今回は、【変貌と疑惑】を受けてトビの正体について考えてみたいと思います。

.トビ=シスイ?

トビの正体として、オビト以外にも有力なキャラとして挙げられているのがシスイです。
364話(40巻82ページ)におけるイタチと鬼鮫の会話を見てみましょう。

「弟さんのことなら残念でしたね…
 これでうちは一族はアナタ一人になってしまった…」
「いや… あいつは死んでない…。それに…」

この会話の流れから、「それに…」に続く内容は、

  • うちは一族はサスケ、イタチの二人のみではない

が最も相応しいでしょう。では、イタチ、サスケ以外のうちは一族として、誰が考えられるでしょうか?
――写輪眼をその仮面の奥から覗かせたトビが考えられるでしょう。
トビはイタチ以上に暁の根本に関わっていますから、
同じうちは一族のイタチを暁という組織に入ったのは彼の影響があるかもしれません。
【変貌と疑惑4・"器"】*1で考えた

  • イタチが心酔、もしくは傾倒するようなカリスマ性をもった人物

に一番相応しいといえます。そして、イタチがそのように傾倒したであろう人物は過去に一人だけ明らかになっています。

  • 兄のように慕っていたシスイ

です。イタチの解しがたい思想は、シスイの思想だとも解釈できます。


しかし、よくよく考えてみると、

  • シスイは“最近”のイタチのことを監視していた。

ということに辻褄が合わなくなります。
他の一族の人々から見れば、シスイは味方できる人物、つまり正常な思想の持ち主であり、
シスイが監視していたイタチは、そのわけがわからない思想についても対立的な立場にあったといえます。
しかし、その思想は他ならぬシスイの影響から生まれたものであり、

  • シスイもイタチと同じ考えをもっていた

ことになり、矛盾が生じてしまいます。
この矛盾を解消するには、表向き一族の人たちにはイタチを監視する立場をとっていながら、
裏ではイタチとともにその崇高な理想の実現のために暗躍する立場にあった、と考えるより他にありません。

「見た目や思い込みだけで…人を判断しない方がいいですよ。」

という台詞はつまりイタチと同じ思想をもつシスイを知らず、表向きのシスイしか知らない人々を皮肉ったともとれます。
「一族の為ならどんな任務でも先だってやる男だった。」
という台詞に対する皮肉だと受け取れば、

  • シスイは内心一族を見限っていた

ことになり、これはイタチが一族を見限っていたのとつながります。


ところで、【変貌と疑惑2・兄としての自己】*2において、

  • 弟が越えるべき壁としての兄

を見てきました。

「ただ…お前とオレは唯一無二の兄弟だ。
 お前の越えるべき壁として、
 オレはお前と共に在り続けるさ。」

もしも、シスイとイタチの間も兄弟のような関係だったとすれば、

  • シスイはイタチの越えるべき壁としての存在だった

といえるかもしれません。

「高みに近づくため…」

フガクになぜ昨夜の(一族会合に)来なかったかと問いかけられたときに、
このように答えたのは、明確に越えるべき壁としてのシスイを越えること、
つまりシスイとの対決があったかのようににおわせる台詞でもあります。
しかし、シスイ=トビでイタチの煽動者という観点に立っていますし、
シスイ殺害を実行したとするなら、いろいろと矛盾を孕みますので、
シスイ殺害はイタチによるものでなかったとするなら、当然、
「高みに近づく」という台詞は別の捉え方をする必要があります。
それはシスイを越えるのではなくて、“シスイとともに在る”、という考え方です。
だとするなら、イタチの暁入隊はこの時点がふさわしい気がします。

  • シスイの思想に感化され一族集会の日、ついに暁入隊に至る――

一族の集会の日をわざわざ選んだのは、
一族を見限る二人の一族に対する抗いであったともとれなくはないでしょう。


トビ=シスイは混沌に包まれたこの問題に俄かに光が差すようでいて、
まだまだ問題を孕みます。

  • なぜ、シスイは自殺に見せかけて命を絶ったフリをしなければならないか。

彼は身投げを選んでいます。これは遺体が見つかりにくい方法です。
推理小説に出てきそうなトリックですが、遺品などを残して自殺したフリをするというもの。
身投げした場所に本人のものと思われる遺品(この場合は恐らく遺書と思われるメモなど)があって、
なおかつ姿がその日以来見えなくなれば、自殺して死んだように扱われる、というわけです。
この瞬間にシスイは死んでトビが誕生した、というわけです。
トビのあの黒い衣装はその正体を隠すにはうってつけでしょう。
しかし、シスイはトビとして生まれ変わろうとしたのはなぜでしょうか?
どうやら遺書の内容を検討してみる必要があるでしょう。