385 『万華鏡の秘密』

うちはマダラとうちは一族事件の秘密が、
とうとう明かされていくような兆しが見えます。

1.万華鏡の秘密(1)

イタチを後ろから刀で刺し突き、オレの質問に答えろと迫るサスケ。

「三人目…もう一人の写輪眼とは…………うちは一族とは誰だ?」
「何故…そんな事を気にする?」
「アンタの次にそいつを殺す…その為だ。」

一族を皆殺しにしたあとで、サスケと邂逅した折に
イタチが洩らしたサスケを予定した三人の万華鏡写輪眼
サスケもその仄めかされた一人に気づいていました。

「いくらアンタでも警務部隊を一人で殺れるハズがない。」
「…ちゃんと気づいたか」

このやりとりからイタチは意図的にもう一人の存在を仄めかしたことが窺えます。

「誰だ?」
「うちはマダラだ。」

サスケの脳裏にはふとナルトの中で対峙した九尾の言葉がよみがえります。

「その瞳力とワシ以上に禍々しいチャクラ…
 かつてのうちはマダラと同じだな…」

イタチはうちはマダラについて語りはじめます。

「木の葉隠れ創設者の一人…万華鏡写輪眼を最初に開眼した男だ。」
「創設者…? そのマダラならとっくに死んでるハズだ。」

終末の谷で初代火影と成った男との戦闘に敗れたはずのマダラ。
万華鏡写輪眼をはじめに開眼した、うちは一族の祖。
九尾を前にして突っぱねたマダラという名をサスケはやはり知っていました。

「…マダラは生きている。信じる信じないはお前次第だ。」
「戯言は止めろ!」
「…人は誰もが己の知識や認識に頼り縛られ生きている。
 それを現実という名で呼んでな。
 しかし知識や認識とは曖昧なモノだ。
 その現実は幻かもしれない。人は皆思い込みの中で生きている。
 そうは考えられないか?」

そしてイタチは、マダラが死んでいるのは勝手な思い込みである、
そうサスケに言い放ちます。

「かつてお前がオレを優しい兄だと思い込んでいたようにな。」

サスケを突き放すイタチ。
なぜ一方的に自らを弟が憎むべき対象に仕立て上げたのでしょうか?
そしてイタチ自身が弟に固執する理由も量りかねます。
優しい兄から憎むべき兄に変わることには、
然るべき必然的な理由がイタチにはあるはずですが、
それはまだまだ不透明です。

「あの夜の出来事…幼かったオレには幻にしか見えなかった。
 酷い幻術の中にいるのだと…そう思いたかった。
 だがアレは!! まぎれもない現実だった!!」

千鳥の刃を伸ばし、草薙の刀で刺し突いた反対の方向を射抜きます。
そこにはイタチがもう一人。刃を突き刺したのは幻術でした。

「今のオレの眼は昔とは違う! オレの写輪眼は幻術を見抜く!」
「フッ…相変わらず強気な物言いだな。
 その言葉…とりあえず受け取っておこう。」

顔の横を突き刺した千鳥の刃に眉一つ動かさず見下すかのようなイタチ。

「…だが…サスケ…お前はまだオレと同じ眼を持っていないようだな。」

イタチの問いかけにサスケはフッと笑みを見せます。

「ならさっさと万華鏡写輪眼を使ってオレを殺ってみろ!
 それとも今のオレでは己の“器”を量りかねるか?」
「大した自信だ…」

強気のサスケに、イタチは失笑するようにサスケに言葉をかけます。
両者の本体ははじめの位置からあまり動いていなかった様子。
ゼツがひそかにこの戦いを観察しています。

2.万華鏡の秘密(2)

万華鏡写輪眼…この眼は特別…。
 開眼したその時からその眼は闇へと向かう。
 使えば使うほど封印されていく。」
「万華鏡はいずれ光を失う」

万華鏡写輪眼の絶大な力とそしてそれに伴う副作用。
決して万能完全無欠というわけではない――

「失明…それが九尾をコントロールする力を得る為の代償か。」
「フッ…オレの言った通り集会場の石版を読んだようだな。」

長らく謎とされていましたが、どうやら、
南賀ノ神社本堂、その右奥から七枚目の畳の下の一族秘密の集会場の石碑。
そこには九尾と万華鏡写輪眼に関わることが書かれていたようです。
そして、マダラのことも――。

「マダラ…一体何者だ?」

サスケの問いかけにイタチは淡々と答えます。

「その眼で九尾を手懐けた最初の男。
 オレの相棒であり師であり不滅の男。
 そして万華鏡写輪眼のもう一つの秘密を暴いた唯一の男。
 それがうちはマダラだ。」

3.万華鏡写輪眼とうちはマダラ

最初に万華鏡写輪眼を開眼したのがうちはマダラであること。
そして、イタチ自身が「師」と言っていることから、
万華鏡写輪眼の開眼条件、すなわち、

「お前も万華鏡写輪眼を開眼しうる者だ。
 ただしそれには条件がある。最も親しい友を殺すことだ。」

という台詞にあるこの条件はマダラ譲りであると考えられます。
つまり、マダラも最も親しい友を殺して万華鏡写輪眼を手にしたはずです。
――となると、初代火影とマダラの戦い。
本当は敗れたのは初代火影だったかもしれません。
その弟である二代目火影が里に就任したのはなぜでしょう?
そしていつ頃でしょうか? もしこの時期が一致するなら、
可能性ありといえます。
そして、何らかの理由でうちはマダラが初代火影に倒されたことにした。
そもそも終末の谷の戦い後、
初代が生きていて積極的に木の葉の里を築き続けたか
死んでしまったかの消息は不明です。
マダラは姿を消してしまって、初代の骸だけがそこにあったのだとしたら――
出来たばかりの木の葉の里の初代火影が
内乱のような形で倒されてしまったことを諸外国に伏せておきたかった――
とすればある程度筋は通りますが………

そもそも初代火影とうちはマダラの記念像を、
二人の戦いがあった終末の谷につくったのはなぜでしょう?
この辺から糸を解きほぐせそうで、
でもまだまだ絡まっているという感じですね。

4.灰色のイタチ

もう一つ今回忘れてはならないのが『イタチ』です。
虐殺事件の共犯者としてマダラがいるような話筋に、
つまりイタチはその事件の首謀者であるかのような話筋に否定はしていません。
イタチは一見黒に近くなってきたように見えます。
ここで【変貌と疑惑8・事件の核心、不自然な犯人】*1
の記事ではイタチというより木の葉の暗殺部隊の粛清だと考えましたが、
そうではなくマダラの関与があったとするならば、彼が築き挙げたはずの一族を自らの手で崩壊させるという
極めて矛盾した行動をとったことに何らかの理由があるはずです。
またこのことによって、イタチがサスケに残酷な素顔を見せつけながらも
「兄」をちらほらと覗かせた理由も看過できません。