重ねられた境遇

終末の谷での戦い――、
そこはかつて木の葉の里を創った二人の偉大な忍が戦った場所。

「木の葉の里を作った、この像の二人の運命と同じように。」

とカカシがナルトとサスケの戦いを初代とマダラの戦いに重ね合わせています。
それを強調するかのように、決戦が始まる前、ナルトは初代の像の上に、
サスケはマダラの像の上に立ちお互いを見据えます。

サスケは力を求めて里の外へ、
一方のナルトは闇に染まろうとするサスケを引止めに、
終末の谷での決戦という奇しくも二人の運命を暗示するような描写。
おそらく初代とマダラも似たような構図だったと思われます。

「その瞳力とワシ以上に禍々しいチャクラ…、かつてのうちはマダラと同じだな。」

サスケに向かって言った九尾の言葉は、ある種サスケの中にマダラを感じたのかもしれません。
サスケは、そう、チャクラだけで言えば“マダラと同じ”なのです。
そして九尾をも口寄せしうるマダラの力――、
自分より禍々しい…、と“九尾すら恐れる力”であることを暗に仄めかしています。
そんな強大な力が闇に染まってしまえば、惨憺たる光景は目に見えている。
初代はそれを止めたかった。かつての同志であり、ともするとかけがえのない“最も親しい友”を。

「その前に額当てをしろ。待ってやる。」
「違うっ!! これは木の葉の忍として対等に戦う証だって言ってんだよ。」

ナルトがサスケとが激突する前にナルトが言ったこの台詞。
おそらく、初代とマダラの戦いでもこのようなやりとりがあったと思われます。
初代の像は額当てをしているのに、マダラの像はしていない。
マダラは木の葉の里にあった自分と決別をしている、ととれるでしょう。

「ああ…目ならとっくに覚めてる…
 仲間とつるんで平和ボケしたお前らとの未来を…夢見るバカなオレからな。
 だから里を出た! だから力を求めた!」

マダラが木の葉を抜ける、とすればそれは力を求めたからなのは想像に難くないです。
力――、といってもそれは人が手にすべきでない邪悪な力。
あるいは神に近い力かもしれません。六道仙人のような。
しかしなぜ、マダラはそんな力を求めたのでしょうか?
復讐? それとも大蛇丸のようにこの世の真理を解き明かすため?
長門について2】*1で、
人を大きく変える「喪失」に触れてみました。
同様に絶対的な力を欲する根底には必ず「喪失」があるものです。
サスケも「父」「母」そして「優しい兄」を失うことで、「兄」を憎み続け、
「兄」を超える力を手にすることを望みました。
マダラも同じように力を欲さざるをえない「喪失」を経験したに違いない。
やはり「愛する人」を失った悲しみではないかと思われます。