388 『力の差』

1.力の差(1)

サスケは絶叫の後、あまりの痛さからか、左目のあった場所を右手で押さえます。
血が滲み滴って地面には赤い水溜まりができています。

「だから言ったのだ。
 万華鏡を持たないお前がこの眼を持つオレに敵うはずがないと。」

イタチは冷然と言い放ちます。

「もう片方ももらうぞ。」

イタチの手が伸びかけたすんでの事、サスケは呪印によって形作った腕を使って薙ぎ払い、
イタチに間合いを取らせますが、イタチはすかさず円筒形の培養液のようなものが入った容器に、
サスケから抉り取った写輪眼の左眼を入れ、と同時にサスケの背後の壁から、
分身体を出現させ再びサスケを捉えます。

「これが力の差だ。お前とオレの瞳力の差だ。」

イタチの血腥い右手の指先が、今度はサスケの右目へ迫ってきます。
指先が眼球に到達する刹那、サスケは呪印を開放、
状態変化後もそれほど変わらないはずのサスケの右眼の写輪眼の瞳孔が
次のように力強く拡大し、イタチの月読を破ります。
そう――今までのは、イタチの月読が見せていた幻影でした。


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ガラスが割れるように、月読で創られた擬似世界は崩れ去ります。

2.力の差(2)

月読を破ったサスケは息を切らせ、困憊して膝をつきます。
しかし膝をついたのはサスケだけではありませんでした。
イタチも驚愕と苦悶の表情で左眼を押え膝を落とします。

「お前…オレの“月読”を…」

サスケは息を整え立ち上がり、笑みを浮かべます。

「言ったハズだ。アンタがその眼をいくら使おうが、
 このオレの憎しみで幻は現実になると。」

ゼツはこの状況を次の様に評しました。

「写輪眼モ忍ノ武器ダ。武器トハソレヲ扱ウ者ノ力量次第デ強クモ弱クモナルモノ…
 手裏剣ヲ持ッテイテモ達人ノ投ゲル小石ニ負ケルコトダッテアル。
 要ハ力量ノ差…。サスケノ才能ガイタチノ想像ヲ超エテイタトイウ事ダ」

イタチも立ち上がり、サスケを見据えます。

「フッ…幻は現実になる…か。
 それこそその台詞…そのまま返しておこう。
 さっきの“月読”で己の眼がもがれる幻を見ただろう…
 ならば、それを現実にしてやる。」

ゼツはイタチの雰囲気が変化したことを察知。

「本気ニナッタヨウダ…コレナラ…アノ“天照”ガ見レルカモ知レンゾ。」
「え! “天照”を!!?
 そりゃ楽しみだ。やっぱこっち見に来て正解だった!!」

イタチは子の印を結び、左眼をを閉じて集中します。

3.天照へ

月読の後に天照を出すということは、天照はイタチの奥の手の一つと考えられます。

「“月読”はおろか…“天照”まで使わされてはな…」

以前は自来也の蝦蟇口縛りの術を破る際に用いました。
太陽の炎に匹敵する高温で、七日七晩燃え続けるといわれる漆黒の炎。
【写輪眼対比3・2つの万華鏡写輪眼(i)】*1においては、
天照を強制的に空間移転、カット(orコピー)&ペーストのような形で、
漆黒の炎を召喚した術だと考えました。


ところでご存知の方も多いと思われますが<アマテラス>は日本神話上で崇高とされる神の一つです。
日本の国土を創った神であるイザナギ男神)・イザナミ(女神)ですが、
イザナミ逝去に際して、黄泉までイザナギが逢いにいきますが、
イザナミの醜く、おどろおどろしい姿に恐れおののき、
慌てて逃げ帰ってきて、黄泉の穢<けが>れを清めたときに
左目から生じたのがアマテラス、右目から生じたのがツクヨミ、鼻から生じたのがスサノオとされ、
三貴神と呼ばれています。
一般的にアマテラスは太陽神、ツクヨミ月神スサノオは暴風雨などの自然神、荒神など様々。

イタチは“天照”を繰り出そうとしているわけですが、
この神話を重ねて解釈すると、
左眼から繰り出される(あるいは左眼が主体)
というのが大方の見方ではないでしょうか。
左眼を閉じた――溜めて解き放つかのような仕種――、
もしもカット(orコピー)&ペーストであるならば、
眼を閉じて集中している際にカットを行っていると考えられます。
一方で月読が破られた際に、イタチは左眼を押えています。
左右逆というパターンもあるかもしれません。

  • 右脳(空間映像制御)→左眼→月読
  • 左脳(空間秩序制御)→右眼→天照

という具合に――。