532 『ミフネ VS 半蔵、決着』

申し訳ありません(@_@)
こんな遅くなるつもりは――
三連休に出かけていたこともあり、
アップロードをすっかり忘れていました…

1.ミフネVS半蔵、決着(1)

「貴殿はワシを忘れていたが…
 拙者を斬った時、去り際に何と言ったかも、
 覚えてはいないのだろうな…。」

鞘に刀を納めながら、ミフネは言います。


ミフネと半蔵が初めて対峙したとき。
それが想い起こされます。

山椒魚の毒だ。もちろん鎌にも塗り付けてある。
 …安心しろ。しびれで痛みはマヒし、
 二日もあれば死に至る。」

半蔵はしびれて動けないミフネに、
その鎌で止めを刺すつもりはないようです。

「なぜオレが山椒魚の半蔵と恐れられているか、
 その秘密を教えてやる。
 冥土の土産というやつだ。」

ミフネに対してこのようにするということは、
ミフネの実力をある程度認めているからなのでしょう。

「オレの里では猛毒を持つ黒山椒魚が一匹いた。
 そいつが死んだ時、子供だったオレの体に、
 そいつの毒袋が埋め込まれた。ちょうどここだ。」

半蔵は左のわき腹あたりを指します。
ちょうど左腎があるあたりでしょう。

「毒の耐性を体に持たせる毒人間にするためにだ。」

山椒魚の毒袋を体内に埋め込み、
その毒の耐性をもつとともに、
いついかなるときもその毒攻撃をしかけることができるのです。

「オレは呼吸だけで周りの人間を毒にかける事ができる。
 ガキの頃に恐れられたオレは、
 周りの安全のため口呼吸しかできなくされた。

上述の部分は少し難解かと思われるところですが、
要は毒袋を埋め込まれた後、
腹式呼吸などで大きくわき腹を動かすと、
毒袋にある毒の拡散を広げてしまう恐れがあるため、
口呼吸をすることで胸式呼吸を中心にしているということでしょう。

「なら…なぜ拙者との戦いで…、
 …それを…外さぬ……?」

いつも半蔵がつけているガスマスク。
それは毒を吸い込むことを防ぐというよりも、
口呼吸を徹底的に意識するためのものでしょう。

「そうする事も多々ある…が、それにはリスクもあってな。
 マスクにはもう一つの役割がある…。毒避けだ。
 もし戦いによりオレの中の毒袋が斬られ…
 毒の原液が体外へ流れ出た場合…
 その毒液から気化したガスを吸い込めば、
 耐性のあるオレ自身でさえその強すぎる毒にやられ動けなくなる。

 死にはしないが…スキを生じる。」

通常の皮膚呼吸で拡散する毒は極々微量のもの。
それでも吸い込めば、通常の人間なら卒倒する猛毒なのでしょう。
いくら耐性があるといっても、
その許容値を簡単にオーバーしてしまう原液では、
半蔵をもってしても耐えることは敵わない、というわけです。
体内にあるよりむしろ気化したものを吸い込むとまずい――
このことはこの山椒魚の毒が空気で酸化されることで、
より猛毒性を強めることを示唆しています。

「お前のような腕利きを相手にする時はなおさらだ。
 スキを作るわけにはいかぬ。
 …持っていたのは鈍<なまくら>だったがな…。」

ミフネが手にした刀は半蔵の鎖鎌で真っ二つにへし折られています。

「人は…刀…そのもの…。
 ……拙者も…鈍だったという…事か…。
 これで……終わりか…無念……。」

しびれが徐々に増していき、
意識朦朧とするさなか、半蔵は無念さを噛み締めるようにもらします。
それを見て半蔵は言います。

「一つ言っておく…。
 人が終る時は死ぬ時ではない。
 信念をなくした時だ。

半蔵はミフネと戦う前に何があったかを思い出しながら語ります。

「だからこそ厄介でもある…。外見からでは判断がつかぬ。
 お前がここで死んだとしても鈍ではない。
 それはオレの名に怖じ気づき、逃げ、
 初めから勝負を投げ捨てたお前の仲間たちの事を言う。
 お前はその身を盾に皆を守ろうとした。」

半蔵がミフネのことを認める理由――
ミフネは仲間たちを守るため、
畏怖する敵に果敢に立ち向かったという事実があるからでしょう。
その信念がある限り、ミフネは鈍とはいえず、
ミフネ自身が朽ち果てようと、
仲間や彼を慕う者がその意志を受け継ぎ、
決してミフネという存在が決して消えることは無い――
半蔵には見えていたのです。
ミフネの背後に見えるつながりと呼べるものが。

「お前はオレが英雄として語り継ぐ!
 死の代わりとして名を名乗れ!」

半蔵はミフネに言います。

「…侍の…仲間には…手を出すな…」

しかし、自分の名を名乗らず、
最後まで仲間を気遣うミフネを見て、
敵ながら感銘を受けたのか、
半蔵はミフネの前に解毒薬を差し出します。

「人に信念があるかどうかは、
 外見からでは判断がつかぬと言ったな。
 戦って分かる事もある…。
 お前のような奴は久しぶりだ。」

そう言って解毒薬の栓を抜き、
ミフネに飲ませてやります。

…信念を貫く事は難しい。
 オレにも信念がある…。この世に平和をもたらす事だ。

半蔵の確固たる信念――平和。

「お前で確かめてやる…。
 この先…信念を抱いたまま死ぬか、
 それとも生きながらえて信念を捨てる事になるのか…。」

2.ミフネVS半蔵、決着(2)

「確かめるハズの貴殿が、
 本当に信念を捨ててしまったのか!?」

あれほどに己の信念を基軸に、
真っ直ぐであった半蔵の変化を見てミフネも驚きを隠せません。
これほどまでに人が変わる理由――
サスケのように何かを失ったことによる絶望でしょうか。
幾度も幾度も戦っても、仲間を失うばかりで、
決してたどり着かなかった平和というものへの
諦念や自分に対する無力感もあるでしょう。
それが結果として誇り信念をも捻じ曲げてしまった――

「外見からは判断がつかぬものだ。」

昔、言った言葉。
どうやら半蔵もそのときのことを思い出したようです。

「不死身のワシを止める方法ならある…。
 かつて説明したな……ミフネ。
 お前はさがってそのスキを狙い、ワシを封印しろ。」

穢土転生は塵芥が体を覆い、不死身ですが、
死体は当時のまま。
ペインにやられて、おそらく毒袋もそのままであったのでしょう。
ミフネに注意を促し、覚悟を決めて腹に鎌を据える半蔵。

「ミフネ貴様に――ワシの信念を託す!!」

切腹し自らの毒で、その動きを止めます。

「隠れて己の身を削る事なく、
 人をただ人形のコマのように操っている輩。
 半蔵殿はそんな輩には屈しなかった。
 身を削り、その信念を取り戻した貴殿は、
 鈍ではなかったようでござる。」

カブトの穢土転生の札に反発し、自ら封印された半蔵。

「貴殿は拙者が英雄として語り継ぐ!!
 その信念しかと見届けた!
 お見事…半蔵殿!!」

かつて捨てたはずの信念は半蔵の中で眠っているだけでした。
その信念を自覚しミフネに託し、自らを悟った半蔵に敬意を表します。


シカマル、チョウジ、いのはアスマと戦闘中。
影真似でアスマをとらえ、
チョウジが絶好の攻撃の機会を得ますが、
アスマの顔をみたチョウジは倍化の術の拳を
ぶつけることはできませんでした。

「やっぱボクには無理だ!!
 先生を殴り倒すなんて事できっこないよ!!」

心優しいがゆえに、情に流されやすい――
でもチョウジは心の中では分かっているはずです。
アスマは自分たちに火の意志を託したんだと。
そして目の前にいるのは幻影であることも。
それでも振りぬいた拳が止まってしまうのは、
それだけ先生のことが大切だったからなのでしょうね。