533 『誓いの時』

最近遅れ遅れで申し訳ありません。
3月28日から4月4日に、
一週先延ばしされた533話について――

1.誓いの時(1)

アスマに蹴り飛ばされ、死に体のチョウジ。
シカマルが影真似の術を施し、
アスマほと止めようとしますがかわされてしまいます。
風遁・風塵の術が発動。
間一髪、いのがチョウジに体当たりして、難を逃れます。

「何で…何で、こんな事になっちゃったんだよ!!?」

やはりアスマとは戦えないとこぼすチョウジ。

「今さら泣き事言うな!!
 オレ達でアスマを止めるって覚悟を決めたろ!!」

シカマルの言葉も上の空です。
チョウジも目の前にいるアスマは、
ただの幻影でしかないことは分かっています。
けれど、全くの偽者じゃなくて、
自分たちの知っているアスマが垣間見えてしまう――
だから辛いのでしょう。

「いいかげんにしろ、デブ!!」

デブはチョウジにとってもっとも屈辱的な言葉。
アスマは敢えてその言葉を口にします。
チョウジも条件反射的に殴りかかろうとしますが、
その怒りさえ、アスマと戦う悲しみの前にはあっという間に消え去ります。
アスマは格闘型のチャクラ刀を手にし、
戦意喪失のチョウジに斬りかかるその時、
いのが心転身の術でチョウジに入り、
その攻撃を防御させます。
そこに突如現れた白ゼツ。心転身で無防備になったいの本体を
今度はシカマルが影真似で防ぎます。

「チョウジ…アンタさ…、
 この耳のピアスの意味忘れた訳じゃないでしょ!」

シカマルだっていのだってもちろんこんな戦いは避けたい。
けれど、ここは戦場。
だから味方の犠牲を増やさないためにも、
アスマをよく心得ている自分たちこそが戦わなければいけない。
いのはその覚悟を語ります。

「このピアスはオレからの中忍祝いのプレゼントだ。
 オレ達が第十班のチームだった事を忘れないようにな!
 …そして…このピアスはお前達三つの一族において
 一人前となった証だ。
 この“耳飾りのしきたり”の事はもう皆分かってるな…。
 なら今しているリング、ピアスを各々の一族に返してこい…。
 その時よりお前達は一人前の忍として、一族に認められる。
 さあ、行ってこい!」

耳のピアスは第十班が全員中忍になったとき、
アスマから贈られた祝いの品。
――しかし、まだチョウジは戦意を取り戻していない状態です。
アスマ必殺の火遁・灰積焼。
いのも防ぎきれません。
今度こそ絶体絶命…そのとき、親のチョウザが助けに割って入ります。

「チョウジ。いい加減にしろ!!
 オレ達ゃもう守られるガキじゃねーハズだろ!
 今は守る側だ!!
 アスマに己の子供を殺させる気か!!
 やさしさを履き違えるなっ!!!

アスマが守ろうとしていた玉。
大切なものは何か…
そのために、今、何をするべきなのか…
優しさ、思い遣る心――
それを何に向けるべきか、
チョウジはハッと我に返ります。

「甘えるな!!! チョウジ!!
 お前は秋道一族、16代目だぞ!!」

チョウザの言葉が追い討ちをかけます。

2.誓いの時(2)

秋道、奈良、山中一族の3つの家紋が描かれた石碑の前で、
チョウザにおぶられながら、幼きチョウジが聞いた話。

「希少な秘伝忍術を扱う三つの一族達。
 昔から力を合わせ、手を組みやってきた、
 特別な関係だからな、三つの一族は結束を強め、
 一族を守るため承認役の猿飛一族から耳飾りが託され…
 その耳飾りに代々決まった誓いを立てるのが習わしだ。」

耳飾りをすることで、
その誓いを忘れぬように常に耳に言い聞かせる――ように、
常々、その誓いを一貫させる心がけをするのです。

「今日からお前も一人前だ。
 今度はお前がその新しいピアスに誓いを宣言し、
 子供へあずけ守り育てる番になる。」

アスマから言われたとおり、
耳飾りを父親に返しにきたチョウジ。

「う〜〜〜ん。ボク…結婚できるかな?」

しかし、せっかく中忍になれたというのに、
自信なさそうに振舞うチョウジを見かねてか、

「…なんて顔してる!
 チョウジ…お前がアスマにいつも何が足りないって言われてるか、
 分かってるな?
 父さんだって結婚できたんだ。自信を持て!」

と叱咤するチョウザ。
しかし、チョウジはチョウザの意図を正しく汲み取れず、

「父さんの時みたいにはいかないかも…時代が違うし。
 …そうそうマニアはいないから…。」

と自分が太っていることを気にかけるのを止めません。
チョウザはそういう意味で言ったのでなく、
秋道一族として誇りをもって、成長すれば何事も大丈夫、
という意味合いで言ったのでしょうが――

「(自然に…なんとなく変わっていくんだと思ってた…。
  大人になってけば、自然と、
  心も体も強くなってくと思ってたのに…)」

成長すること…
それはただ単に待つだけではありません。
チョウジも薄々は気づいていたのです。
誓いの宣言をたてた時の言葉――

「我ここに誓う!
 秋道16代目党首として15代目より託されし誓いを、
 17代目へと成りゆく童へと託す!」

次の世代へその魂を、連綿とつながるその向こうへ託す。
そのために人間として、忍として成長する――
それはただの通過儀礼や押し並べただけの言葉じゃなかった。
チョウジはその意味にようやく気づきます。

「我、秋道チョウジは山中・なら両一族を守り、
 木ノ葉を守るためいざ蛹から蝶へと翔かん!!!」

自ら変わらなければいけない。
蛹から蝶へ、チョウジは持てる力を解放します。
それは守るべき本当に大切なモノのためでもあるし、
アスマのためでもあるのです。