490 『思惑』

1.九尾の真実(1)

「………手を組みたいだと…。
 お前と組んでオレに何の得がある?」

カブトの真意を探るようにトビの写輪眼が見定めます。
カブトは自らが穢土転生により召喚した
イタチ、サソリ、デイダラ、角都、長門の魂を交渉のカードに、
トビとの交渉を進めます。

「どれも強者揃いだ…。それに…、
 ボクの持ってる駒はこれだけじゃない。」

――と自信満々に語るカブト。
駒はこれだけではない――ということは、
暁の忍以外にも、過去の影クラスとして席巻した忍を
いとも容易く召喚できるということでしょうね。
しかもカブトがその力の許す限り何体でも。
見返りにカブトはサスケを要求します。
何を画策しているのか?との問いにカブトはこう答えます。

「…別に何も…。ボクの興味は忍術の純粋な真理。
 その探求のためにはサスケくんが、
 必要なだけ生きた若くて繊細なうちはの人間が欲しいィ」

カブトの眼光には大蛇丸の気配を感じます。
サスケに対する執着は大蛇丸のものなのか、
カブトのものなのかは定かではありません。
さて、トビが断ろうとするなら――カブトはさらに一枚切り札を切るだけです。
もう一つ穢土転生により棺が召喚されます。
そしてその中を見たトビは驚愕。

「ボクが何の手札もなく君に会いに来るとでも?
 …そう……君は断れない!」

棺の中身は読者には見えないですが、
どうやら次のカブトの台詞から、
この棺の中身はトビの正体や秘密に関するもののようです。

「…安心していいよ。
 これは誰にも喋ってない。

召喚されたと考えられるのは、うちはマダラが妥当でしょう。
そして、もしマダラならば、魂を核に塵芥が人型を形成する穢土転生の性質上
うちはマダラは既に亡くなっていて、トビはマダラとは別の人物です。
それならば“誰にも喋ってない”の意味合いが色濃くなる。
しかしこの期に及んでも、岸本先生がまだトビの正体を隠すつもりでいるなら、
このトビの正体や秘密は一枚岩ではないでしょうね。

薬師カブト。お前がここまでの忍になるとはな…思ってもみなかった。
 …今お前と揉めても、こちらの戦力が低下するだけ…。
 この機を狙ってここへ来るとは…用意周到な奴だ。」

トビはカブトの実力を認めた上で、カブトと手を組むことを約束します。
しかし、カブトを警戒するように監視付きとのことのようです。
さてこのようなトビの対応にカブトは次のように発言しますが、
ここが最も注目すべきところです。

「物分りのいい方だ。
 さすがはうちはマダラ。……器が違う。

棺の中身を知っているカブト。中身がうちはマダラであったなら、
この発言は不自然といえるでしょう。
なぜならその場合においてトビはうちはマダラではないからです。
トビは偽者ですから、器の大きさを称える上で、
あえて偽者に対して“うちはマダラ”と呼ぶ意図は
皮肉――ということになるでしょうか。
しかし、本当にトビがうちはマダラであった場合なら、
棺の中身は――いったい何だったのでしょうか?
マダラにとって最も会うことを避けたい死者。
それもその人物が死体であると分かると困るもの。
――まだ物語中には語られていない存在なのかもしれませんが、
現在のところそのような該当人物は存在しません。
このように考えるよりは、やはり棺の中身はマダラで
トビはマダラでない別人――でしょうか。

「こんな辺境の地に、わざわざ死体を………。
 倒れている忍の流れからして、この先に何かあるのは間違いない。」

一方アンコの部隊はカブトの足取りを追跡中ですが、
どうやら奇妙な事情にあたったようです。
辺境の地に不自然に転がる忍の死体。
まるでカブトの足取りを示すかのように置かれています。
隊の一人、トクマがアンコの指示を受け白眼で2時の方向を見通すと、
トビとともにいるカブトの姿を確認しました。
わざと追跡隊をおびき寄せていたカブトの狙い――
最終的にカブトはサスケを手に入れればいいだけの話ですから、
トビと木ノ葉勢で戦いあうのは別に都合が悪くないわけです。
カブトを戦力として作戦を練り直す姿勢を見せたトビも、
やはりカブトが裏切るということを勘案しないことはないでしょう。

2.九尾の真実(2)

なかなか蔵入りの掌紋を押せずにいるナルト。
ガマ寅によれば九尾の力をコントロールするには
その九尾のチャクラに付随してくる九尾の意志だけを
遮断する必要があるといいます。
八尾の場合はビーに協力的ですので、
その“力”をコントロールもしやすいと思いますが、
ナルトと九尾の場合はそうもいかない。

「九尾の意志ってのは憎しみの塊で、
 強い力でチャクラと結びついてくるんじゃ。
 どんだけ自分を強く保っても心のどこかにある憎しみと結びつこうとして、
 心を乗っ取ってくる。」

九尾の邪悪な意志が絶えず逆にナルトを飲み込もうと働いているからです。
邪悪な意志とはつまりは憎しみ。
ナルトに封印されてしまった九尾としては“憎しみ”を抱くのは当然です。
そしてその“憎しみ”はナルトの感情と連動して増長され、
それが極端になればペインとの戦いの時のようになるわけです。

「四代目は九尾封印の檻からほんの少し漏れ出すチャクラの上澄みが、
 ナルトのチャクラに自然となるよう封印式を組んどった。
 じゃがこの鍵を使えば四象封印を開け、
 九尾のチャクラを全て引き出せる!」

鍵を開けることにによって九尾を野放しにもできる。
開放状態に近づけるための前段階として、
自来也は緩くなっていた封印をさらに緩め、
九尾の意志への対抗力をつけさせようと試みていますが失敗しています。
それでいきなり開放状態にできる鍵が、
檻のすぐそばにあっては――とガマ寅は不安に感じているのです。
人柱力であるナルト自身そのことはよく理解しています。

「…確かに昔、大蛇丸とやった時は、自分から九尾の力に頼って、
 自分の意志を預ける事になっちまった。
 サスケの事言われてカッとなっちまって…
 すぐにでも大蛇丸やっつけたくてよ。


 そのせいでサクラちゃん傷つけて……
 ヤマト隊長は九尾のチャクラに頼るんじゃなく、
 自分の力で戦えって言った。
 人柱力を抑えるヤマト隊長に見守られて修行ならともかく、
 戦いでは憎しみの気持ちが常についてくっから、
 だからもう九尾の力はいらねェと思った。


 それに自分の意志で九尾の意志を抑えこむなんて
 できるわけねーと思ってたし…。
 けどヒナタがペインにやられた時も…
 憎くてくやしくて…
 使わねーどころか…自分の心が勝手に
 九尾の意志と簡単につながっちまった。


 今は四代目に封印を組みなおしてもらったからまだ安心だけど、
 またいつ暴走するかも分かんねェ…。………。」

このようにナルトは自身の苦悩を語ります。しかし、

「だけど…、サスケと戦うためには九尾のチャクラが必要だ。
 結局オレは九尾の人柱力だ。本当はいつまでも逃げてらんねェ。」

九尾の人柱力であること――それはナルトの宿命であり、
ナルトのためを信じて父である四代目ミナトがしてくれたことであり、
その事実から逃げてばかりはいられない、とナルトは決意するのです。

「(うじうじしたって仕方ねーってばよ。
  コントロール…キッチリやってやんぜ、父ちゃん!)」

最後はキッと自信に満ちた表情でナルトは蔵入りの掌紋を押すのです。


一方、雲隠れの里。
戦争に向けて会議中だというのに、ビーはライムを考え中。
“では”の濁点を逆にして“てば”――ラップ風に“てばヨー”
なんてことを呑気に考えています。
ビーは納得のいく出来でないようですが、
これは九尾の人柱力ナルトの口癖。
大ガマ仙人のタコ予言といい、
どうやらナルトがビーと出会う必然性がそこかしこに出てきています。
尾獣のコントロールの方法を教わる――という展開では、
今後のナルトの更なるレベルアップとして、
八尾のように仲良くとはいかないまでも、
九尾を否応でも飼い慣らす程度の能力は必要になってくるでしょう。

「よし! 三日後には忍連合軍の連合会議を開く!
 各里へ召集連絡だァ!!」

との雷影の勇ましい発言。
しかし忍里の動向や戦力など、鬼鮫に筒抜けみたいですが――