム状樹脂(=合成樹脂)を作り上げるといった類の術、
と考えた方が近いでしょうか。
こうして強固な壁が築かれますが、
と同時にゴゴゴと何かが崩れる大きな音が響き渡ります

「三代目最強忍術!! 地獄突き四本貫手だ!
 指先に雷チャクラをためて突く……!
 突き技は雷遁と相性がいい。」

抜き手の構え――それは三代目雷影の最強の忍術の構えでもありました。
サスケの千鳥やカカシの雷切をナルトは思い浮かべます。

「皆、今のうちにできるだけ離れろ!!」

と忠告するドダイ。
しかし功を焦る忍たちは命令を無視して、
待ち伏せ攻撃を仕掛けにいきます。

「よせ!! 雲の忍の言う事を聞け!!」

とテマリの警告が聞こえるか聞こえないかのうちに、
護謨壁も破壊され、待ち伏せにいった忍たちは次々に屠られます。
その鬼神の如き様に息を呑む一同。
ドダイは抜き手の指の数が三本になっているのに気がつきます。

「あの地獄突きは指の数を減らしていくほど、
 力が一点に集中していき、三代目最強の矛となる。
 そしてどんな術にも耐える強靭な肉体が最強の盾となる。」

攻守ともに綻びが見当たらない三代目雷影。

「生身で尾獣とやり合う事のできた、
 ただ一人の忍とも言われている。」

とも聞いて、雷影の凄さに圧倒されるナルト。
その時、ふと雷影の胸に大きな傷跡があることに目が留まります。

「…三代目は皆を逃がし、
 たった一人で八尾の暴走を止められた事があった。
 その時にあのをケガをされたのだ…。」

螺旋手裏剣ですら動じない最強の肉体――

「あの傷については一切を語られていない。
 "生涯の恥"だと誰にも理由は言われなかった…
 四代目も知らぬ事だ。」

その傷の詳細は定かでないと語るドダイですが、
八尾との戦いでくっきりと残る傷跡を見て、ナルトは閃きます。
ついに尾獣玉を実践で使うときが来たようです。