555 『矛盾』

連休で少し羽をのばしてきました。
だいぶ遅くなってしまいましたが、
555話『矛盾』についての記事です。

1.矛盾(1)

「な…なんだこの感じは?
 またナルトの術か何かか?」

尾獣玉のただならぬ気配に、テマリを含め一同が慄きます。

「(こ…これは、八尾と同じ尾獣玉!!
  これほど重いチャクラ玉を人型のままで!
  そんな事が…)」

ドダイは尾獣玉について多少知っているようです。
八尾と戦ったことがあるのでしょう。
万全とは言いがたいナルトのコンディション。
チャクラコントロールが乱れ、
尾獣玉は破裂して跡形も無くなってしまいます。

「(…できるハズがない…!!
  やはりな…)」

ナルトの九尾モードも解かれ、
九尾チャクラによってナルトを包んでいた衣もなくなります。
何が起きたか理解できていない状況ですが、
部下から多くの負傷者が出たことを聞き、
医療部隊へまわすようにテマリは迅速に指示します。

「ゴムのオッチャン!
 今すぐビーのオッチャンと八尾に話がしてーんだけど、
 連絡ってどうすりゃいい!?」

手詰まりといった様子のナルトは、
八尾に連絡をとりたい様子です。

「ここの連絡班を通して、
 情報部隊隊長の山中いのいちに、
 ビーと中継してもらえばいい!
 ……よかったな。オレも連絡班の忍だ。」

奇遇にも連絡班だったドダイ。
連絡の手立てが取れて喜ぶナルトですが、
その隙を三代目雷影は逃しません。

「(三本貫手を引いた…!
  パンチで気絶を狙う気だな…!)」

指を閉じて拳に切り替えた三代目雷影。
彼を操る術者の意図を瞬時に把握したドダイは、
それを逆手にとる妙案をやってのけます。
得意の熔遁でゴム玉を築き、
ナルトをその中に包み込んだように見せかけます。
三代目雷影の拳打をもらったゴム玉は、
大きく彼方へ跳ね飛んでいき、
雷影もそれを追って彼方へ去っていきます。
ちょうどそのときいのいちからの交信が取れたようです。

「(ゴムボールで囲ったように見せかけて、
  後ろからオレを引き抜いて岩陰に隠す…。
  ゴムのオッチャンも早技だってばよ!)」

一部始終を体験したナルトもドダイの判断力と
機転を利かせた忍術に素直に感嘆する様子です。

「ゴムのオッチャン。ありがとう!
 これでビーのオッチャンと会話の時間が取れた!」

とナルト。

「と言っても、すぐに気づかれる!
 それほど時間の猶予は無いと思え!!」

三代目雷影がダミーに気がつくまでにそれほど時間はかからないでしょう。
その少ない時間の中で、反撃の手立てを整えなければなりません。
もたついている暇はないのです。

2.矛盾(2)

「ナルト。ビー殿と八尾二人に話があるそうだが、
 近くにはいないのか?
 行動を共にしているハズだろ!?」

と不審がるいのいち。
本部にはナルトとビーが別行動をとっていることは
まだ伝わっていないのでしょう。

「今は近くにいねーし…、それに…って、
 そんな事より早く連絡をつけてくれってばよ!
 時間がねーんだ!」

事の成り行きを話すのは後。
いまは目の前の敵を倒すためにどうしても情報が必要です。
その頃。原野で用を足している途中のビー。

「ナルトは先に行っちまったぞ!!
 さっさと用を済ませろ!!
 いつまでやってんだ!!」

緊張感のない様子に苛立ってビーにあたります。

「尿意は己の意志とは相違♪」

――と用を足しているときも冴えない駄洒落をかましていると、
急にナルトの声がします。

「ビーのオッチャン。ナルトだ!
 八尾に直接聞きたいことがあんだ…。
 八尾と替わってくれってばよ!!」

しかしビーは乗り気じゃなさそうに返します。

「今は生理現象。話しかけられると集中力減少♪
 なんでこんな時に交渉…。」

反対に手持ち無沙汰といった感じだった八尾は、
すぐにナルトに取り合ってくれます。

「替わったぞ、ナルト!
 どうした? 慌ててるようだが!?」

「八尾ってば、三代目雷影と
 やり合った事があんだよな!?」

というナルトの問いかけに、

「ああ…ずっと昔にな。
 打たれ強く頑丈な人間だったぞ、ありゃ!
 …一本貫手って技で尾を全部切られちまった事もある…。」

かつての三代目雷影との戦いを思い浮かべながら、
八尾は答えます。

「どうやって、じいちゃん雷影の胸に傷を負わせたんだ!?」

すぐに核心に迫るナルト。
この情報が最も肝要なのです。

「え!? …オレの尾獣玉じゃなかったかな?
 お互い技を構えたまま力尽きて前のめりに倒れたからな…。
 あんまりよく覚えてねーな…。」

と首を傾げるように話す様子の八尾ですが、
少し考えたあと何か閃いた様子のナルトは、

「ありがとうだってばよ八尾!!」

交信を終えると、そう言って仙人モードになります。
やってみたい事があると言って、ドダイを退かせたナルト。
螺旋丸を練りはじめます。

「(何をする気か知らないが、
  そいつはただの螺旋丸だぞ…!!
  それでいけるのか!?)」

テマリの不安を煽るように、
凄まじい速さで一本貫手を構え、
突進してくる三代目雷影。
カブトはナルトの四肢をもいで半殺しにして連れ帰るつもりです。

「(仙人モードの蛙組み手。
  …こっちの方が危険感知は広いし早い!
  だから突きをギリギリでかわして…
  ちゃんと腕を狙える!!」

交差する瞬間、雷影の一本貫手をかわしたナルトは、
すばやく雷影の貫手側、すなわち左側の懐にもぐりこみます。
そして雷影の肘へ螺旋丸を当て、
その最強の矛を跳ね返すように誘導します。

「思った通りだってばよ!!」

その威力は凄まじく、
雷の衣を纏った雷影の頑丈な体躯を一気に貫きます。

「(そうか…。あの胸の傷は……そういう事だったのか…!)」

ドダイは胸の傷を恥じる三代目雷影の事情が飲み込めたようです。

「八尾が三代目雷影と戦った時、
 技を構えたまま前のめりに倒れたって言ったから…、
 たぶんその時に自分の技が
 胸に当たってついた傷だと思ったんだ。
 自分でつけた傷だから恥だったってー事。」

ナルトは我武者羅、遮二無二、ごり押しというスタイルだけでなく、
相手の強さを利用したスマートな戦い方もできるようになりました。
胸の傷――それだけの糸口から、
相手の弱点を見だし、見事そこを突いて倒したのです。

「最強の盾と最強の矛を持つ忍…。
 確かに矛盾している。
 三代目は矛の方が強かったって事か…。」

ドダイも納得します。

「うん! たぶん…忍最強の盾を持ってんのは、
 我愛羅だってばよ!!」

とナルトは言います。
一方の我愛羅ですが、二代目水影を相手に苦戦している様子。
ナルトに"最強の盾"と言わしめる実力を出せていないようです。