517 『オモイの「戦争」』

1.オモイの「戦争」(1)

「ハァ…生きてる間は大戦なんて経験したくなかったなあ…。
 もし…、もしいきなり…敵の奇襲受けて、
 一人だけ生き残って…で…人質になって色々拷問されて…、
 …さらにそのあげく敵に頭の中いじくられて、
 カルイや雷影様と戦わされて…。」

隊の移動中、いつもの“重い”マイナス思考を働かせているオモイ。
第三次忍界大戦が終結したのはナルトが生まれる少し前あたり。
したがってカンクロウと歳が近いというオモイは、
ナルトよりも年上であることから、
幼い頃に、戦争の惨劇を直接でなくとも間接的には知っているはずです。
しかしそれはイタチのように鮮明に記憶に残るほどのものでなく、
まさか自身が直接体験しようとは思ってもみなかった「戦争」。

「…この戦争はこのオレ達の隊の奇襲の
 出来不出来で決まる…。戦死者の数もな…。
 成功する事だけ考えろ!
 家族と仲間を守りたいならな!」

自身の役割、そして目的をはっきり意識しているカンクロウ
その言葉にオモイはハッとします。


湯と(!?)の(!?)の大名たちも、移動を始めます。
特に霜の忍たちとその額宛てのマークは初出のものです。
ところで前回までの話では、「湯隠れと霧隠れを通過してくる」*1
ためにこの2国に避難指示を出すということでした。
<湯の国・湯隠れ>と国と里の名前が一致するのは百歩譲ったとして、
<霜の国・霧隠れ>ということは、少し“?”が灯るでしょう。
単なる誤植なのか、
それとも何かナルト世界での歴史的背景があるのか。
そもそも、霧隠れの里とは五大国のうち水の国にあるもの。
しかし、霜の国の忍たちのマークは水の国のそれとは違います。
元は水の国の霧隠れの里であったものが、
紛争か何かで水の国から霜の国が分離した――というのも考えられます。
あるいは、霜の国にあった霧隠れの里が本元で、
紛争の後、水の国に霧隠れがまた新しくつくられたとか。
イスラエルパレスチナ、中国と台湾みたいな関係が推測できます。


油女ムタは満身創痍の中、情報を蟲に託し、
同時に“邪民具の術”なるもので感知を乱します。
時を同じくして、奇襲部隊は敵地に到着。
拠点を築くためにカンクロウは皆に説明をします。

「ここはすでに敵の領地内だ。
 ここを本拠地として小基地を設営する。
 そしてここから奇襲攻撃と時差式爆破トラップを仕掛けにいく!
 半径10メートル2時と6時の方向を出入り口とする!」

と拠点の大まかな概要を伝えた後、
各員に直接指示を出します。

「オモイ。それ以外の方向全てに起爆札のトラップを仕掛けてこい。
 サイ。お前は空からの偵察を続けろ!
 タンゴは、通信チャクラのアンテナを張れ。
 ザジとホヘトは感知と見張り。
 キリと俺は作戦を検討する。」

自身の感知能力を過信するザジに対して、

「戦争では一切気を抜くなザジ!
 それが命取りになる。もっと気を引きしめろ!」

イッタンが先輩らしく忠告します。

「…カブトは穢土転生とか言う大蛇丸の闇の忍術を使ってくる。
 データによると魂を縛られ生き返った死人だ…。
 いくら攻撃しても死ぬ事がないらしい…。
 魂を封印するか、動きを止める術しかやりようがない…。
 しかも…術者を殺したとしても術は解けない…。
 どの部隊でもそうだが、まずカブトを見つけ次第拘束だ。
 後で幻術をかけ、そのやっかいな術を解く…、とそう聞いてる。」

カンクロウに上層部から伝えられたであろう穢土転生の術の内容。
それを復唱するようにカンクロウは皆にも伝えます。
術者が死してもなお肉体に縛られた魂は、肉体を動かし続ける――
穢土転生は恐ろしい術です。
そのカブトですが、対峙したアンコを打ち負かしたようです。

2.オモイの「戦争」(2)

邪民具の術の中、何者かが拠点に近づいてくることを感知したザジ。
それは先発隊の油女ムタでした。
皆の前に姿を現すなり、倒れこみます。
隊長カンクロウの制止を振り切り、駆け寄るザジ。
日向ホヘトが白眼により奇妙なチャクラの気配を感じ取ります。

「オレから…離れろ…。」

ムタは薄れ行く自分の意識から振り絞って最後の一言をかけます。
背中に背負われた蟲袋は実はデイダラが仕掛けた爆弾。
サソリにチャクラ糸で操られたムタは、ザジを捕え、
一同に向かって走ってきます。

「だから気を抜くなと言ったのだ!!」

――とイッタン。
デイダラの起爆粘土であることをすぐさま見抜き、
土遁を使って爆撃を回避させます。
その爆発に空から偵察をしていたサイも異変を感じます。
ザジはなんとか助けることができたものの、
ムタは助けることはできませんでした。

「(仲間の死を嘆くヒマもないのか…
  戦争ってのは…)」

一瞬一瞬に気を抜くことが許されない戦場。
仲間を弔うこともままならない状況。
オモイはその過酷な環境を肌で感じ取ります。
そんなことを考えているうちに、空から奇襲攻撃。
オモイは雲流三日月斬りで薙ぎ払います。
操られたトクマとランカ。
その影に隠れて何者かが奇襲をかけようとしますが、
そこをサイが阻止します。

「こいつらはまだ生かしてある…。
 さて…どうする…うん?」

と、姿を現したデイダラ
汚い手を使うことに業を煮やす忍連合軍の面々。

「お前らも奇襲部隊だな…。
 …こうやって奇襲部隊同士がカチ合うのは珍しいじゃん…。」

サソリがいることを見抜いていたカンクロウ
奇襲に特化している自らの傀儡術を把握してか、
相手の部隊の特性もまた見抜いています。

「フン…。ここで勝った方が奇襲を成功させられる…。
 この戦争はオイラ達が出始めだ…。
 ここでの勝利が戦争の流れを決める…。うん!!
 オイラ達はぜってー負けねェ…。
 なぜなら…、不死身って奴だ!! うん!」

デイダラは、自分たちの存在意義をこの奇襲にかけます。

「逃げろ弟よ…!
 こんな体だ…。お前らに勝ち目はない…!」

サイの“兄”であった根の忍。
サイを見、そう忠告を与えます。

「不安がってるヒマはねェ…。
 仲間を傷付けさせるよーなやり方。
 オレが絶対許さねェ!!」

これを見てオモイもついに憤慨。
刃を突きつけます。