シスイが残したとされる遺書について。
彼はうちは一の手練れであり、一族の為ならどんな任務でも先だってやる男。
一族の評価はこのようでした。
遺書を残して自殺するようには到底思えない、ゆえにイタチが殺害したのではないか、と。

「見た目や思い込みだけで…人を判断しない方がいいですよ。」

とシスイに対して何らかの理解がある様子を見せるイタチ。

1.遺書の内容


任務に疲れた。
このままでは うちはに
未来は無い。
そして、オレにも…。

これ以上“道”に
背くことは出来ない



彼は任務に疲れて自殺したようですが、その任務とはどうやら、

  • うちはに未来は無い

ということが分かってしまうような任務だったらしいことが分かります。
ところで、“最近”のイタチを監視していたらしいシスイ。
これが任務であったとするなら、うちはに未来が無いとは、

  • イタチの一族虐殺計画を前もって知っていた

ことになります。イタチが事件の首謀者、黒となるのは想像に難くないでしょう。
その計画を邪魔されまいと、イタチがシスイを殺害した――というストーリーができあがると思われます、
しかし、今までの【変貌と疑惑】で見てきたように、
このストーリーには辻褄の合わない箇所がたくさん存在します。
例えば、このストーリーに則るなら、
シスイを"自殺に見せかけて"殺すよりも、殺したシスイを隠してしまう方がより事を荒立てずにすんだものを、
わざわざ事を荒立てているのは、仮にイタチが犯人だとしても冷酷冷静とされるイタチが見せる対応とは思えません。
そして、このような意味深めいた遺書をイタチがわざわざ捏造するのも甚だ疑問なのです。
遺書の内容を肯定する(シスイが書いた)観点から、この遺書を見てみた方が良いでしょう。



この遺書を意味深めいたものにしているのは次の2点です。

  • このままではうちはに未来は無い。
  • “道”に背くことは出来ない。

特に重要なキーワードは“道”でしょう。

  • これ以上“道”に背けない→うちはに未来はない

という流れが想像できると思われます。つまり、シスイとは

  • 今まで“道”に背いてきた立場

だったのです。ここから考えられるのは当然“道”とは何らかの組織をさしているということ。
そして“道”はうちはの未来を奪ってしまう程に強大な力をもった組織であり、

  • 一族のために“道”に背いてきた

というシスイの姿勢が読み取れます。シスイの姿勢はそのまま一族の姿勢と考えてよいので、

  • 一族は“道”に背くことをしている

ということになります。

2.“道”そして一族の“会合”

この話の流れで思い起こされるのは一族の“会合”です。
イタチが会合に出席するように、フガクが強い口調で説得、強要していた場面で、
サスケが耳をそばだてていたのに気づき、驚くシーンがあります。(フガクだけでなくミコトも。)

「こんな夜中に何をウロウロしてる。さっさと寝ろ!」

とサスケに強い口調で言っていますので、一見、サスケに対して驚いているかに見えますが、
夜中明かりも点けずに行われていたことから

  • 耳をそばだてていた何者かに気づかなかった

ことにハッとしている描写だと言えるでしょう。
つまり会話を立ち聞きされては困る内容だったわけです。
なぜフガクはこの会話を悟られまいとしていたのでしょうか?


そこで先ほど考えた

  • 一族は“道”に背くことをしている

を適用すると合点がいきます。
つまり、“道”に悟られまいとする、悟られてはならない会合だったのです。
【変貌と疑惑1・一族と中枢】*1では、

  • 一族と里の中枢をつなぐパイプとしてのイタチの役割

について考えました。里の中枢――火影以外の別の何かがおぼろにゆらめきたつ様が見えるようです。

  • 里の中枢=“道”

です。お分かりの通り、一族は里の中枢=“道”に悟られてはならない内容の会合を開いていた――ということは、

  • 一族は何かを目論んでいた。

ことになります。そしてシスイは“道”にこのことを捕まれたことを悟った。
あるいは、「うちはに未来は無い。オレにも。」とある通り、酷く思い悩んでいた文面と受け止めれば、

  • “道”にすでに何らかの尋問を受けていた。

と考えられます。


しかし、ここで一つ疑問が生じます。警務部隊の3人の態度から、

  • 一族にこの危機的状況を報せるのは遺書を残すのみで、自分の口からは一切何も告げなかったと考えられること。

少なくとも一族を誰よりも思いやっていたとするなら、
この危機的状況を自分の口で説明してから自殺するのが自然です。
そのチャンスは“会合”に他ならないのですが、その“会合”直前で自殺しているのは明らかに不自然です。
この理由には以下の二通りが考えられます。

  • 【トビについて3】*2で見たようにトビ=シスイ
  • 一族の会合の内容の秘密をばらしてしまったのは、他ならぬシスイ自身だったから

前者は【トビについて4】で検証します。
今回は後者だとして考えてみましょう。

3.シスイが裏切り者

シスイが一族に対する強い思いがあったものの、
“道”に一族の会合の“秘密”を何らかの形で報せることになってしまったのでしょう。
一族への強い思いを持ちながらも、その一族への裏切りを働いてしまった。
そのやりきれぬ後悔と償いから自殺した――と考えれば遺書の内容、そして会合の日に自殺した理由も合点がいきます。

「見た目や思い込みだけで…人を判断しない方がいいですよ。」

というイタチの言葉はこの場合、

  • 一族のために先だってどんな任務をもこなすシスイが、一族を裏切った。

ことの皮肉と解釈できます。
またこの場合、シスイは一族への信奉者であるので、
イタチに暁(思想)の影響を与えたのはシスイではありません。

  • 一族のために弟分であったイタチすら監視する

ことも腑に落ちるでしょう。


ともすると、イタチは一族に対して憤ったのは、

  • “一族”という柵<しがらみ>でシスイをしばりつけた為に、シスイが自ら命を絶った

という考えのもと、シスイを悼んでの行動だったのかもしれません。
だとするなら、前々から一族一族という柵<しがらみ>に愛想をつかしていたイタチが、
これを起爆剤にいつになく激情を表したのも納得がいくところです。