467 『宣戦』

今回月曜日が体育の日であり、土曜日発売だったのをうっかりしてました。
10月10日――ナルトの誕生日であり、
連載10周年達成ということで偉大な今週号なのですが、
管理人の怠慢で2日後れの感想になることをお詫びします。m(_ _)m
扉絵には暁の面々たちも。
迎える新時代――とありますが、これからナルトはクライマックスへ突入していくようです。

1.宣戦(1)

「鉄の国に入ったらナルトくんの探索…お願いしますよ……キバ。」

サイ、サクラ、リー、キバの4人1組で行動する一行。

「いのは泣いてるだけだったってのにサクラはこの覚悟だ…。
 ナルトに何て切り出すのかは知らねーが、
 ……気不味い雰囲気になるのは間違いねーからよ。」

思いつめた様子のサクラをキバやリーが気遣います。

「しかし…4人1組が基本だからって……
 探索任務だとオレだもんよ。それに…
 秘密裏にってサイの注文…“根”の尾行確認までオレの鼻まかせだぜ。

重くのしかかる責任にため息をつきつつ、警戒を怠らないキバ。
どうやらサイを見張る“根”の追手を警戒して、あるいは撒きながらの旅なのでしょう。
サクラ、そしてサイ。暁に下ってしまったサスケとの戦いへの覚悟。
その想いをナルトに伝えるために彼らは動き出したのです。

「何て事をしてくれたんだコラ! これだから忍は!」

トビとの一悶着で宿を破壊しまくったカカシたち。
当然、宿の主から大目玉。

「す…すみません。私がちゃんと直しておきますから。」

木遁があれば木造建築は自在(!?)のヤマトですが、
まあ宿の主人が顔を真っ赤にして怒るのも頷けます。
サスケはうちはの憎しみを世界にぶつけるつもりでいる――
最も強い武器、そして友人、力となる憎しみ。それがサスケの忍道――。
トビの言葉がナルトを悩ませます。

「もう…直接会ってみるしかねーんだ。」

深々と降り積もる雪。鉄の国の方角を見つめるナルト。


一方の会談場。突如現れた仮面の男に聞く耳持たずの雷影が、
雷撃を浴びせますがすり抜けてしまいます。
するとトビはサスケをその仮面の渦の中へ吸い込みます。
ついでにサスケの回復役として香燐も吸い込みその写輪眼で異次元へ飛ばします。
サスケたちが行き着いた世界は何も無い真っ暗な闇に無数の石柱が並んでいるところ。
その異様な様子に香燐も驚きます。

「さて…そろそろ聞く気になってくれたかな。……諸君。」

マダラは皆が見渡せるような高いところへ立ちます。

「なぜお前がサスケを手懐けようとする?」

との風影我愛羅の質問に、トビは次のように答えます。

“須佐能乎”まで開眼する写輪眼は稀だ…。
 いい眼をストックしておきたくてな。
 五影との実戦でさらに瞳力を鍛えさせておきたかった…。
 ここにサスケを送り込んだのはオレだ。

つまりトビの目的は五影相手にサスケを鍛えさせること。
それゆえにゼツを使ってわざとサスケの襲撃を教えたというわけです。
すなわちトビにとってはダンゾウの抹殺は二の次に回してもよいことだった事になります。
そしていい眼をストックとはどういう意味でしょうか。
後述する月の眼計画に万全を期す最強の写輪眼を作り上げるため――という意味にもとれます。

「五影を弱らせて人質に取ろうとも思っていた…。
 そこまではまだ無理だったようだが。」

五影を制するレベルにまではまだサスケは成長していなくとも、
どうやらトビの計画は暗礁に乗り上げたなどというわけではないようです。
あくまでそれも一つの可能性として、あらゆる可能性を含めた上での行動。
それをおもむろににおわせるようなそんな発言の仕方です。

「人質? …一体何のために!?」

水影の言葉にトビはこう返します。

「さっき言った“月の眼計画”を円滑に運ぶためだ。」

月の眼計画。その真相が徐々に明かされていきます。

「本当にあのうちはマダラがまだ生きていたとは驚きじゃが…
 お前ほどの男がなぜこんな回りくどいやり方をする?
 お前の力ならどんな計画でも思い通りのはずじゃぜ。」

と土影。土影はさきほどの雷影の攻撃をいとも容易くいなした様子や、
サスケや香燐の窮地を脱出させ、五影を前に踏ん反り返る、
その実力と相応の雰囲気からトビをうちはマダラと認めているようです。

「初代火影柱間との戦いの傷が深すぎたのだ…。
 今のオレに力はない。言わば今の俺はただの形骸化した存在にすぎない。

形骸化――つまり外枠はうちはマダラということのようです。
あるいはうちはマダラが乗り移っているだけの他人――ともとれます。
大蛇丸の転生の術のような、あるいはもっと高度な術による結果。
大蛇丸が成しえるのですから、マダラが成しえても不思議ではありません。

2.宣戦(2)

月の眼計画――いったいその計画は何なのか。
気持ち逸<はや>る皆へトビは語り出します。

全てがオレと一つになる! 全ての統一を成す完全体だ。

全てと一体になるとはいったいどういうことなのか。
皆が驚きを隠せない中、トビは話を進めます。

うちはには代々伝わる古の石碑がある。今も木ノ葉の地下にある。

うちは一族の真相が語られている南賀ノ神社、一族集会場の地下にある石碑。
イタチも眼にしており、その存在をあの一族事件の日にサスケに伝えています。

「そこはかつての六道仙人が書きつけた秘密が記してある。
 瞳力がなければ読む事ができず、
 写輪眼・万華鏡写輪眼・輪廻眼の順に解読できる内容が増える。」

イタチの口からは九尾とうちはの眼の関係しか語られていませんでした。

「話がマユツバものになってきたな。六道仙人など…。」

神話に存在するだけの架空の人物。土影はトビの話に疑問を呈します。

「これは事実だ。彼は存在した。そしてその石碑を残した。」

六道仙人は存在した――ということは以前に語られていた六道仙人の子とされる兄弟――
その子孫がうちはと千手にあたるという話も信憑性を帯びてくることになります。

「なぜ彼が伝説となり忍の神のように崇められるようになったのか知っているか?
 そこにオレの目的とこの男との繋がりがある。」

忍の祖とも言われた六道仙人。
学問の神様にまで崇め奉られた 菅原道真 公と似ていますね。
トビの語り口調からするに、そこまで神格化されたのにはある理由が存在し、
そしてそれはトビの目的とも通ずるものがあるということです。

「彼はかつて世界を救った。あるバケモノから……」

あるバケモノ…とは何か。トビの口からそのバケモノの名が語られます。

我愛羅…お前もそのバケモノの一部が封印されていたにすぎない。
 そいつは尾獣全ての集合体。…最強のチャクラを持つ存在…十尾だ。」

輪廻眼の全ての円上に三つ巴をもつ、
写輪眼と輪廻眼をあわせたような眼をもつ一つ目の化け物。十尾。
それに立ち向かう六道仙人が描かれています。

「一尾から九尾までの尾獣はその十尾のチャクラを分散したものにすぎない…。
 六道仙人の手によってな。」

つまり各尾獣のチャクラ量q_iに対して十尾のチャクラ量Q_{10}


\Large Q_{10}=\sum_{i=1}^{9} \Large q_i

(a)
そして今までの話から尾の数に比例してチャクラ量が多くなるとあるので

\Large q_{n} \lt q_{n+1}

(b)
と尾獣を考えれば、全てのチャクラの集合体として10という数字が達成されるとして、
一尾を1とする等差数列のモデルを考えるならば、

\Large q_{n+1}-q_{n}=d
とするとこのdは、(a)式によって

\Large d=\frac{1}{36}
ということなのでこのモデルの従う場合、一尾から十尾のチャクラ量は以下の様に推定されます。

尾獣(尾の本数)iチャクラ量(分数表示)q_iチャクラ量(小数表示)
1尾i=1q_1=1q_1=1.0000
2尾i=2q_2=\frac{37}{36}q_2=1.0278
3尾i=3q_3=\frac{19}{18}q_3=1.0556
4尾i=4q_4=\frac{13}{12}q_4=1.0833
5尾i=5q_5=\frac{10}{9}q_5=1.1111
6尾i=6q_6=\frac{41}{36}q_6=1.1389
7尾i=7q_7=\frac{7}{6}q_7=1.1667
8尾i=8q_8=\frac{43}{36}q_8=1.1944
9尾i=9q_9=\frac{11}{9}q_9=1.2222
10尾i=10Q_{10}=10Q_{10}=10.000

「六道仙人は十尾から世界を守るためある忍術を開発した…。
 今もその忍術は密かに受け継がれている。人柱力の封印術システム…。
 そう六道仙人は……十尾の人柱力だった。
 十尾を抑え込むためにその体に十尾を封印したのだ。」

驚いたことに六道仙人はなんとその十尾の人柱力であり、
人柱力というシステムを生み出した人でもありました。

「人々を苦しめていた十尾から世界を救った仙人は
 人々から神のように崇め奉られた。
 しかしあまりに強大にして邪悪な十尾のチャクラは己が死ねば、
 封印が解け、また表へ出てきてしまう。
 それを恐れた六道仙人は死に際に最後の力を使い
 十尾のチャクラを九つに分散し、地上の各地へとバラまいた。」

この話も上にあげたモデルに従って考えると真実味が増すでしょう。
十尾のチャクラは九尾のおよそ8.2倍という
凄まじいチャクラ量を持っていると考えることができます。
尾獣をよりあわせる…具体的にこれだけのチャクラ量があると考えると合点がいくでしょう。
六道仙人が崇められるに足りえたのも、肯けるというものです。

「そして十尾のチャクラを抜かれた本体は封印され
 力の及ばない空へと飛ばされた。それが月となった。」

しかしダルイはあまりにも人間離れした話に懐疑的です。
そんなことが本当に人間にできるのか。その問いに対するトビの回答はこうです。

「十尾の人柱力となった六道仙人はすでに人外の輩となっていた。」

六道仙人は十尾のチャクラを得て、莫大な力を手に入れた。
そうもはや人外と呼ばれる域に到達していたのです。

3.宣戦(3)

そのような人外の力を手に入れてどうしようというのか、ミフネがトビを追及します。

「十尾復活! そしてオレは十尾の人柱力となる。
 その力を利用して己の瞳力を強大化させ…そしてある術を発動させる。」

トビの月の眼計画その全貌が明らかになります。
さて、そのある術とは――

「月に己の眼を投影する大幻術限月……。
 地上に存在する全ての人間に幻術をかける!
 オレが全ての人間をその幻術の中でコントロール
 世界を一つにするのだ!

月の眼計画――それは全ての人間への月読。
それによって世界を一つに統一するということ。

「わだかまりも争いも無い世界だ。全てがオレと一つになる全ての統一。
 それがオレの“月の眼計画”。」

あまりにも独善的で現実離れしすぎたトビの計画の全貌は
修羅場をあまたくぐってきた五影でさえ一瞬呆然とさせられるもの。

「ふざけるな!! お前などに世界は渡さん!!」


「幻の中の平和などごまかしだ。
 現実の世界で成しえてこそ意味がある。」


「そんなものの中に何があるって言うの!
 希望も夢もない! 逃げているだけよ!」

しかし、我に返り雷影、風影、水影は猛反発。

「世界を一つにするか…。確かダンゾウも同じような事を言っとったが…。
 お前のは世界を一つにすると言うより
 世界を自分一人のものにしたいとしか聞こえん。

と土影もトビの話に反感を示します。

「ククク…そういうお前達五影に何ができたと言うのだ?
 お前達なら本当は理解しているハズだ…。
 希望などない事を!
 希望とはあきらめに等しいものだ…それこそごまかしのセリフでしかない。」

トビは意味深なセリフを吐き捨てます。
忍の世界に希望などない。
忍とは殺生に囚われるもの。それは復讐の原因であり、
憎しみの連鎖から未来永劫解き放たれることのない世界です。
そういった意味で希望はない…と言う事でしょうか?

「残りの八尾と九尾を差し出しオレの計画にもろもろ協力しろ。
 でなければ戦争になる。」

八尾と九尾を差し出せというトビに困惑する雷影。
人柱力として完璧な忍であったことから捕獲に失敗したことをトビは告げます。

「あのアホーンめ!! これを機に里の外へ出て遊んどるのかァァァ!!!
 許さん! 鉄ノ爪<アイアンクロー>じゃ!!」

いきり立つ雷影にうなだれるシー、ダルイ。
雲隠れの果し合いは何だかまさに徒労ということで、
ここまで気張っていた雷影もその真相には腹を立てずにいられないでしょう。
しかしそれは暁の新たなる脅威を発見することにもつながったわけです。

希望は捨てない。

我愛羅はじめ水影、雷影、土影もトビの思い通りにはさせない――
かつての力はないけれども尾獣の力を使って戦争を起こすというトビですが、
その脅威にも負けないそう決心したかのようです。

「いいだろう…第四次忍界大戦…。ここに宣戦を布告する。」

さて、およそ1ヶ月前の記事【五影会談7・サスケVS雷影(iii)】*1にて、


チャクラの膨大な塊をもつ尾獣たちを利用するとすれば、
間違いなくその膨大なチャクラを私利で使うこと。
これらの尾獣の力を寄せ集めかつての六道仙人を超えるほどの力を持つべく、
神に近い存在へと自分を昇華させること――
なんかがジャンプ王道的に考えられる展開ですが…(^_^;)
その場合、全ての尾獣の統合体として君臨するという意味で十尾<トビ>――
というのもあり得る話かもしれません。

などと書きましたが、まさに今号の展開はジャンプ王道の展開になったわけですね。
正確には十尾<じゅうび>だったわけなんですが、
あまりにもぴったり過ぎたので吃驚という感じです。


しかし、火影抜きで着々と進めていくトビの姿勢。
ダンゾウには第四次忍界大戦を伝えなくてもいいのか、
あるいは伝える必要はないのか――