634『新たなる三竦み』

1.新たなる三竦み(1)

「アレ…? ん…?
 お前…ガマ吉じゃねーかよ!」

いつもの親分ガマブン太かと思えば――

「オヤジは今、手打ちのゴタゴタじゃけん。
 オレが来たで!! びっくりしたか!?」

すっかり大きくなって、
もうブン太くらいの大きさがあるガマ吉。

「イヤ! イヤ!
 …それより一気にでかくなったな、お前!
 赤丸ン時よりびっくりしたってばよ!」

ナルトはその成長に目を丸くします。

「お前ら人間の成長が遅すぎるんじゃ!
 それより用件は何じゃ!?」

"人間の成長が遅い"――そう言われてみれば、
ナルトの住まう世界には身体の大きな動物がたくさんいます。
人間よりも、自然エネルギーと調和し摂取することが早い…
それゆえ質量をたくさん得られる…としておきます。
チョウジの倍化の術もそうですが、
このあたりは何らかのルールを持っていそうなので、
いずれ記事にしたいと思います。

「オウ!
 奥の方にでっけーの居んだろ!
 アレに大ジャンプで近づいてくれ!」

ガマ吉の迫力に面食らいつつも、
ナルトは十尾の存在を伝えます。

「サスケ様、いかように?」

マンダとは違い、サスケに従順な大蛇アオダ。

「お前は真っ直ぐに進むだけでいい。
 奥の本体はオレがやる!」

とサスケは宣言します。
一方、二人とは違って、
旧世代の大蛞蝓カツユを呼び出したサクラ。

「サクラちゃん。
 ついに白豪の印を発動できたのですね!
 綱手様もきっと…」

とサクラよりカツユの方が、
立場が上であることが垣間見えます。

「カツユ様…、今はそれより…、
 分裂して連合の皆に一人ずつ付いて下さい。
 …私達は回復役です。」

と自分たちの役割を確認するサクラ。
攻撃はナルトとサスケに任せ、
できうる限りの補助と防御を担います。

「まさか…。
 もう一度口寄せ三竦みが見られるとは思わなかった。」

とミナト。
ヒルゼンも微笑んで、彼らを後押しします。

2.新たなる三竦み(2)

敵地を凄まじい勢いで這いぬけていくアオダ。
一足飛びに飛翔するガマ吉。
戦場の忍たちを癒すために分裂したカツユ。
三竦みが今ここに最大の力を発揮します。

「いいぞガマ吉!!
 だてにデカくなってねーな!!」

十尾分裂体の攻撃を難なく弾き、
頼もしさが真下ガマ吉にナルトが一言。

「そがいなことよりのう!!
 はよう術の印を結べっちゃホンマに!!
 頭から振り落とすど!!」

と態度の厚かましさも増したガマ吉。

「分かってるってばよ!!」

とそそくさ印を結び始めるナルトが対照的です。
一方で傷付いた忍たちにカツユの分裂体が届きます。
白豪の印に加え遠隔治療もこなすサクラに、
シズネも心から称賛します。

「サスケ様…」

自らを分厚い壁と化し、アオダの行く手を阻む十尾の分裂体。

「そのまま行け。」

その掛け声とともに、
分かっていたかのようにナルトの螺旋手裏剣が飛来し、
分裂体の壁を切り開きます。
そしてついに本体まで接近するのです。

「サスケェー!!」

同期たち皆の思いものせ、
ナルトとサスケが本体へ究極の攻撃を放ちます。
《風遁・超大玉螺旋手裏剣》と《炎遁・須佐能乎加具土命》。
螺旋手裏剣の風を煽りにつかって、
漆黒の炎が一気にその勢いを増します。

「"火"を助けて大きな力にできるのは、
 "風"の力だけだって事だよ。」

かつてヤマトがナルトにかけてくれた言葉のように、
二人の力は合わさって十尾すら呑み込む
より強大な力となります。

「(あれ程の加具土命を見た覚えがない。
  まったく同じチャクラ比で術を合わせたか…)」

と扉間も感心しきりです。
おそらく《加具土命》は《天照》の上位版と思われ、
万華鏡写輪眼の母数が今と比して多かった柱間扉間の時代でも、
比較的珍しかった術と思われますが、
それでもその大きさや猛々しさは目を見張るものでしょう。

「風車のような手裏剣に、漆の光沢より黒い矢。
 名付けて灼遁・光輪疾風漆黒矢零式…!!
 イヤ…無いな!」

我が子ナルトとその友サスケの活躍を喜ぶあまり、
彼らの合成術を火+風の血継限界・灼遁に見立てて、
術の名前まで考案してしまったミナトお父さん。

「燃え尽きろ…」

ナルトとサスケの迫力を前に、
十尾の分裂体たちも本能的なものか、
少し後ずさりします。

「サスケの言った事…
 君も見て聞いていただろう…。
 彼の本当の狙いは何なんだ…?」

と未だ懐疑的なサイの問いかけに、
「さあな」と言って首を傾げる重吾。

「ずいぶんな様ね…綱手。」

一方、大蛇丸も援軍に駆けつけましたが、
果たして――