544 『二つの太陽』

忙しさが尾を引いています。
遅れ遅れになってます(x_x)
すみません。

1.二つの太陽(1)

綱手とエーが本部を出てから、
白ゼツによる撹乱に対して、
この状況をいかに打破するかに力点をおいて、
シカクは考え倦ねる様子。
しかし火影である綱手、雷影であるエーによって、
人柱力であるナルトやビーは止められることを
前提とした上での話です。
綱手との連絡役であるカツユは
彼らがどのようになっているかを知る立場であり、
綱手と連絡するように促しますが、
聞き入れてもらえず、どうしようかと困惑しています。


一方でその綱手や雷影はというと――

「"お前はオレにとって特別な存在…
 オレ達は最強タッグだ"と、
 …確かにそう言った…。
 あれだけ…たったあれだけの言葉で、
 強くいられるというのか?」

ビーが強くいられるその理由。
実感がわかない雷影は、ビーに訊ねます。

「里や国にとってのオレだけじゃねェ!
 ブラザーにとってのオレだ。

もちろん"言葉"は"言葉"でも、
そこに込められた想いがあるからこそ、
ビーの奥深くから突き動かすような力を与えてくれるのです。

「だがブラザーはオレを守ろうとするあまりの気遣い♪
 オレの力を信じなくなっていった毎回♪」

しかしエーは弟を大事にするあまり、
守ろうと考えてしまうあまり、
ビーが考えていること、
ビーもまたエーを大切に想っていることが
次第に見えなくなってきていたのです。

「人柱力になれば色々なもんなくして 心ガリガリ
 でもだからこそなくしたくないもんが
 光って見えてくる 心ピカピカ♪」

人柱力となれば、それはある意味で尾獣の変わった姿であり、
まわりは自分自身を見てくれなくなる。
"自分"という存在の一部(あるいは大部分)を
"尾獣"に削り取られてしまうのです。
しかし失っていくからこそ、
その失っていくものが如実に見えてきて、
殊更"失いたくないもの"や"大切なもの"が見えてきやすいのです。

「尾獣だけが力の基じゃねェ オーケー!?
 尾獣が入る前に入ってたもんが光だしたら
 太陽ぐらいでかかったと気づく大事<おおごと>♪
 それこそが力の基だと気づく大筋♪」

そしてその"失いたくないもの"や"大切なもの"は、
尾獣に存在を削り取られていくなかで、
"自分"という存在を照らし出してくれる"太陽"。
"自分"が存在する確たる根拠となり、力となり、
そして尾獣にも負けない強さとなりえるのです。

「だからこそオレは八尾を唯一コントロールできたと確信♪
 ナルトの中にもその太陽がある各人♪
 しかもそれが二つもあるのが革新♪」

ナルトもその"太陽"のような存在
――"大切なもの"があって、
それは二つもあるのだとビーは見抜いています。

「…そうだな…。
 確かに太陽みたいなもんかもしんねェ…」

ナルトを強くさせる"太陽"…
ナルト自身も分かっています。

うずまきナルト
 お前のその二つの太陽とは何だ?」

と問いかける雷影に、
自信に満ちた表情でナルトは答えます。

父ちゃんと母ちゃんだ!!

父:ミナト、母:クシナ の存在。
彼らがナルトをとても大切に想ってくれていたこと。
そして彼らに託されたもの。
それらはナルトの中の"太陽"であり強さの源です。

しかしナルトが生まれて間もなく二人とも亡くなりました。
それなのにナルトがこうも両親のことを大切に思えるのか、
雷影にナルトはこう言います。

「この九尾の力を手に入れる時、
 父ちゃんはちゃんと母ちゃんに会わせてくれた!
 九尾の封印を開くと、
 母ちゃんがオレに会いに来るよう、
 チャクラを仕込んどいてくれたんだってばよ。
 オレのために!!」

嬉しそうに話すナルトを見て、
雷影は察します。

「(うずまき一族特有の封印術を教わっていた四代目火影
  それにクシナのあの強いチャクラと生命力…
  あながち嘘でもなかろう…)」

生まれてすぐに亡くなった両親――
でもナルトが彼らをまるで見てきたかのように知っていることは、
ミナト、クシナの秀でた忍術やチャクラがあったからこそ、
と十分確信できます。


さて、少し脱線しますが…
エーはミナトの実力は肌で感じているのは、
先の物語の通りなのですが、*1
まるで実感がこもったように
クシナのチャクラのことを口にしているのは、
クシナとも戦ったことがあるからなのでしょうか?
そうでなくても次の可能性を考えることも出来ます。
ミナトがエーやビーと対峙したとき、
影の座をかけて戦うかもしれない、と言っていました。
つまりこの時点では先代雷影、エーの父親はまだ存命で、
クシナが幼い頃、クシナの特殊なチャクラを目当てに、
クシナを攫おうとしたのは先代雷影の代である可能性が高いです。
父親の側にいたエーが、
クシナの特殊なチャクラをこの頃知りえたとしても
おかしくはないと言えます。

2.二つの太陽(2)

「この力をくれた時、母ちゃんが全部教えてくれた。
 父ちゃんは昔一度、今の面してた男とやり合ってて…
 …そんでその時確信した事が二つあるって」

ナルトは母クシナとの邂逅で、
教えてもらったことを包み隠さず話します。

「一つは…その面の男が、
 この先必ず災いをもたらすって言った。
 そんで二つ目は――
 それを止めんのが人柱力として、
 九尾の力をコントロールしたオレなんだって!」

とナルトの話を聞いて、雷影は、

「(面をした男…マダラの事か…
  やはりあの木ノ葉九尾事件は、
  マダラの仕業だったのか…)」

と納得しています。
雷影自身も木ノ葉隠れで起きた九尾事件は、
あまりに唐突すぎて、
腑に落ちないところがあったのだと思います。

「(ミナトがナルトに九尾を封印し、
  その封印を開ける鍵まで残したのは、
  このためだったのか!
  確かにあいつは無駄な事をしない奴だった…
  …つまりそれ程面の男、
  マダラが強く脅威であると判断したんだ。
  九尾の力をコントロールした者でなければ、
  倒せるような敵ではないと…。
  だからナルトに…!)」

九尾を己が子に託した経緯を、
綱手は理解します。

「ミナトは…お前に全てを託したという事か?
 己が救世主ではなかったと…」

(雷影の認識では)救世主ともてはやされたはずのミナト。
簡単に降りるように息子にその命運を託したのでしょうか。
雷影は訊きます。

「父ちゃんが自分の事を
 救世主と思ってたかどうかは分からねェ。
 けどオレの師匠は父ちゃんを予言の子…
 救世主だって言った。」

どちらかといえば、ナルトの認識の方が正しいでしょう。
予言の子としての自覚があったというより、
ミナト自身がそれが良かれと思って行動した――と。

「さっき言った事を覚えているか?
 その救世主ミナトは死んだ。
 …これを失敗でなかったとお前は言うのか?」

くどいようにそう訊きなおす雷影。
雷影自身もすでに分かってはいるでしょう。
しかしナルト自身からちゃんと聞いておきたい、
という気持ちがあったのだと思われます。
ナルトを行かせるために。

「確かに父ちゃんは死んだ…
 母ちゃんと一緒にその敵と九尾から、
 木ノ葉の里を守り抜いて!
 オレを守り抜いて!
 …ほんの一瞬だったけど…、
 その時に二人がオレにくれた…。
 すっ……げーいっぱいのもんが、
 やりきれるんだってオレを信じさせてくれる!!
 救世主もオレに託したんだ!!」

その想いがあるからこそ
ナルトは強く在れるし、突き動かされるのです。

「雷影!
 ナルトを殺し敵の目的を先延ばしすれば、
 今度は必ず九尾を取られるぞ!
 それこそ世界が終わる!
 ナルトだから九尾の力をコントロールできたんだ!
 ミナトがそう信じたとおり!
 ナルトを行かせる事が忍を皆を守る事になる!!
 私はナルトに賭ける!!!
 お前の判断は!?」

ナルトの中の強さ――
それが何なのか確信した綱手
さっきまでとは違って、
迷いを吹っ切ったようにナルトに加勢します。

「オレもだぜ バカヤロー! コノヤロー!
 オレはブラザーの言う通り大バカだ やっぱり♪
 そんでここに居るなるとも大バカで間違いない厄介♪
 けど事を成しとげるのは、
 壁の強さと大きさを顧みない大バカで間違いない ヤッホー♪」

とビー。
そんなビーをいきなり殴り倒し、
雷影は雷遁で自身の活性を高めます。
唐突すぎる臨戦態勢に、
今度は綱手も手を出すことを厭いません。
綱手を巻き込むわけにはいかないと考えたナルトは
いち早く動き出します。

「オレってば色々託されてるもんがあっから――――」

雷影の横をすり抜けようとするナルト。
当然雷影は瞬く間の速さで追いつき、
それを阻止しようと拳を振りかざします。

「失敗はしねェ!!!」

その最速の拳をかわし、雷影を突破したナルト。
まるで捕えることができない"黄色い閃光"のようでした。

「雷影のオッチャンの言う通り…
 失敗したら救世主じゃなくなっちまう。
 だから絶対失敗しねェ。
 父ちゃんがそうしたように!
 救世主の父ちゃんから学んだように!!!」

とナルト。
父母の託してくれたもののためにも、
前を進むことに決して臆することはない――
戦争や憎しみを何とかするためにも。

「フッ……。
 …ワシなりに確かめたくてな…
 殺す気で攻撃した。
 このワシの最速パンチをかわしたのは、
 お前で二人目だ。」

そうでなくては、というように雷影は言います。

「どうやら救世主は生きているようだ…
 お前の中で…。行ってこい…」

ナルトを行かせることは連合軍の命運を託すも同じ。
そのことに最も拘っていた雷影も、
ナルトの中の本当の強さを見て、
ついにはナルトに全てを託します。

「オウ!!」

それに力強くナルトは答えます。


さて、トビは人柱力たちを輪廻眼で操り、
ペイン六道として参戦させるつもりのようです。
しかもその目は写輪眼と輪廻眼という最強のオッドアイ
世が開け、また戦局に一波乱ありそうです。

*1:542話:『最強タッグ秘話!!』