543 『捨てられねェ言葉』

最近、また忙しくなってきたので、
記事が遅れてしまってすみません(x_x;)


さて、捨てられねェ言葉――
誰にでもあるでしょう。
"想い"を伝える"言葉"。
"言葉"に"想い"が込められたものであれば、
受け取った人は大なり小なり、
影響を受けるものではないでしょうか。

今回もなかなか深いですね…

1.捨てられねェ言葉(1)

「たわごとを言ってごまかしても、
 逃がしはせんぞ!」

勝負を預けたように背を向けたミナト。
しかしここで終わる道理はない、
そう判断したエーは、

「(瞬身の術で飛ぶのはクナイの場所だ…。
  マーキングの術式が描かれてる。
  クナイの場所はほぼ把握した…。
  次にどれかのクナイのところに
  現れると決まっているなら、
  オレの最速でやれる!)」

ミナトの飛雷神の術を見抜いた上で、
あえて勝負を仕掛けていきます。

「失敗はしないよ。」

しかしミナトが一枚上手でした。
さきほどビーが伸ばした八尾の尾足に、
しっかりマーキングがしてあったのです。
抜かりはなかったミナト。
エーはいまにも地団駄を踏むような表情です。

「相討ちなら覚悟!
 刺し合うか相互!?」

でもビーの背後をとらえたはずのミナトの手がとまります。
刺し違えるのも覚悟と、
ビーが背後をとられたと同時に刃を向けていたのです。

「敵だけど…君は気に入ったよ。
 まさに忍キラーな動きだよ。」

ミナトもビーの実力を讃えるのですが――


昔のことを思い出していた雷影。
ふと我に返るとナルトが隙をぬって、
前に進もうとしています。
それをまさに迅雷の如く止める雷影。
しかしナルトは諦めていません。
もう一度行こうとするのを、やはり雷影は止めます。
宙空でナルトに注意が逸れているところで、
ビーがラリアットにいきます。

「お前の雷犂熱刀でワシに勝てると思っているのか!?」

と雷影はあえてよけなかった様子。
組み躱し、後ろ向きに拳打を放ってビーをやり過ごします。
ナルトに焦点をあわせたように突進しようとする雷影ですが、
身体が動きません。
八尾の足が身体をとらえていたのです。

「どうしてだ、ビー!!?」

そこまでして、ナルトを行かせようとするビーに、
雷影は困惑します。

「まだ分からねーのかブラザー!
 バカヤロー! コノヤロー!」

と返すビー。

「ありがとう。
 ビーのおっちゃん!!」

今度こそ、と雷影を抜けていこうとするナルトですが、
雷影は自分に絡みついたタコ足を逆手に取り、
ビーをナルトにぶつけるという機転を利かして阻止します。

2.捨てられねェ言葉(2)

「火影!! キサマも手伝え!」

動けずにいる綱手に、
雷影は加勢するように言います

「(オレは火影になるまで、
  ぜってェ死なねーからよ!!)」

綱手は、何度倒されても諦めず
真っ直ぐ前を見据えるナルトの目を見て、
かつて自分に向ってきたときのナルトをかぶらせます。
そして決断するのです。

「……火影…貴様…
 できのいい言い訳はできてるんだろうな!?」

ナルト側に立った綱手に、
冷ややかに雷影は言います。

「もしここでナルトを殺し、
 九尾復活までの時間を伸ばしたとしても、
 次の人柱力がここまで九尾の力をコントロールできるとは思えん!
 どうせどっちに転ぶか分からぬ戦争なら力いっぱい
 出しおしみ無しでやるべきだ!
 私はナルトを行かせる!」

綱手は亡くなったダンや縄樹をナルトに重ねた時期もありました。
火影になるといって、祖父のペンダントを受け取るも、
死んでいった最愛の人たち――
そしてその心の傷から綱手は血を極度に恐れ、
自分の進むべき"前"をまともに見ることができずにいたのでした。
しかしナルトの真っ直ぐさは、そんな自分をも変えたのです。
"火影になるまで絶対死なない"、という言葉。
それは綱手にとってナルトが言ってくれた"捨てられねェ言葉"
ナルトなら何かを変えることができる――
雷影をうまく説得する言葉は
当座のものでしかないようなものしか浮かばなくても、
何か確信めいたものが、
ナルトを行かせてもいいのではないかと、
綱手に囁いたのです。

「火影…。貴様こそ勝手な自己判断じゃないのか!?
 どいつもこいつも…
 なぜナルトがやれるという保証がある!?」

当然納得できないといった様子の雷影。

そこへビーがラリアットにかかります。

「……お前ごときの雷犂熱刀は効かんと言ったハズだ!」

先ほどのように返り討ちにするつもりの雷影。
しかしビーはその反撃に来た拳をとめます。

「ブラザー…。
 雷影になってからオレの力を見誤ってるぜ。
 バカヤロー! コノヤロー!」

力で押し負けないビーの拳に驚く雷影。


先代雷影――エーの父親が戦争で亡くなり、
葬儀が執り行われた日、
涙を流しながらエーは誓いました。

「今は戦争中だ!
 オレが雷影として里と国を守り抜く!!
 それが親父の意志だ!」

しっかりするように慰めにきた弟の前で、
そう強く言ってのけたのです。

「ビー! お前は今日より雲雷峡に入り、
 尾獣玉の訓練をしろ!!
 お前を敵には接触させん!」

そして父親を失った悲しみと、
弟を想うあまりエーはビーに
里から外に出ないように命じたのです。
万が一の場合は遠距離攻撃である尾獣玉を使って、
近接攻撃である雷犂熱刀のことは、もういい、とも。

「ビー。お前もナルトも大切な人柱力だ!
 里と国にとって特別な存在…。
 …だからこそ行かせんと言っているのだ!
 いくら強い人柱力と言えど、
 他の人柱力は全て"暁"…
 敵によってやられ封印されたのだぞ!!」

結局エーはもともとビーやナルトを殺すつもりではないのです。
父親のように戦争で無残に散ってほしくない――
ただ彼らを止めたい――
良く言えば我が弟を想うあまり、
悪く言えば弟かわいさゆえに、
彼らを戦場に出したくないから、
この場を譲ることができないという気持ちがどこかにあって、
しかしそれを直接見せることができず、
結局不器用なまでに拳で語らうことしか
彼には出来なかったというわけなのです。

「オレもナルトも負けやしねェ自信!
 それが分かってるオレ達自身!」

向ってくるビーに雷影も応えます。

「…よかろう!
 ためしてみろ!
 ワシの雷犂熱刀とどちらが上か!」

お互い全力で激突します。
――決着はあっという間でした。

「オレもナルトも人柱力だけが力じゃねーからだ♪
 もっと強えー力になる基が入ってるこの体♪

 八尾をもらう前にブラザーからもらった
 オレ個人として捨てられねェ言葉♪
 それさえあれば強くいられると信じられる殊の外♪」

【心に秘めた大切なものと真の強さ】*1で述べた中核になる決定的な要素とは――
兄の言葉、兄の想い――
それがあるからこそ強くいられる――

「お前はオレにとって特別な存在だ!
 オレ達は最強タッグだ!!」

殊の外、言葉を大切にするビーだからこそ、
兄のこの言葉はとても胸をうち、
ビーを強く大きく成長させたのです。

「あの時…真実の滝の前で言った…
 あの言葉が…」

そう言って目を丸くするエー。
"心の穴を埋められる何か"
それが自分の"言葉"であり、
それに込められた"想い"であったことに対する驚きでしょうか。

「やっと気づいたか
 バカヤロー コノヤロー!
 上から目線でブラザーに説教…
 妄想じゃなくなったな アイエー♪」

穴を埋めるどころか、湧き出すような強さ――
それはビーに尾獣をも克服させ、
そして雷影である兄をも超える力を身につけさせたのです。