390 『最後の術』

.最後の術

紅蓮の炎を飲み込む漆黒の炎。

「燃ヤシタイ所ヲ目視シ ピントガ合ウダケデ ソノ視点カラ黒炎ガ発火スル。
 黒炎ハ捉エタモノヲ燃ヤシ尽クスマデ消エナイ… ソノ対象ガ炎デアッテモダ。」

眼の痛みからか、眼を瞑ったイタチ。
漆黒の炎も勢いが弱まります。
少々後ずさり気味のサスケに、再びその眼が開かれます。
すかさず焦点(ピント)を避けるサスケ。
しかしイタチの視線をなぞって、黒い炎はサスケを追尾していきます。
ついにサスケをとらえた漆黒の炎。呪印の手を焼き尽くし、
瞬く間に胸から下を焼き尽くします。

「“天照”ヲ止メタナ…眼ヲ奪ウ気ダ…」

イタチがサスケの眼へと手を伸ばそうとした瞬間、
サスケの頭がどろどろに溶けてしまいます。
イタチも眼を奪うために天照で頭まで焼き尽くすつもりは無かったのでしょう。
一瞬たじろぎます。

「“天照”を出すまでは…この変わり身の術は使えない。」

漆黒の炎に捉えられた瞬間、サスケは千鳥でドーム状になっている屋根を切り裂き、
うちはのアジトの内部へ、大蛇丸の様に脱皮することで逃れました。
大蛇丸流の変わり身の術。多量のチャクラを消費して、
おそらくは変わり身内部のちょうど自来也の蛙の中のような特殊な空間に、
自分の本体を隠して、変わり身が崩れたときに、
脱皮するように這い出てくるという技のようですが、
サスケも習得していたようですね。

「これを待ってたんだ!」

イタチが天照を止めたのを窺うと、
呪印状態からすかさず火遁・豪龍火の術を
イタチのいるドーム外に向かって放ちます。
咳き込むイタチ。眼からの流血、そして心なしか口からも溢れた血。
以前、自来也戦で使用したときとは違って、
だいぶ身体に負担がかかっているようです。
そこへ飛龍の様に火炎が襲います。
イタチはかろうじて避けますが、第二弾、第三弾に右腕を捉えられます。
なんとか受身をとるものの、右目の万華鏡の紋様も消え、瞳孔は萎縮しきっています。

「さっきの“天照”…相当の負担がかかったよう…」

言葉が尻切れになるほど、サスケの方もまた消耗しています。
呪印状態も解かれ、地面に膝をついています。

「これがオレの最後の術になるだろう。」

ゴロゴロという雷鳴、そしてサスケには笑みが。

「写輪眼はチャクラを見る眼だ。強がりはよせ…。
 もうお前にチャクラが残っていないのは分かる。
 “天照”を回避した大蛇丸流の変わり身の術…
 バレにくく良く出来た変わり身だがアレは多量のチャクラを使う。」
「だが……アンタを殺すのにオレが何もせずにここに来たと思うか?
 一瞬だ。この術は“天照”と同じだ…絶対にかわすことは出来ない。
 さて…ご希望通り再現…しよう…。アンタの死に様を…」

立ち籠める暗雲。雨とともに次第に雷の音は大きくなります。
サスケ最後の術。前もって術を発動していたのでしょう。
落雷――でしょうか?