476 『サスケ VS ダンゾウ』

1.サスケVSダンゾウ(1)

ダンゾウの右腕でギョロギョロと動く写輪眼。
その光景はおぞましいものです。

「その右腕の眼はどうした?」

居竦ませるような目つきでダンゾウを睨むサスケ。

「色々あってな…。話すと長い。」

ダンゾウは話を省略します。
サスケに話したところで何も変わらない――ということでしょうか。

「理由を聞いたところでさらに怒りが増すだけだ。
 もういい…お前は殺すと決めている。」

サスケも異論はないようです。

「…その前に聞いておきたい事が一つある。
 お前を含む木ノ葉上層部の命令で、
 うちはイタチにオレの一族を抹殺させたのは本当か?」

マダラ(?)の言葉だけでは、
イタチの真実を信じきることはできなかったのでしょう。
いままでのサスケの復讐の念を覆すものであったし、
筋は通ってはいていかにもそうかもしれないと思えても、
まだ100パーセントそうだとは信じきれずにいる――。
それとも、また間違った対象に復讐心を向けないため
無意識下での衝動に近い尋問でしょうか?
ダンゾウを問い詰めるサスケ。
対するダンゾウは何も言わずに印を結び、サスケに向かって拳打。
しかしサスケの須佐能乎に阻まれ、その手で鷲摑みにされます。

「これが“須佐能乎”というやつか…」

見開かれた万華鏡写輪眼。ダンゾウは“須佐能乎”という術と、
その特徴をイタチかあるいはうちはの誰かからか聞いていたのでしょう。
眼の前に揺らめく邪悪な存在をすぐに解釈しました。

「ほう…あれがサスケのか。」

一方でトビはサスケの“須佐能乎”を見て、誰かと比べるような物言い。
その誰かとはおそらくイタチのことになるでしょうが、この言動の背景には
“須佐能乎”の形状が個人によって違うことを含んでいるように思えます。

2.サスケVSダンゾウ(2)

一方ナルトたちは今後の進退について話し合います。

「サクラはボクが付いてます。
 サスケには近づけさせないようにします。
 とりあえずは安心して下さい。」

とのサイの言葉に、いささか不安を拭いきれないといった様子のカカシ。

「とは言っても直接行って説得して、
 連れ戻した方がいいでしょ。」

この状況にあってサクラを説得できるのは確かにカカシだけです。

「よし…! ヤマト…お前はナルト連れて里へ向かってくれ。
 オレはサクラを連れ戻す…。
 サクラじゃサスケには敵わない。死にに行くようなもんだ。

サクラがここを発ってからまだ間もないということから、
追いつくのにそう時間はかからないとの判断をカカシはしたようです。
しかしサクラの覚悟をあっさり否定してしまいかねない
カカシのこの言動はあまりカカシらしくないような気もします。

ともするとサクラの文字通り決死の覚悟を分かっていない、
とも捉えられかねない言動です。
確かにサクラが無謀に打って出ようとしていることを、
早急にとめなければいけない使命感に駆られたとはいえ、
カカシほどの人物であったなら、
「サクラには悪いが」などの言葉が入っていてもいいはず――。
重箱の隅をつついたり揚げ足をとったりするわけではありませんが、
このカカシの台詞に少しだけ腑に落ちない部分があるのは確かです。
「ハァ、ハァ!!」
と突如胸を抱え倒れこむナルト。
様々な人たちの言葉が走馬灯のように駆け巡り、
どう行動したらよいか決めあぐねているうちに、
サスケはしかしどんどん遠い人物となっていく――。
不安と焦燥感が肥大していき、
それが発作的な過喚起症候群(過呼吸)を起こしてしまったのでしょう。

3.サスケVSダンゾウ(3)

サスケは眼が怒号するかのような表情でダンゾウを再び睨みます。
なかなか口を割らないダンゾウを、サスケの怒りと呼応するように、
須佐能乎の手がぎりぎりと締め付けます。吐血するダンゾウ。
そしてついに口を開きます。

「…あいつは…そんな男ではないと思っていたが…、
 イタチめ…。死に際に…全て喋りおったか…。
 やはり…お前だけは…特別だった…ようだな。」

驚いたように目を丸くするサスケ。
やはり真実だった――

「本当…だったって事か。」

イタチの真実はやはり幼いころ自分の慕っていたイタチだった。
憎しみの対象であったイタチは、
木ノ葉という大きい組織の利益のために作り上げられてしまったもの。
そしてそのために一族は鏖<みなごろし>に、
兄弟は引き裂かれなければならなかった――
激しい憤りがサスケの中で再び爆発したことでしょう。

「自己犠牲…それが忍だ。
 日の目を見る事もなく…影の功労者……
 それが昔からある……忍本来の姿。
 イタチだけではない。多くの忍びが…そうやって死んでいった。
 世の中は……キレイ事だけでは…回らん。
 そういう者達の……おかげで…平和は維持されてきたのだ。」

平和を影から支える汚れ役をやってきたダンゾウ。
そしてそれが本来の忍の役割である――と。
確かにキレイ事だけでは世の中は回らない――。
でも、その“世の中”のせいで引き裂かれてしまった兄弟がある。
サスケにはダンゾウの言葉は堪えられないものでしょう。

「イタチの意志を……はき違えたお前には…
 分からぬだろうが……。
 …だがお前に秘密を明かしたイタチは……
 木ノ葉に対する裏切――」

正確にはイタチはその真実を隠したままで、
マダラ(?)によって明かされたのですが――
裏切り――その言葉を待たずして、

「それ以上イタチを語るな。」

サスケの中で激情が爆発し目の前のダンゾウに向けられたように、
須佐能乎の手がダンゾウを握り潰します。

「そうだな次は眼で語る戦いにしよう。」

しかし握りつぶしたはずのダンゾウが背後へ。
影分身だったのでしょうか。
振り返るサスケですが――