475 『マダラの真骨頂』

1.マダラの真骨頂(1)

「やる気だな…ダンゾウ。」

うちは一族事件以来の再会も間もなくの戦闘。
どうやら現在の状況において、協力し合うような仲ではなさそうです。

マダラ…奴の能力は未知だ。用心しろ。」

ダンゾウも“マダラ”と呼ぶくらいなので、
本当にトビは“マダラ”なのでしょうか…?
かつてうちは一族事件のとき一悶着があったような気配ですし、
トビ(マダラ)の能力など色々知っていながらも、
あえて“マダラ”と呼ぶなら、その可能性もあります。
ダンゾウは自分の右腕の封印を解きつつ、フー、トルネに警戒を促します。
トルネのクナイ攻撃。トビは避けますが、死角からフーが心転身の術の構え。
しかし察知したトビは柱の中へとすり抜けるように姿を消します。

「柱の中へ消えた。やはり物体をすり抜ける能力はあるようだ。」

研ぎ澄まされた感知能力を持ってしてもチャクラを感知できない状態にあるフー。
その背後にゆらりと表れるトビに気づき、
刀を振りますが、悉く空を斬ります。
フーを完全に死に体にしたトビは拳を振り上げカウンターを入れようとしますが、
そのときトビめがけて一直線にクナイが飛来します。
かわす余裕がないと判断したトビは透明化し、クナイをやり過ごします。
そのはずみか当たっていたはずの拳も透明化し、フーへの攻撃は当たらず。
部分的な透明化はできないのか、それとも、
緊急回避のために透明化するコントロールを誤ったのか…
いずれにしろこの隙にフーは間合いを脱出し、距離をとります。

「感知と心転身の印…山中一族の者か…。」

フーの正体を山中一族と見抜いたトビ。

トルネ:「身を守るために相手の攻撃をすり抜けさせる時は、
   奴の体全てが実体を無くすようだな。」
フー: 「攻撃のために接触をもつ時は実体化する…。
     つまりカウンターを狙えばいい。」

トルネとフーも一瞬のやり取りでトビとの戦い方を見切るほどです。
一人が囮となり、もう一人がカウンターで実体化したタイミングで、
致命傷となる攻撃を入れる作戦で、二人はトビを相手に立ち会います。
囮は術も読まれている、とフーが買って出て、
攻撃役のトルネは手袋を脱ぎ捨て浅黒い両手を露出させます。
しかしその二人の考えを読んでいたトビはそれを逆手にとって、
フーに反撃するふりをして、トルネの攻撃を透過させ、
フーにトルネの攻撃をあてさせるという同士討ちに持ち込みます。
腕を抱えてうずくまるフー。トルネの拳があたった箇所から、
急激に腕が腐りかけていくようにあざが広がります。

「ほう…チャクラを流し込んで細胞を破壊する術か……。
 厄介だな…。」

写輪眼でフーの腕の症状を見抜くトビ。
そしてすぐにある結論に達します。

「チャクラじゃないな。これはナノサイズの毒蟲……。
 細菌に近いな…。
 お前…油女一族の中でも秘伝忍術を持つ忍だな……。
 その蟲の抗体をもつ油女シクロのガキか…。
 “根”に居たとはな…。」

油女シクロとは新しい人物の名前が出てきました。
サイによれば、根とは離散家族の子が多くいるという組織。
当然例外もあるでしょうが、しかし、
己の未来を捨て、感情を殺し、木ノ葉の礎となるべく動く
“根”という暗部組織において、
山中に油女という由緒正しい血筋を持つものがいる…。
親がいない(離散家族)程度であるなら、
一族の名のもと一族単位で面倒をみたりとかあるでしょう。
単純に彼らが一族の中で特に忌み嫌われる存在であったなど、
根に入った理由として妥当と考えられますが、
しかし秘伝をもつまで代々続いてきたとも考えられうるので、
忌避という理由だけでは少し矛盾が生じはしないかとも言えます。
もっと込み入った事情が存在したのでしょう。
――やはり、彼らの正体を見抜くトビ(マダラ?)という人物。
確実に木ノ葉に精通している人物です。
やっきになって身体全体に蟲を回らせるトルネ。
どうやら接触あらば、相手を内部から破壊させる構えのようですが、
裏に回りこんだトビは、その写輪眼でトルネを吸い込んでしまいます。

「右腕が毒蟲に感染してしまったな…」

吸引時トルネと右腕が接触してしまったのか、
トビはその右腕を切り離します。
切り落とされた腕は、血液が漲っていると思いきや、水のような、
とにかく血液とは言いがたいもので満たされているように見えます。

「次はお前だ。」

切り離された右腕をフーに向かって蹴り上げ、
その隙に死角から吸い込み攻撃。
フーも吸い込まれてしまいます。

2.マダラの真骨頂(2)

ナルトの肩を叩く我愛羅
別れ際、背を向けながらナルトに言います。

「オレはお前を友だと思っている。」

ナルトは俯いた顔をあげます。

「かつてのオレにとって“友”とはただの言葉…。
 それ以上でもそれ以下でもなかった。
 だがお前と会って気付かされた。
 大切なのはその言葉の持つ意味だと。

我愛羅は“友”とはただの言葉として存在するものでしかないと思っていた。
けれども、友の“意味”を知ることで、
その大切さを知ることで、自分が何を為すべきか気づけた。
ナルトはサスケを“友”と考えるあまり、
その形骸化した“友”だけを求め、意味に気づけていない――
あるいは気づかないようにしている、と我愛羅にはナルトが映るのでしょう。

「その意味する事が何なのか。
 お前はサスケのために何をしてやれるのかよく考えろ。」

友の“意味”。
闇だけを見ようとしているサスケ。
そしてそのサスケを光に向けさせようとしているナルト。
ナルトがサスケに何を為すべきか。
どういう行動をとろうとも、友という信念のもとそれを貫いてほしい。
我愛羅の言葉はサスケへの制裁を願うというよりもむしろ、
自分を変えてくれたナルトの力を信じるものに近いと感じます。


マダラが吸い込んで異空間にとどめておいたサスケと香燐。
ここから出せ、と急き立てるサスケにトビは言います。

「そう慌てるな。今ここから出してやる。
 外にはお前への土産もある。」

ダンゾウの前に放出されたサスケと香燐。
サスケはその写輪眼で目の前の人物を睨みます。

「うちは……サスケか…。」

なにやら感慨深げにサスケを見やるダンゾウ。

「お前は下がっていろ……。
 巻き込まれれば死ぬぞ。」

そういって香燐を下がらせ、トビ自身も下がります。
トビがダンゾウの前に突如姿を現した目的。
それはサスケにダンゾウと戦わせるためだったといえます。
その背景にはトビの利益になるなにかがあるのは当然でしょうが、
それが何かはまだわからないところです。
しかし、その手がかりはダンゾウの右腕にあるかもしれません。

「ちょうどいい……。お前達の写輪眼も戴くとしよう。」

封印を解いたダンゾウの右腕にはたくさんの写輪眼が。
うちは一族事件…ダンゾウの関与…
うちはマダラ…そして、ダンゾウに右腕にある写輪眼…
これらが意味することはいったい――