516 『我愛羅の演説』

1.我愛羅の演説(1)

トビ側の動向を窺っていたアンコの部隊。
大きな動きを察知した日向トクマの白眼。
アンコは引き続き偵察を続け、
他の3人は本隊へと合流するように指示します。

「意識ははっきりしてるのに…、
 体は勝手に動いてる…」

ここがあの世でないことを察知する白と再不斬。

「こりゃ禁術…穢土転生だ。
 オレ達ゃ、何者かによって、
 またこっちの世界に呼び戻されたって事だ…。
 つまり、これから闘う事になる。」

と忍の一人が言います。

「死人まで利用するか……。
 そんなヤローに利用されるとは……、気にくわねェ…。」

と不愉快な気持ちを露にする再不斬。
一方、サソリ、デイダラ、霧隠れの中吉と呼ばれる忍、木ノ葉の根の忍は
奇襲部隊としてトビに任命を受けます。
この根の忍はダンゾウの配下であったフーやトルネではなく、
どことなくサイの兄として登場した人物に似ています。

「お前ら“暁”だな…。…言っとくが、
 お前らの好きにこっちが動くと……」

中吉は正義感が強い人物なのでしょう。
しかし、穢土転生の手前、術者に逆らうことはできず、
強制的に傀儡状態に陥らされます。

「利用されるとは“暁”も地に落ちたな…。
 しかも生き残ってんのが、ゼツとオレの後釜のトビって奴だけか…」

――と残念そうに(偉そうに?)サソリが言うと、

「永久の美が芸術だとかのたまってたくせに、
 死んだだんながえらそーな事を言うなっての…うん!
 だいたいあんなでかい弱点胸にくっつけってからだ、うん!」

デイダラが皮肉ります。殺されたいのか、とサソリ。
でも二人とも死んでるということで長引かずにひとまず口論は終了。

「あまりに穢土転生の数が多くて、
 コントロールするには少々大変でね。
 今は移動に集中してコントロールしているだけだ。
 最終的にはボクが全て仕切る。
 戦闘になった時は人格を消し殺戮人形になる…。心配いらない。
 まあキャラを見てだけど…、そうしない方がいい場合もある。
 …感情を残せば敵の乱れが生じる…そこを突く。

とトビに自信に満ちた表情でカブトは説明します。
その頃、日向ヒアシ、猿飛アスマ、ダンもまた戦地へ移動しています。

「生きた人間を生贄に死者の魂を呼び寄せる禁術にかけられてる。」

――とダン。

「いやな予感がする…。」

この先待ち受ける何かを予感するように、アスマが呟きます。
ダンと綱手、シカマルたちとアスマ、ヒアシとネジ――。
カブトの言動からは悲しい戦いが繰り広げられることは必至でしょう。
サスケの監督役にゼツをいくつか残し、
大挙10万ものゼツを地中から移動させる計画をトビはとります。

カブトと相対するアンコ。
潜影多蛇手で衝突します。
一方でトクマは白眼を使って、自分たちの存在が知れたことを察知。
サソリやデイダラのいる奇襲部隊を単身止めにいきます。

2.我愛羅の演説(2)

連隊長・我愛羅を前に、岩の忍と砂の忍の諍いがおきます。
それを目にして我愛羅は言います。

「自国自里の利益のために…、
 第一次から第三次までの長きに渡り、
 忍はお互いを傷付け、憎しみ合ってきた。
 かつてオレも憎しみであり、力であり、人柱力であった。
 そしてこの世界と人間を憎み、滅ぼそうと考えた…。
 今、“暁”がなそうとしている事と同じだ。」

聴衆は静まり返ります。

「だが…木ノ葉の一人の忍がそれを止めてくれた。」

目を瞑り、ナルトがかけてくれた言葉を思い返す我愛羅
人柱力としての苦しみを知るナルトは、
いまにも殺されるかもしれないのに、相手を思い遣る言葉をかけます。
他人なのに、決して理解しあうはずないのに――
そう思っていたのに、なぜだか胸が温まる――
そんな気持ちになって、ようやく自分がしてきたことの過ちに気づき、
そして“友”や“仲間”とは決して言葉だけでないことを悟りました。

「その者は敵であるオレのために泣いてくれた!
 傷付けたオレを友だと言ってくれた!!
 彼はオレを救った!! 敵同士だったが彼は同じ人柱力だった…。
 同じ痛みを理解し合った者同士、わだかまりはない!」

敵同士だったけれども、
いまは理解の及んだ友と呼べる存在となって、わだかまりもない。
目を瞑っていただけ。
光を見ようとしていなかった自分を、
そして光を見つけた自分を振り返る我愛羅

「今ここに敵はいない!!
 なぜなら皆“暁”に傷付けられた痛みを持っている。
 砂も岩も木ノ葉も霧も雲もない!!
 あるのはただ“忍”だ。

ここにいる皆も自分と同じだと我愛羅は言います。
“忍”として、皆は仲間であり友であるはず。
その額に記された一文字がそれを物語るように。

「もしそれでも砂が許せないのなら、
 この戦争の後にオレの首をはねればいい!!」

そう告げる我愛羅
砂だの岩だのではない。

「オレを救ってくれたその友を今、敵は狙っている。
 彼が敵に渡れば世界は終わる!!
 オレは友を守りたい。そしてこの世界を守りたい!!
 世界を守るにはオレは若すぎる! 浅すぎる!
 だから…皆の力をかしてくれ!!」

そう…嘆願するような我愛羅に一同は声をあげて賛同します。
砂と岩の忍もそれぞれ気まずそうにしながらも、
それぞれがお互いの非を認めて合意します。
一同を纏め上げた我愛羅は、隊の士気を高めます。


その頃ナルトは、九尾のチャクラを使った
繊細な力のコントロールの技術をつかみかけている最中です。
ビーは最後の修行なるものを提案します。

「第四次忍界大戦…我々が勝つ!」

動き出した忍たち。雷影も意気込みます。
全面衝突までもう間もなくでしょう。