542 『最強タッグ秘話』

遅れてすみません。
最近濃い回が続いていますね。(^o^)
今回もイタチ&サスケ兄弟のとき以来の
NARUTO-ナルト-上重要なテーマが関わってきて、
深い回でした。

1.最強タッグ秘話(1)

数々の死線をお互いを信頼しあって
くぐりぬけてきたエーとビー。

「おそらくオレの次はこの子になる。
 お前は上層部からそう聞いているんじゃないのか?」

エーの従兄弟であり八尾の人柱力である忍。
ある任務のとき、ビーが寝静まってから、
エーに語り始めます。

「オレのオヤジもおじさんも皆失敗した。
 おそらくオレも適合できていない…。
 いいか従兄弟としてオレの――」

この人物は人柱力として一角の人物なのでしょう。

「だが今こうして八尾を、
 ここまで押さえ込みコントロール…」

エーも思わず口を挟みますが、

「いいから聞け!」

そういってエーの従兄弟はエーを制します。

「…人柱力になった者しか分からん。
 …今まで普通につき合いがあった人々の目が変わる…。
 イヤ…相手は普段通り接しているつもりだろうが、
 そうじゃないのが分かってくる。
 見返りもなく…自分の歩く先が見える。
 …ただ暗い場所へ向っていく恐怖と孤独…
 適合できたのかどうか?
 死を隣で感じながら歩く…。」

人柱力となることは、
周囲の見る目が変わるのと同時に、
ただただ真っ暗な先に死しか見えないレールの上で、
いくらもがき苦しんでも突き進まないといけない日々を
歩まされ続けられること…
それすら覚悟して人柱力となっても、
尾獣をおさめるため修練を怠ることなくても、
常に尾獣が暴走するかもしれない恐怖と隣り合わせでいるうちに、
その不安に押し潰されそうになって、
ますます光が遠のいていくような感覚――

「それらにとらわれ来る日も来る日も考え、
 自分が何なのか分からなくなってくる。
 心に穴が開いた気がするんだ…

 尾獣はその弱った心を狙い暴走をしかけてくる。」

そうしているうちに自分が何だか分からなくなり、
何を目指していいのか、
何を頑張ればいいのかも分からなくなってしまう――
希望などなくなってしまう…
この人物はそう考えているのでしょう。
そしてそんなときこそつけいれられる機会。
弱い心を突く――
人柱力としての制御力は弱まって、
尾獣にしてみれば暴れることで出やすくなるというわけです。

「死ぬ恐怖ばかり考えていると…
 死にたくなる…」

さもなくば心を恐怖が押し潰そうとして、
とても生きてはいられない心境なのでしょう。
生き地獄です。

「…でも…お前は忍術センスも能力も血統も人徳も、
 全て持ってる!」

エーは世迷いごとめいた事を言う従兄弟を
強く肯定します。

「ああ。だから、そうして合理的に、
 八尾の人柱力として選ばれた。
 だが人柱力に本当に必要なものはそんなものではない…」

忍術、能力、血統、人徳…
それら周囲から見て
明らかに秀でていると見えるものを持っているから、
人柱力が務まるというわけではない――

「その心の穴を埋められる何かだ!」

心の穴を埋められる何か――

「何かだ!! それさえ見つかれば…
 強くいられる気がする…。
 ビーにはそれを見つけさせてやれ…」

そこまで悟っていた先代の八尾の人柱力。
しかしその矢先、尾獣の暴走で亡くなってしまいます。
(自ら含む)8人を巻き込んだ八尾の暴走です。
粛々と営まれる葬儀。
いつまでこんなことが続くのだろうか…
渦巻く不安感とやるせなさの中、

「かなり名誉 八尾の称号♪
 だからアンタ焼香♪」

破天荒な調子で先代の弔いを捧げるビー。
周囲が次の人柱力としては
期待できないだろうといって肩を落とす中、
エーは何も言わずビーを見ていました。

2.最強タッグ秘話(2)

また別のある任務の時。
タッグを組んだ二人は、
岩隠れの忍を伝統技ダブルラリアットで倒します。
その帰路で――

「ビー。まだまだオレの理想とする、
 絶牛雷犂熱刀<ダブルラリアット>になってない!
 今はオレがお前の力に合わせてるだけだ…。
 もっと力を付けろよ!」

ビーを伸ばすためでしょう。
エーはビーを軽く叱ります。

「わ…わかってるよー
 バ…バカヤロー コノヤロー♪」

とぷいと顔を背けるビー。

「兄キに向かってバカヤローコノヤローとは何だ!!
 アイアンクローだ!! この!!」

エーの兄なりの愛情なのでしょう。
素直でないビーにアイアンクローをかまします。

「いつかブラザーを追い抜く♪
 その立場でぬくぬく♪」

減らず口をたたくビーに、
エーは言います。

「この技は力を均等にするのがコツだぞ!
 そしたらお前が合わせるんだよ!!」

エー自身もいつかビーが自分を追い抜くことを
悟っているかのようにな話し方です。
ビーの方が自分に合わせる日が来ると――

「オレにとってはそれが理想♪
 上から目線でブラザーに説教を妄想♪」

と調子付くビーに、

「ガハハハハ!!
 そんな妄想は雷犂熱刀を鍛えてからだ!」

と話すエー。
そうやって確固たる信頼をお互いに築き上げていきます。
いよいよビーに八尾を封印する日。

「いいかビー…。
 何かあったら隠さずオレに言え!
 お前は――オレにとって特別な存在だ!
 オレ達は最強タッグだ!」

エーとビーは拳を突き合わせます。


月日は経ち、八尾をおさめたビー。
後に四代目火影となる波風ミナトと対峙します。
エーとミナトの速技の力比べ。
恐るべき瞬足で殴りかかるエーですが、
これまた神速のミナトが飛雷神の術でかわし
続けざまに背後に飛んで会心の一撃
しかしミナトのクナイがエーの背中をとらえる瞬間、
八尾のタコ足がそれを邪魔し、
エーは負傷することなく済みます。
当時はまだ完全制御できているわけではなかったようですが、
エーを助ける一心で一部尾獣化させたビー。

「すばらしき武勇です。
 八尾の人柱力としてではなく、一忍として…、
 強いものをお持ちのようだ。」

ミナトも自らの危険を顧みず、
仲間を助けるために危険な橋をわたって、
見事、"助けきって"、"自らも無事"であるビーを讃えます。

「フン! こいつは才能ならオレ以上だ。」

というエーに、

「いや…そうではなく…
 もっと大切なものをすでに持ってる…。」

とミナトはいいます。

「エー。アナタにはいい身内が居る。
 ……私にも…。
 とにかく次に会う時は、
 互いに影の名をかけたものになるでしょう…。」

すでにこのときミナトは火影に一番近い存在だったのでしょう。
実力者で雷影の実子であるエーも、
将来雷影となることを見越して、
ミナトはこのように言います。
そして、

「…弟さんにとって大切なものが何なのか。
 アナタが早く気づかなければ、
 彼は人柱力でも人でもなくなりますよ。」

そう意味深なことを告げて、
二人の前から去っていくのです。

3.大切なもの

ビーとエーという兄弟。
弟想いであり兄想いである点で
イタチとサスケにダブりますね。
かつてイタチも口にした"本当に大切なモノ"。
ミナトも口を濁しましたが、それをもっています。
(エーに対してビーなので、
 ミナトに対して誰だかは言わずもがな、ですね。)

エーの従兄弟が言っていた人柱力として必要な"何か"。
尾獣が暴走するかもしれないという恐怖を感ぜず、
先の見えない人柱力という運命のレールの上でも、
自ら道を切り開いていける力、
希望を見出して前へ進める力――
背負っているものは大きくても
死ぬことなく、生き続けることに負けない"何か"――

その"何か"だといえるでしょう。

このブログでは、
【忍の生き様、死に様】*1などで
それに従って生きていこうと思う"何か"と表現しています。
希望、信念、愛、絆、つながり、誇り、使命感、何であれ、
"心の穴"をふさげるだけの強さである
"本当に大切なモノ"をビーに与えているといえるでしょう。
さて、このそれに従って生きていこうと思う"何か"は様々で、
それがいつも正しい方向に働くとは限りません。
サスケがもつ"復讐の心"だってそれになり得るし、
もしかしたら強さの源であるということもあります。
しかし結局のところそれは自ら道を切り開いていっているようで、
閉ざしていっているという矛盾に呑みこまれて
必然的に消えゆくはかなき強さです。
人柱力たるにはそんな生半可な強さでは
ダメだということは前述のとおりです。
ではビーの真の強さとは――
"本当に大切なモノ"は本来1通りではありません。
希望であり、愛であり、信念であることもありうる。
これらが組み合わさって"本当に大切なモノ"となります。
でもそのなかで基礎となる土台、
決定的な要素、中核を担うものがあるといえます。
それが何なのかミナトは見抜いているのです。