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499話『新たなる封印』では
クシナがナルトの前任の九尾の人柱力であることが明かされました。
しかしこれは色々と解釈が難しそうです。
1.前任の人柱力(1)
さて、クシナについて、(40巻)367話『イタチとサスケ』において
から、この時分で(つまり自来也と綱手が話題に上げる彼女の年代では)、
クシナは九尾の人柱力でないことが濃厚としました。
これはクシナ自身が、ナルトに、
かつて雲隠れの忍に拉致されたときの話をする際に、
「…私には少し特別なチャクラがあってね…。
それを狙って雲隠れの里が私をさらった事があったの。」(1.A.2)
九尾の人柱力であるから狙われたのではなく、
特別なチャクラがあるから狙われたと
本人が言っていることからも裏付けられます。
かつ、以下のモトイの言葉、
「人柱力というのは裏切りがないよう、
昔から五影の兄弟や妻など、
近い血縁関係にある人物が選ばれるのが常だ。
人柱力は里長である影を守る力であり、
影の力を誇示する存在でもある。」(1.B)
(1.A.1)(1.A.2)の条件のもと、幼少の頃九尾の人柱力でないなら、
他里からやってきたわけですし、
初代・二代目・三代目いずれの血縁者とも考えにくいことから、
これ以降でクシナと九尾が関わるとすれば、
四代目・波風ミナトと夫婦となった時以降としました。
さらに(1巻)2話『木ノ葉丸』にて、
三代目火影・猿飛ヒルゼンが、
「四代目は…へその尾*1を切ったばかりの
赤子のへそに九尾を封印したのじゃ。」(1.C)
とあるので、
- 九尾の暴動→ナルト誕生→九尾封印 (1.D)
という流れが自然であると解釈できます。
したがってもし、(1.D)を満たすなら、
人柱力であるクシナが、
- 九尾を解放した後に、ナルトを産んだ
ことになるわけで、考えにくい状況です。
付け加えれば、(41巻)370話『胸騒ぎ』で自来也は、
「かつて木ノ葉を襲った九尾の妖狐は
自然発生した天災だと言われていたがの…、
実はそうでは無かったんじゃあないかと、
最近疑うようになった…。」
「おそらくあれは人為的に
口寄せされたものに違いない。」(1.E)
と言ってるので、この九尾の天災時に発端となるはずの、
九尾の人柱力であったクシナについて全く触れないで、
口寄せされたと推定している点や、
(1.A.1)の綱手との会話も含めて、まるで自来也は、
クシナが九尾の人柱力であることを知らないかのようです。
つまりミナトの恩師であり、
ナルトの名付け親である自来也にすら、
その伴侶であるクシナが人柱力であることが知らされていない、
ミナトの考え方によってはあり得ないことはないが、
きわめて不自然な状況である…ということです。
さてこれら(1.A)〜(1.E)を覆して、
クシナが九尾の人柱力であるという事実を
矛盾無く考えるにはどうすればいいでしょうか?
2.前任の人柱力(2)
実は解釈を疑うものとして(1.D)の
- 九尾の暴動→ナルト誕生→九尾封印
を挙げることができます。これは三代目火影の
- 「へその緒を切ったばかり」
という部分を受けてのものです。
切ったばかり、という言葉は切った直後を連想させますが、
実は切ってからそれほど時間が経過していないという意味、
すなわち、必ずしも直後でないかもしれない、ということを考えます。
例えば“生まれたばかりの赤ちゃん”というのは、
産声をあげたときだけではなく、
それから数日間、厳密に言えば新生児と言われる28日間は、
“生まれたて”と表現することも可能です。
この言葉よりはより範囲が狭くなりそうですが、
“へその緒を切ったばかり”の赤ちゃんは、
生まれて数日程度を表現することができるでしょう。
――ということは、(1.D)は次のようになる可能性もありえます。
- ナルト誕生→数日後、九尾の暴動→九尾封印 (2.D)
こうであれば、クシナが人柱力であるのに、
ナルトの出生のときに九尾が解放されている禁忌の状況を回避できます。
また以下の状況も考えやすくなります。
3.前任の人柱力(3)
(2)で考えたように、
時系列的には一致する可能性を考えることができますが、
ではここで(1.E)のように自来也が全く、
人柱力であるクシナについて考えない様子なのはなぜか、
について考えてみることにしましょう。
里の多くの人が自然発生的な天災として疑わなかった。
ということも付け加えておきます。
人柱力が尾獣に耐えられず暴走し、
これを自然発生的な天災としても解釈はできますが、
それならばなおのこと、
自来也がよく知るクシナのことについて口にしないのは不自然。
――とすれば、考えられるのは一つ。
自来也も知らない間にクシナが九尾の人柱力となっていた可能性です。
――といってもこの可能性には以下の2つがあります。
- ナルトを産んだ直後(3.F.1)
- 夫婦になって間もない頃からナルトを産む少し前まで(3.F.2)
(3.F.1)でナルトを産んだ直後であったなら、
自来也や里の人たちが全くわからないまま、
九尾事件が天災や口寄せと認識されても不思議ではありません。
しかも、産後すぐにクシナを人柱力にしなければならない、
そんな切羽詰った状況があったことを考えなければなりません。
そしてそんな危急とも呼べる事態は、
九尾を「天災」「口寄せ」と考えている点で、
クシナの前任の人柱力の暴走とは考えにくく、
マダラによって口寄せされた九尾の暴走と考えられます。
そして、ミナトはマダラと九尾を退けることに成功し、
九尾を封印します。ここで人柱力として妻クシナを選択。
一旦クシナに封印したけれども、
何らかの事情でへその緒を切って間もない我が子に、
封印せざるを得なかった――というエピソードが考えられます。
このエピソードであれば、全ての辻褄が合いますが、
クシナが自らを“前任”と評しているのに、
少し違和感を感じなくもないでしょう。
“前任”と評するからには、
ある程度の期間、クシナが人柱力であったと考えられるためです。
そこで(3.F.2)を考えて見ましょう。
ミナトがいつ四代目火影となり、
クシナがそれに従っていつ人柱力になったかにもよりますが、
これは“前任”としての期間としては適当です。
しかし、この場合、里の誰にも知られていない、
をどのように解釈するかが難しくなります。
この場合確実に言えるのは、
九尾の人柱力がクシナであるのは
限られた人にしか知られていなかったことと、
それにも関わらず、何者かに封を解かれ
九尾が暴走したことです。
この何者かはおそらくトビ(≒マダラ?)でしょう。
トビの情報源の存在なども同時に浮かび上がってきます。
「なぜわざわざそんな事をしたのかには理由がある…。
…今から16年前、九尾が里を襲った時、分かった事がある。
あの時、九尾を操り里を襲わせた黒幕がいる。」(3.G)
次にこのミナトの発言(3.G)を考えてみましょう。
九尾を操り里を襲わせた黒幕がいると分かったのは、
クシナの人柱力封印を破って、
九尾を操った人物がいる――と断定できたからでしょう。
ミナトはクシナが自分の妻だけに、
いきなり九尾化してしまう状況など、考えなかったでしょうし、
妻に信頼を置いていると考えられる点は自然なはずです。
そして仮面の男(=トビ)と戦ってそう確信したわけです。
「十六年前――、九尾が木ノ葉を襲った事件は、
もちろんマダラが起こしたものだ。」(3.H)
これはイタチの発言です。
ミナト、イタチの二人がトビ(≒マダラ?)の関与を指摘してるので、
つまり(3.F.2)に従えばクシナが人柱力である以上、
トビ(≒マダラ?)がクシナに何かして九尾の封印を解き、
その九尾を操って里を襲った可能性が考えられます。
果たして真相は――
クシナの口から語られるのを待つとしましょう。
*1:緒の誤植と思われる