437 『告白』

.告白

「お前はオレの平和を嘘っぱちだというが、
 この呪われた世界で人と人が分かり合う平和ほど虚構なものはない。」

長門が見すえる歪曲した平和――
自来也が望んだような人と人が分かり合う平和はありえないと長門は考えています。
長門が望む平和は全く自来也の望むものと間違っている、
ナルトの叫びも虚しく木霊します。

「口だけだな…答を示せないお前に何ができる。」

“平和”への答え。憎しみをどうにかし、人と人が分かり合う平和への答え。
ナルトにはその明確な答えがありません。
黒い棒で串刺しされ、身体を意のままに動かせなくさせられてしまったナルト。

自来也の小僧も父ちゃんもそれを信じて命を懸けたんじゃ!
 こんなところでお前がくたばったらウチが許さん!!」

シマも動けなくなったナルトに必死で喝を入れ、
ペインに勝つように説得しますが、ペインの神羅天征によって吹き飛ばされてしまいます。
ペインがナルトを連れ去ろうとした瞬間見かねたヒナタが
ついに思い余ってペインの前に出て来てしまいます。

「ナルトくんにはもう手を出させない!」

無力とは分かっていても、それでも何かその人の為に成し遂げたい。

「これは…私の独りよがり…」

ナルトの「逃げろ!」という忠告を振り切って、
ペインの前へ一歩一歩足を進めていきます。

「……泣いてばかりで最初から諦めて…
 何度も間違ったところに行こうとして…
 ナルトくんが正しいところへ連れてきてくれたの…」

危ないところから早くヒナタを遠ざけたい――
諫めるようなナルトの険しい表情が一瞬不思議そうな表情に変わります。

「いつもナルトくんを追いかけて…
 …ナルトくんに追いつきたくて…
 いつだってナルトくんと一緒に歩きたくて…
 いつもナルトくんのところへ…。」

いつだってくじけずあきらめず真っ直ぐだった、その姿勢が無力だった自分を変えてくれた。

「ナルトくんが私を変えてくれた!
 ナルトくんの笑顔が私を救ってくれた!
 だからナルトくんを守るためなら死ぬことなんて怖くない!!」

自分を変えてくれたことに報いたい、
こんなに変わったんだということを認めてもらいたい――
そんな恋心も混ざった決意だったのでしょう。

「私はナルトくんが――大好きだから…」

『柔歩双獅拳』、回転移動から猛る獅子の様に突き出される手。
今まで見せてきた“防”の姿勢のヒナタと打って変わって、
物怖じせず“攻”の姿勢を貫きます。
しかし、神羅天征の前にはやはり無力。
弾き飛ばされたヒナタをペインが黒い棒を構えてナルトの方を見すえます。

やめろォ!!!

しかし躊躇わずに振り下ろされた棒によって赤々としたものが、
ナルトの眼に焼き付けられます。

「ちょうどこんな風にだったか…
 オレの両親もお前ら木ノ葉の忍に目の前で殺されたんだが…
 愛情があるからこそ犠牲が生まれ…憎しみが生まれ…
 痛みを知ることができる。」

血も涙もないペインのやり口。
自分が味わったPain(痛み)を全く関係のないものにまで強制的に押し付けて、
それでいて愛情があるから、憎しみや犠牲が生まれると――
“痛み分け”なんてものではすまない――

「だが復讐を正義というならば、その正義は復讐を生み…
 憎しみの連鎖が始まる。」

ならばなぜ長門は自分のしていることこそが憎しみの連鎖だと気づかないのでしょうか?
噴き出すようなやり場のない怒りが、ナルトの九尾の力を解放させます。
かつてない六本の尾をもつ妖狐の衣につつまれたナルト。
夥しく溢れかえるチャクラが、九尾の骨格までをも形成します。

「これでも人は本当の意味で理解し合えると言えるか?」

理性を失い、目に映る全てを消さんとするナルトに、
長門はそう問いかけます。

「それでいい…だがな…オレの痛みはお前以上だ。」