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.本当の選択
ペインの正体に気づくも、彼らの黒い棒に貫かれ息も絶え絶えの自来也。
喉を潰され喋ることもできません。気が遠のく自来也。
忍とは生き様ではなくて、死に様の世界――
武士道にも似た理想<イデー>を持っているようです。
忍の人生とはどうやって生きたかではなくて、
死ぬまでに何をしたかでその価値が決まる。
…思い返せばワシの物語は失敗ばかりだった…
綱手にフラれ続け、友を止めることも出来ず、
弟子と師を守ることも出来なかった…。
走馬灯のように自分の人生を振り返る自来也。
火影たちが成し遂げたように、そんな偉業を成し遂げて死にたい。
物語を締めくくる"結び"は、その物語の出来を決める。
失敗も一興、試練が己を磨いてくれ、今までの失敗を跳ね飛ばすような
そんな偉業を成し遂げて立派な忍として死んでいく自来也豪傑物語…
――のはずだったのです。
大ガマ仙人の世界を揺るがす予言の一役者として、
ペインを倒して"暁"を止め忍の世界を破滅から救う――
そんな選択をしたつもりだった。
「くだらぬ物語だった…」
ふとミナトの言葉がよぎります。
「いやそんなことはないですよ。
この物語は素晴らしいです。」
自来也の"まとも"な作品。売れはしなかったけど、
ミナトはその本の主人公…最後まであきらめなかった格好よさを称えます。
「今度生まれてくる子供も、
こんな主人公みたいな忍になってくれたらいいなって!
だからこの小説の主人公の名前…いただいてもいいですか?」
ラーメンを食べながら適当に考えてつけた主人公の名前ナルト。
そんなのでいいのか? と思わず訊ね返す自来也。
ミナトにとってナルトとはラーメンに入ってる具材としてではなく、
その小説の主人公の"生き様"を意味する単語に置き換わっていたのかもしれません。
もちろん、それは母となるクシナも理解していたのだと思います。
腰まである長い赤い髪、端麗な顔立ち。身重のクシナはミナトの傍にやってきます。
おそらくこの場面はミナトの家。
クシナも動き回れるほどなので、お腹は膨らんでいますが、
まだお産までは日にちがあると考えられます。
名付け親になることに照れる自来也。毛布にくるまれた赤子のナルトを見た場面。
ナルトは面立ちなどはミナトに、眼はクシナに似たのでしょうか。
記事【うずまきクシナ】*1では、
クシナは渦の国の出身であり、後の渦の国を火の国に併合する際に火の国の忍となったと考えました。
渦の国が敵国だったか同盟国だったかいずれにせよ、
ナルトは四代目波風ミナトの子であることを伏せられて、
母方の『うずまき』を名乗っていることには次の2通りの展開が考えられます。
1.波風ミナトが渦の国の人と結婚し子供が出来ていたことを伏せるため。
2.九尾を封印されたばかりの赤子の頃のナルトはクシナが引き取って育てていたが、
何らかの事情ですぐにクシナが死去し、孤児となった。
1番でナルトが波風を名乗らなかったのは、九尾を封印された子が四代目の子であることを、
広く知られないためで、かつナルトを守るためというのもあると思います。
また2番のクシナが育てていた期間があったことは、
うずまきを名乗る理由として自然だと思われます。
三竦みの戦いの時の大蛇丸との対立。
あらゆる術を極めることが忍の才能と言い張る大蛇丸に対し
忍の才能とは耐え忍ぶこと、あきらめないことだ
と言う自分が思い起こされます。
まっすぐ自分の言葉は曲げない。そしてどんなときもあきらめない…
それがお前の忍道なら――ナルトよ、ワシはそのお前の師だ。
弱音を吐くわけにはいかんのォ…なぜなら…
弟子の忍道は師匠譲りと相場は決まっとる!
なぁ、そうだろナルトよ…のォ!!
予言の子は間違えなくナルト。
そして最後の力を振り絞って、自来也は頭に何かを伝えました。