394 『サスケの勝利』

1.サスケの勝利

いまだなお燃え盛っている漆黒の炎にひらひら舞い落ちる木ノ葉。
瞬く間に漆黒の炎で包まれますが、風で飛ばされ、
火種となって近くにある木も漆黒の炎で包みます。
いくつもの戦いを掻い潜り、
それでもなお解消されていない何かがいまだ燻っている
木ノ葉隠れを暗示しているかのような描写。
それを岩陰から一匹の蛇が見つめています。
茫然とするサスケ。傍らには、仰向けに斃れたイタチ。
天照の熱気はまた雨雲を呼び出し、また雨が降り出します。

「どうにも腑に落ちないんだけど…。」
「何ダ?」
「イタチの強さってこんなもんじゃなかったでしょ…
 本来の動きじゃなかったし…様子が変だってお前も言ってただろ?」
「確カニ…カワセルハズノ攻撃ヲカワセズ、戦闘中ニ何度モ吐血…
 イタチハ元カラ何ラカノ重大ナダメージヲ負ッテイタノカモ知レナイ…」

イタチは何かの為に戦っているようでした。
それは、決して弟の復讐に付き合うといったようなものではなく、
もっと命を賭した、何か重大なことを弟に託すように、
あるいは伝えるように戦っていた――とも考えられないでしょうか。

「もう少しでサスケの“眼”を取れたのに…」

思えば、イタチの戦い方は変でした。
本当にサスケを殺してしまうつもりなら、
本当にサスケの眼を取るつもりなら、
手負いと言えど、確実にイタチは遂行していたでしょう。
ところが、そうではなく、弟に遊戯に付き合うように、
弟を見定めるように戦っていたわけですから、誰もが疑問に思うところです。
サスケの額に残したイタチの血が、雨で流れて、サスケの左目に入り、
サスケもまるで血の涙を流しているかのような――
あるいは本当に泣いているのかもしれません。
復讐を達したから、というわけではなく、
憎しみぬいた相手とはいえ、
突然の別れに、ふと涙が流れ落ちてきた…そう思える描写です。
稲光。それを合図に、サスケも気が遠くなっていくようです。
そして微笑み。サスケはイタチに隣り合うようにうつ伏せに倒れます。
イタチの真意、一族事件の真実…
それらが分かるのは、当分先かもしれません。

2.サスケの勝利

天照の炎。漆黒がトビの仮面の穴に続くような描写から、
トビと木ノ葉勢に場面が転換します。
フォーメーション攻撃…、将棋を詰むように、
各々が各々の攻撃の特性を活かして、
絶妙なタイミングで相手を追い込んでいく攻撃でしょうか?
しかし、トビには全く通じていないようです。

「つまり奴はかわしたと見せかけて、実はかわしたのではなく、
 お前を術ごと自分の体をすり抜けさせた…そういう事かナルト。」

螺旋丸ごとすり抜けたナルト。
螺旋丸があたったような描写がなかったことから、
術ごと通過していった様子が見て取れます。

「分身か何か…それとも映像や幻影を見せる幻術の類かも…」
「わ…私もそう思って白眼で視野を広げて周囲のチャクラを
 感知していたんだけど…やっぱりあの人のチャクラは、
 あそこに一つ存在してるだけ…」

サクラとヒナタの会話から、幻術ではない別の仕組みが、
トビの透過にはあるようです。

「間違いない。あれは奴だけの何か特別な術だな。
 こうなると厄介だが…シノ…
 こういう状況ではシノのような秘術系が役に立つ。」

カカシの言葉を待っていたかのように、
衣を広げるように虫をざわめかせるシノ。

「うわぁ! 君、油女一族かぁ!
 うじゃうじゃキモいなぁもう!」

トビは相変わらずおどけて見せます。

「へっ! シノ、珍しくやる気じゃねーの!」
「当たり前だ。何故なら前の任務は仲間外れだったからな。」

黒眼鏡の奥に射掛ける眼光を隠してはいますが、
シノが静かにその闘志を燃やしているようです。