549 『イタチの問い』

1.イタチの問い(1)

「久しぶりに会った事になるんだろうが…、
 死んでたんですぐな気もするな。
 …少し変わったなナルト。」

死者の世界から蘇り、再会したナルトを見て、
長門は言います。

「ああ…コレか…!
 これってば九尾のチャクラをコントロールした
 チャクラモードってやつだってばよ!」

焔のようにあるいは電光のように揺らめくただならぬチャクラ。
九尾のチャクラを制御した証です。

「なるほど……。
 だから変わって見えたのか……、顔つきが。」

"信じること"を貫いてきたナルト。
自信に溢れ、成長したナルトを見て長門は微笑みます。

「九尾の力をコントロールしたというのか…
 ここまで成長するとはな…。」

とイタチも驚嘆します。

「オレの弟弟子だからな…。
 思った通りだ。」

長門

「それオレのおかげ♪
 それまでけっこうこいつは日陰♪」

と茶化すビーに、

「そんな事もなかったってばよ!!」

と返すナルト。
一同にはこれから一戦があるような雰囲気はありません。

「…なら、憎しみを克服できたって事だな……、ナルト。」

長門の問いにナルトは自信を持って答えます。

「オウ…! 兄弟子のアンタが教えてくれた痛み…。
 ビーのおっちゃんとの真実の滝での修行や、
 父ちゃんや母ちゃん…。
 とにかく皆のおかげでここまでこれた!

憎しみの雲が覆うことなく晴れ渡るナルトの心。
その様子を見て、弟はどうなっただろうと、
気にかかるのも自然でしょう。

「ナルト。
 お前に聞きたい事がある。」

ナルトもイタチと同じく、
何か気になることがある様子です。

「! そういやオレもアンタに、
 聞きたい事があったんだ。」

――時を同じくして、
カブトはイタチと長門が九尾と八尾に接触したことを感知。

「どうやらボクが先に見つけたようだね…。
 八尾と九尾…。この2枚のカードさえあれば…、
 あいつもボクの言いなりだ。
 どんな顔して悔しがるのか…、
 面の中の顔が見れないのが残念だ…クク…」

どうやらトビを出し抜くつもりでいる様子です。
突如、長門とイタチに異変が起きます。
自分の意志と関係なく術が発動。
火遁・豪火球の術です。

「後ろで操って奴のいいなり…。
 タイミングなんて関係ない! OK!?」

鮫肌で火球を一刀両断したビーは、
会話中で気を抜いていたナルトにそう促します。
続けざまに上空からの攻撃を行うイタチ。
ナルトもこれを見切って応戦します。

「サスケはどうなった!?」

と訊ねるイタチ。

「…木ノ葉へ復讐するつもりだってばよ!
 "暁"のメンバーに入っちまった。」

ナルトの返答に驚きと動揺を隠せない様子のイタチ。

「…なぜサスケは里へ帰らない…?」

再びイタチは訊ねます。

「…アンタの本当の極秘任務の事を聞かされて…、
 そんで里を潰す事を選んだんだ!」

ナルトの口から極秘任務のことが出てきて、
予想外のことにイタチは目を丸くします。

「オレもアンタの本当の事をマダラから聞いた!」

その事実はある一人の人物しか知りえないもの…
イタチは納得します。

「って事はマダラの言った事は
 やっぱ本当だったんだな!
 うちは一族が里を乗っ取ろうとしてそれを…」

ナルトもイタチの表情を見て、察します。
ナルトの言葉を遮ろうとするイタチに対し、
"暁"のリーダーであっても知らなかったイタチの真実を、
確認するように訊き直す長門

「イタチ…。アンタは里とサスケを守るため、
 自分を悪党に見せかけて死んだ!
 アンタの苦しみも覚悟もサスケは理解してるハズだ!!
 でもサスケはアンタの意志を受け継ぐどころか、
 木ノ葉を潰す気でいる!
 それは大好きだった兄キを苦しめた里への
 弔い合戦のつもりなんだ!」

イタチもトビを牽制して、
あえて本当の目的とするところを伏せて、
接していたのだと思われます。

「(マダラめ…。
  オレの事をやはり知っていたか…。)」

一族事件の協力者として力を借りても、
決してその意図するところを読まれないつもり…だった。
しかし事実はトビに知られてしまい、
おまけにサスケの憎しみを引き出す"だし"に使われている――
イタチにとっては非情に歯痒いはずです。

「その事は里の皆はもう知っているのか?」

とイタチ。

「カカシ先生とヤマト隊長は一緒にいたから……。
 でもマダラの言った事は、確証もねーから、
 カカシ先生に口止めされてる。
 他は誰も知らねーと思う…!」

とナルト。

「ならこの事は里の皆には決して言うな!
 名誉あるうちは一族に変わりはないのだからな。
 それと…」

それを聞いて一先ず安心といった感のイタチ。
二重スパイにまでなってイタチの守りたかったものには、
"一族の誇り"があったと思われます。
"反逆者"としてでない"名誉"ある"うちは"の名。
誰よりもうちはを、一族を愛していたから、
だからこそ平和のために自ら汚名を被ってまで、
一族の誇りを、名誉を守りぬいたのでしょう。

2.イタチの問い(2)

イタチとの会話の最中に、
何かに強力に引きつけられるナルト。
長門の万象天引によって、同じく引きつけられてきた岩塊と
互いに衝突させられそうになりますが、
九尾のチャクラをうまく使ってどうにか回避します。

「サスケはお前にまかせる。」

とイタチ。

「ハナからそのつもりだ!」

ナルトは力強く答えます。

「…やはりお前に託して正解だった…」

とイタチ。意味深な言葉に一瞬ナルトも戸惑います。
しかし考えている暇はありません。

「よし! ナルト。
 まずオレを引き離せ!
 オレは機動力が無い…」

長門。しかし、口寄せの術を強引に発動させられます。

「…事も…ないか…」

いくつもの顔をもつ狼と鷲。
自来也が苦戦した相手です。

「アンタそんなキャラだったかァああ!!?」

長門の調子が外れた様子に
拍子抜けといった感じでナルトも思わず突っ込みます。


一方、ビーに張り付いたイタチは、
炎をまとった手裏剣を自在に操る火遁・鳳仙花爪紅、
それを陽動にした幻術でビーを翻弄します。
ビーも八尾に幻術を無理矢理解いてもらい、
得意の剣術ですべての手裏剣を弾き落とし応戦します。
攻防の末、イタチが万華鏡写輪眼を見開いたところ。

「ビーのおっちゃん。気をつけろ!
 "天照"も"月読"もくらったら終わりだぞ!!
 万華鏡写輪眼だ!」

とビーに忠告するナルトですが、
対象はナルトでした。
ナルトの口からあの烏が顔を覗かせます。