545 『不死身対決』

1.不死身軍団(1)

「(鬼鮫の情報が正しければ…
  初代火影の妻、うずまきミト同様…、
  ナルトは敵意を感知するまでになった…」

ナルトが九尾の人柱力として、
どれだけの力を引き出せるようになったのか、
トビは鬼鮫の情報をもとに判断します。
鬼鮫は鮫肌と一体となって、
ビーとナルトを監視していましたが、
九尾の力を完全に身に付けたナルトに看破され、応戦、
最後の最後でその情報を託したのでした。

ところで、うずまきミトは初代火影の妻であり、
九尾の人柱力であった人物。
感知の範囲は微細なところまで行き渡るほどだったことから、
ナルトと同様、九尾をかなりコントロールできていたと思われますが、
九尾の口から忌々しそうに"ミト"という名前が出ないのは、
なぜでしょうか?
金角銀角が九尾に食べられた逸話があることから、
おそらく、戦争も一段落し柱間と結婚してすぐか、
その付近であると思われますが、ミトは若い頃に人柱力となりました。
またヒルゼンの話によれば子を身ごもって、九尾の封印が解けそうになりますが、
その後老いてクシナにその人柱力の任を譲るまで存命だったわけですから、
九尾とミトは長い付き合いとなり、
それ程仲も悪くなかったのかもしれませんが…

「(これでナルトは出てこざるをえない…。
  白ゼツを処理するためにはな。)
 …計画通りだ。
 今日、千手の火の意志は消える。」

と豪語するトビ。
おそらくトビには複数プランがあって、そのプランも、
A段階でこのような展開になれば、B段階にいかずC段階に進む
といったような計画だろうと思います。
そもそもナルトというのはかなりの不確定要素。
連合軍をまとめる雷影がどのような人物であるか
トビが知らないわけがない、あるいは情報を仕入れないわけがないです。
何が何でも人柱力を出そうとしないはずだというのは
分かっていたはずです。
一方でその人柱力をおびき出すために、
白ゼツを仕掛けたからといって、
ナルトの力を借りずともいくらでも
この事態を対処する方法はあったはずですし、
それ程連合軍もバカではないでしょう。
(シカクは相当頭を悩ませていましたが…)
このようなてんでんばらばらの不確定要素を含めて
"計画通り"と言えるなら、トビは相当先が読めて、
どのように転んでも対処できるような手はずを整えている
策士といえるでしょう。


さて多少の衝突があっても、
ナルトの意志を汲んで、雷影が戦場に行くことを許した顛末を
カツユから聞いた連合軍の首脳部。

「…地面から雨が降る勢いです。
 雷影様を……」

と信じられないといった様子のマブイ。

「考えられない事もない…
 ナルトは少しそういう所がある不思議な奴だ…。」

一方でそう納得するシカク。
ナルトが動いたとあらば、
シカクもそのナルトを頼った方針が頭に浮かびます。

「しかし…これは敵の思うツボかもしれませんよ…。
 白いゼツのこの変化の術の能力にしても…
 まるでナルトを誘い出すかのような…」

とするマブイの言葉を認めつつもシカクは、

「確かに罠かもしれん…。
 だが今はナルトに任せるしか道はない…。」

とその危険性を考慮しつつも、
破竹の勢いであるナルトの力が明らかにプラスであることを勘案します。

2.不死身軍団(2)

シズネを中心に捕えた白ゼツを調べる医療部隊。

「サクラちょっとこの個人配列のデータを見てみて!」

個人配列(おそらくはDNAみたいなものでしょう。チャクラ配列かも?)から
何か分かった様子のシズネはサクラを呼びます。

「…五影階段の時よりヤマト隊長に近くなってる!!
 つまり…これ…初代火影の個人配列とほぼ変わらなくなってる…。
 やっぱりそうだったんだ!」

とサクラ。柱間の個人配列と似たようなものと断定します。
そしてゼツの衝撃の正体に迫るのです。

「つまりこの白い奴は初代火影様の分進体!
 というよりこの数からして初代様の細胞を培養し
 植物を媒体に造られた動くクローン植物って事!
 うすまって弱いけど木遁を使うし!」

なんと白ゼツは植物に柱間の細胞を増殖させたクローン…
と言っていますが細胞学上はキメラ*1だったのです。
512話:『ゼツの真実』にて
トビのアジトで白ゼツが増殖されていた様子を再び見返すと、
確かにそのような描写でした。
そう考えると唯一無二の黒ゼツは何者なのでしょうか…
気になります。(^_^;)

さて、そのことが早速本部に報告され、
ちょうど帰ってきた雷影と火影はその報告を受けます。

「マダラと大蛇丸の初代への執着が、
 こんな形で一つになろうとはな…

 おじい様の体で造った植物忍者共か…。」

と報告書を受け取り複雑な表情を浮かべる綱手

「これでマダラが初代の細胞を持っているのは間違いない!
 それを培養し増やす技術を開発したという事は、マダラの体も…
 通りで長生きできていたハズだ。」

今さらですが、大蛇丸が数少ない柱間の細胞適合者であるヤマトを
執着せずに泳がしていた理由が推測できます。
ヤマトが適合した頃には、
大蛇丸の研究も完成間近だったのだと思われます。
つまり確認段階であり、余興。
失敗例ばかりの中で喉から手が出るほど唯一欲しかった
成功例というわけではなかったのでしょう。
暁に所属し、禁術等の知識を手に入れながら、
柱間や細胞について徹底的に研究しつくし、
自身はなぜか柱間の細胞を埋め込むことをせず
(おそらく大蛇丸の美学に反したのでしょう)
転生術として不老不死を完成させるも
果てはトビやダンゾウともつながり、その技術を提供していたのです。

「で、マダラを倒すヒントでも分かったのか?」

と訊ねる雷影に首をかしげる綱手

「いや…逆だ。
 どうやって倒すのか分からなくなった…。
 おそらくマダラは本当の意味で……不死だ!」

まともな人間は一人もいない――
そんなモノを相手にしていることにシカクも頭を抱えるも、
綱手の指示を受け
白ゼツの厄介な術のこと、マダラのことをナルトとビーに伝えます。

「…それでモヤモヤしたもんがいくつも感じ取れたのか!
 じゃあオレがやるしかねーんだな!」

なにか釈然としないものを感じ取っていたナルトは、
それが白ゼツであったことに納得します。
マダラの話になり、過去話したことがあったナルトは、
そのことを思い起こしつつ大人しく捕まるつもりはないことを
シカクに伝えます。

「…なら今回は話し合いだのとぬかすなよ、ナルト。
 マダラは終え韻・長門とは違う。
 奴は平和なんか望んじゃいねェ…
 世界が欲しいだけのまさに悪党ってやつだ!」

そう警告するシカク。

「一度鉄の国でマダラと話をした…。
 うちはの因縁についても、聞いた。
 憎しみの事をよく分かってて長門を利用し、
 サスケの憎しみを煽ってる奴だ。
 悪党だってのは分かる!」

ナルトも頷きます。

「憎しみで動いてる奴じゃない…
 憎しみを利用してる奴だ
 今までの敵とは一味違うぞ。気を付けろ!」

憎しみに囚われることなく、
あえてその憎しみを利用して動いている者。
憎しみを断ち切ろうとするナルトにとって、
それはまさに宿命の敵です。

「どっちにしろマダラをぶっ倒して、
 この戦争はオレが止める!
 話をするにしてもそれからだ!」

とナルト。
敵は不死身軍団であることもあわせて忠告したシカクに、
力の加減をせず思う存分戦えると、ナルトは言います。

3.不死身軍団(3)

ナルトたちの方へ走りよってくる味方の忍たち。
しかし間髪入れずナルトは攻撃します。
隊員達の正体は白ゼツが変化したものでした。

「そういう事ならナルトに任す♪
 ナルトの指示した奴だけオレも負かす♪」

とビーも気づかないくらいの見事な変化を
ナルトは容易く看破します。
九尾の衣状態から尾を伸ばした先で螺旋丸をつくる《螺旋乱丸》
背中で携えた巨大螺旋丸に、尾でとらえた敵をぶつける《螺旋吸丸》
と多彩かつ強力な攻撃で次々にゼツたちを倒します。

「(ナルトの攻撃で木遁が影響を受け…
  木にもどってるのか?
  あの時と同じだな…)」

ナルトに倒されたゼツは木に戻ります。
ヤマトの人工的な木遁に生命が宿って、
生い茂るように枝が伸びたあの時の様です。
食虫植物のような形態をとった白ゼツに、
《ミニ螺旋手裏剣》を放り込むナルト。
あわせて《口寄せ・屋台崩しの術》でガマヒロを召喚したナルト。
一気呵成とばかりに、《多重影分身の術》を使ったところで、
今回のお話は終わりです。

*1:キメラ:同一個体内に異なる系統の遺伝情報をもつもの