"道"

"道"――【変貌と疑惑5・シスイの遺書】 *1では
里の中枢ではないだろうかという考察をしました。

「うちは一の手だれ…瞬身のシスイと恐れられた男だ。
 一族の為ならどんな任務でも先だってやる男だった。」
「そんな男がこんなモノを残して自殺するとは考えづらい。」

イタチに、シスイが自殺だとするのは疑わしいと告げるイナビのこの台詞は、
遺書の内容に目がいかなかったのではなく、
遺書の内容がわからなかったから、とも考えられます。

〈"道"に背くこと〉と、〈うちは一族の未来がないこと〉が結びつかなかった――、
ピンとこなかった――というのは、つまり大まかに次の二つに分けられるでしょう。

  • "道"がシスイに自殺を迫るような存在ではない、と認識していた。
  • シスイの言う"道"が何を指すのか分からなかった。
"道"がシスイに自殺を迫るような存在ではない、と認識していた。

【変貌と疑惑5・シスイの遺書】(*1)において示したように、
"道"が里の中枢であり、シスイが背いてきたものだと考えました。
一族が完全に"道"を出し抜いていると侮って考えていたか、
あるいは"道"に裏切られるとは予想だにしてなかったかのどちらかでしょう。
うちは虐殺事件は、何かを企んでいた一族の密会に関与したものを
中枢からの命令で一族ごと暗殺した事件――。
うちは一族が邪魔になった、危険な存在として認識された――。
そう考えられます。

シスイの言う"道"が何を指すのか分からなかった。

遺書にあまり興味を示していない点から、
遺書の内容をうまく汲み取ることができなかった――と考えることもできます。
警務部隊の三人には大して重要でないこと、しかし、イタチはピンと来たもの。
"道"とは一族本来の在り方を指しているのではないかと思われます。
「任務に疲れた――」
一族想いだったからこそ、シスイが今の一族の方針に対して絶望を示した言葉。
うちはに未来はない――というのは、一族の本来の在り方を忘れて、
うちはに似つかわしくないことをしている(=密会の内容)から。

「オレの"器"は、この下らぬ一族に絶望している。」

と言ったイタチ。シスイもこれに近い心境だったのかもしれません。
ただ、同じく絶望していたにしても、シスイはイタチを監視していた。
つまり、この立場で考えるとシスイは明確に一族の滅亡を願っていなかった――といえます。
イタチに関しては白黒つけがたいですが――。


"道"に逆らうことはシスイに死を選ばせるほどの苦痛だったのは明らかです。
“道徳”としての"道"なのか、
未来の木の葉へとつながるという意味で中枢としての"道"なのか――
何れにせよこの事件の核心部分となるキーワードと言えそうです。