イタチ関連の時系列考察に関して一息ついたところで、
うちは虐殺事件とそれにまつわるイタチに関する不可解な言動や行動、
状況描写に関して少し考えてみたいと思います。
今回はシスイ殺害疑惑の前。
フガクとイタチの言い争いを中心に見てみましょう。

1.イタチ11歳目前(内定任務)

舞台は木の葉警務部隊本部の前。
イタチがサスケを負ぶいながら、

「何で警務部隊のマークにうちは一族の家紋が入ってるの?」

というサスケの質問に、少し微笑んで説明しだすイタチ。

「うん…。そうだな。簡単に言うと、この警務部隊を組織し設立したのが、
 うちは一族の先代達だったらしい。
 だからこの組織のシンボルマークに自分たちの家紋をつけたのさ。
 昔からうちは一族はこの里の治安をずっと預かり守ってきた。
 うちはの家紋はその誇り高き一族の証でもあるんだよ。」

このとき彼は10歳の中忍。そして明日には暗部入隊の内定任務があるにも関わらず、
弟の手裏剣術の修行につきあってやるという優しくそして人間味があるイタチです。
そして、一族の家紋のことを説明する際に、言った内容。
うちは一族としての誇りや信念を持っていて、それを弟に教え諭すかのよう語り口調。
少なくともこの時はまだ一族に対して見限った様子はない、と言って良いでしょう。
その後、父親とのやりとりでも、婉曲的に、

「忍者学校の入学式には身内が参列するのが通例。
 通達もあったでしょ…父上。」

と言って気づかせるところなど、弟への気遣いや優しさに溢れています。

2.イタチ11歳5ヶ月〜11歳6ヶ月

サスケのアカデミーが始まって、しばらくすると、
障子の向こう側で父親がイタチの暗部入隊を褒めているのをサスケが聞く描写があります。
そして成績表を見た父親にかけてほしい言葉をかけてもらえなくて、肩を落とすサスケ。
その次の描写、フガクとイタチが言い争う描写に注目してみましょう。

「何だと? 明日がどんな日かお前も知っているだろう!!
 お前は自分の立場が分かってない…!」
「オレは明日任務に就く。」
「何の任務だ!?」
「……それは言えない…。極秘任務だ。」


「イタチ…、お前は一族と里の中枢を繋ぐパイプ役でもあるのだ…
 それは…分かってるな?」
「ああ…」
「それを肝に銘じておけ。そして明日の会合には来い。」

この後、サスケの気配に気づいたイタチが、サスケにそれとなく注意を促します。
そして大きく驚くフガク、そしてミコト。
フガクは声を荒げてサスケを叱ります。


この時点で、父親相手でもかなりイタチの口調が変わっている点に注目してください。
明後日のシスイ殺害疑惑で、暗部入隊から半年ほど(誤差あり)の事件だと判明するので、
イタチはその卓越性からおそらく暗部でもかなりの手練となっている頃の出来事でしょう。
イタチにも威厳が出てきた、とも考えられなくはないでしょうが少し違うようです。

ところで、サスケの言うように、
なぜこの会話は夜中に行われていたのでしょうか? しかも明かりも点けないで。
この話の中心となってる議題とは、イタチが

  • 一族会合にイタチが出るか出ないか

であり、普段優しい表情しか見せないミコトすら険しい顔をしています。
イタチに確認するように言うフガクの言葉から、

  • イタチは一族と中枢をつなぐパイプの役割を“しなければならなかった”

と言えるでしょう。そして、フガクの言う“自分(イタチ)の立場”とは、
このことを指し示しているのだと思われます。
言い換えれば、イタチの一族における立場とはすなわち、

  • 一族と里の中枢をつなぐパイプ

であり、なおかつイタチの暗部入隊をフガクが強く熱望したのも、このために他ならないでしょう。
これはある意味、うちは一族が里の中枢とつながりを持ちたかったことを意味します。
木の葉警務部隊という里から一目おかれる組織にあっても、
近づくことができない、または許されない里の中枢。
一見、里の中枢とは火影…に見えるでしょう。

うちは一族が中枢とのつながりを意識するのは、なぜでしょうか?
暗部部員としてはエリートのうちは一族ですから、
イタチ以外にも暗部で働く忍びはいておかしくはない。
(後にシスイ殺害疑惑のときに警務部隊とつながる暗部のルートがあるらしいことも分かります。)
父親は里の“中枢”とつながりのあるイタチの会合出席を強く望んでいます。
イタチでなければならない理由があるのです。
そしてうちは一族はその“中枢”に近づかなければならなかった。
必然的にある仮説が生じます。

  • イタチの所属する暗部は“中枢”につながる特別な暗部だった。

つまり、“中枢”とつながる暗部とは単純に、
【火影直轄部隊としての暗殺戦術特殊部隊】
ではないことをほのめかしているような気がしてなりません。