487 『戦いの始まり』

1.戦いの始まり(1)

ナルトの言葉を聞いて、
少し嘲るような表情を見せた後、

「いいだろう…………。
 お前を一番に殺してやる。」

とサスケは言います。

「オレってば…………
 まだお前にちゃんと認めてもらってねーからよ!」

とナルトは言いますが、
“お前を一番に”という点は、
ある意味サスケはナルトのことを一目置いている部分がある
何よりの証拠です。

「(ナルトは…覚悟を決めてこの場に居る…。
  私なんかの甘い覚悟とは違う…!!
  私は…忍のくせに泣いてばかりで、
  ナルトにずっと頼りきってて…、
  それを振り切ったつもりでここへ来たのに…。
  覚悟もできてなくて…。
  何もできない。何も言えない。
  私のできる事は――二人を信じる事!!)」

ナルトを傷つけていた、頼ってばっかだった――
そんな自分が情けなくて、サスケのことは、
自分でけじめをつける覚悟をしていたはずなのに、甘かった。
大事なときにただただ泣くばかりしかできなかった――
無力感がサクラを襲います。
しかし、自分の弱さを知り、弱きことへの無力感に満たされ、
サクラはここから成長していくのではないか、と思います。
そして“信じる”事で、強き心と正しい力を是非とも培うべきでしょう。


彼らのやりとりを見ていたカカシは、
サスケをナルトに任せることを認めます。
ただ、全力を以てマダラは処理しなければ――
万華鏡写輪眼を見開き、神威を放とうとしたその矢先、

「止めておけ、カカシ。
 そんな術はオレには効かない。

とトビは言い放ちます。
一瞬たじろぎ機を失ったカカシ。
カカシの術・神威が効かないとは――どういう意味でしょう。
ほとんどの方がお気づきだと思いますが、
トビの空間転移術も神威に似ていることが何か関係ありそうです。
渦巻く空間に消え去るトビ、サスケ、ゼツ。

2.戦いの始まり(2)

アジトに着いたサスケはトビにある提案をします。

「イタチの眼をもらう。」

須佐能乎に頼りすぎていたサスケは、
失明寸前まで、その眼を酷使していました。
いいタイミングだ、とサスケの提案を待っていましたとばかりに肯定するトビ。
その急な心変わりを問うトビにサスケは答えます。

「オレは全力でナルトを潰す!
 そして奴の全てを否定してやる!
 それだけだ。」

永遠の万華鏡写輪眼を手に入れることで、
持てる全力をもって完膚なきまでにナルトを叩き潰す。
そうやってナルトという存在を全否定することで、
サスケはその気持ちの昂ぶりを、憎しみをぶつけようというのです。
全否定する――
ナルトの存在が目障りだ、虫唾が走る、という思いは
サスケの心の何から湧き出てくるものなのでしょうか?
かつて病院の屋上での決闘で覚えたナルトに対する劣等感、焦燥感は、
いまもなおサスケの心の奥底にあるのは確かでしょう。
ナルトを認めていたからこそ、裏返しに、
終末の谷でナルトを“認めていない”かの様な台詞を吐いたのです。
どこかナルトという存在を気にかけている自分がいる――
闇に完全に染まろうとしている自分の前にちらつく光。
だからこそ、その全てを、“光”を否定することでこそ、
自分の行くべき道が完成されるとサスケは感じているのではないでしょうか。


一方で残されたナルトやサクラ、カカシ。

「(ナルト…いつも…ありがとう。
  アンタのおかげで私はまだ第七班皆で笑いあえる先を
  諦めないでいられる…!)」

ナルトに密かに感謝するサクラを前に、
急に倒れたナルト。
どうやら先ほどサクラを助けたときに、
毒付きクナイが頬を掠めていたよう。
なんとか解毒はされたものの、まだ気分は優れないといったナルト。
また香燐は抵抗する様子もなく、おとなしく拘束されます。

「おう! オモイ、カルイ。久しぶりだな。
 元気に呑気に陽気にしてたか?」

雲隠れに帰ってきた雷影、ビー、シー、ダルイ。
それを出迎えるサムイ小隊。
鮫肌の一振りが目立つ中、
何やら暗雲立ち込めるかのような気配。
実は鬼鮫は生きていて、鮫肌をカモフラージュとして、
雲隠れに潜入したのでした。
感知されないのは、鬼鮫と鮫肌が同質のチャクラを持つからのようです。
雷影とビーにやられていたのは実は白ゼツがつくった分身。
ビーとの戦いを録画していた黒ゼツと合流した白ゼツ曰く、

「ボクだって水中でうまく鬼鮫と入れ替わるのが大変だったよ。」

つまり途中まで本当の鬼鮫で、
あの水のドームで鮫肌と融合した鬼鮫が魚人と化し
暴れまわってビーを倒した場面がありましたが、
あの水のドームを解くときに入れ替わった可能性があります。

「オレ達モソロソロ食事ノ時間ダ。……融合シロ。」

不穏な言葉を残し彼らは再び一人として融合するのです。


滝隠れの忍たちを襲う蛇。

「力がなじむ…いい調子だ。悪くない。
 そろそろ行動を起こすとするか。」

そこには大蛇丸の力を手にしたカブト。
悪辣な表情を浮かべ、カブトもどうやら動き始めた様子です。